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新たな地域医療構想と薬局

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新たな地域医療構想と薬局


2024年12月6日に「新たな地域医療構想等に関する検討会」(座長 遠藤久夫学習院大学長)の取りまとめが公表された。2015年からスタートした地域医療構想の目標年は2025年だ。そしてその先のポスト2025年の「新たな地域医療構想」がいよいよ始まる。

今回は新たな地域医療構想について見ていこう。新たな地域医療構想の目標年は2040年だ。新たな地域医療構想では、病院のみならずかかりつけ医機能や在宅医療、医療介護連携等まで幅広い検討が行われている。本レポートでは新たな地域医療構想と薬局の在り方についても見ていこう。

1 2040年問題

 これまでの地域医療構想は団塊の世代800万人がそろって後期高齢者となる2025年が目標年であった。これに対して新たな地域医療構想は2040年が目標年である。2040年は団塊ジュニアが前期高齢者となる年で65歳以上の高齢人口が最もピークとなる年である。2025年から2040年にかけて起きる人口の変化は、一言で言えば高齢者の高齢化である。高齢者の中でも超後期高齢者と呼ばれる85歳以上人口が毎年1割から2割増で増えていく。そして2040年に85歳以上の人口が1000万人を突破する。同時に起きることは生産年齢人口の激減だ。生産年齢人口の1千万人が2025年から2040年にかけて消えていく。

 この変化は地域によって異なる。生産年齢人口はほぼすべての地域で減少の一途をたどる。一方、高齢者人口は大都市では増加、過疎地域では高齢者も減少、地方都市では増加するところ減少する地域とがでてくる(図表1)。

図表1 厚労省 第7回新たな地域医療構想等に関する検討会 2024年8月26日

2040年には85歳以上の超後期高齢者が激増するということは、要介護度が高く、しかも複数の疾患を抱えた高齢者が増えるということだ。こうした高齢者は病院の外来に通院することもままならない。著者は週2回横須賀市にある衣笠病院で外来を担当している。外来の診察室に85歳の妻の車いすを、足元もおぼつかない90歳台のご主人が押して入ってくる。ご主人によると自宅玄関前の5,6段の階段を下りるだけてやっとだという。「そろそろ訪問診療に切り替えますか?」とご主人に聞くと、二つ返事で「お願いします!」と答える。ポスト2025年、超後期高齢者が激増する。このため在宅医療の需要は2040年までに現状の6割アップという。また超後期高齢者の救急搬送も85%アップという。それも軽症ないし中等度の救急患者の搬送が激増する。救急搬送される高齢者疾患の御三家は誤嚥性肺炎、尿路感染、心不全だ。これらの疾患は在宅医療でも十分診療できるのだが、訪問診療の体制が整っていない地域ではすぐに救急搬送で病院に運ばれてしまう。先日も85歳の男性が尿閉とのことで自宅に往診した。もともと前立腺肥大のある男性だが、風邪薬を飲んだら尿が出なくなったという。いそいで尿道カテーテルを挿入したら大量の尿が排出しておなかがべちゃんこになった。この男性も在宅に往診に行かなければ救急車で病院に運ばれていただろう。このように今や在宅医療は大はやりだ。在宅医療を提供する病院は近年増加傾向にはある。しかし在宅医療を行う診療所の数は横ばいだ。このため高齢者の増加が続く都市圏で訪問診療の需要の増加が見込まれる。二次医療圏でみると訪問診療の増加が50%以上見込まれる二次医療圏は、全国365ある医療圏のうち都市圏を中心に66医療圏にも上っている。

薬局へのポイントアドバイス

  • 地域の人口構成が、大都市型、地方都市型、過疎地域型で大きく異なる。
  • 共通するのは生産年人口の減少だ。
  • 外来は減少し、在宅医療需要が増加する。
  • 地域の現状に合わせた薬局と医療機関との連携の在り方を考えよう。

2 新たな地域医療構想

 これまでの地域医療構想では、従来の一般病床と療養病床と言う病床区分を資源投入量の多い順番に、高度急性期機能、急性期機能、回復期機能、慢性期機能という4つの機能区分に病床機能を区分した。そしてそれぞれの病床機能の現状と2025年の時点で、病院が4つの病床機能区分の多い機能区分の一つを選んで医療機能報告を出すことになった(図表2)。

図表2 厚労省 第7回新たな地域医療構想等に関する検討会 2024年8月26日

しかし今回の新たな地域医療構想では、この医療機能の従来方式を次の2点で改めることにした。一つはこれまでの入院医療だけの地域医療構想から、外来・在宅医療、介護との連携等を含む医療提供体制全体の課題解決を図るための地域医療構想へと拡大した。もう一つの変更点は、今後の地域における連携・再編・集約化をイメージできるように病床機能による医療機能報告から医療機関機能に着目した報告を加えることとした。というのもこれまでの高度急性期、急性期、回復期、慢性期という4つの病床機能では、高度急性期と急性期、急性期と回復期の間の区別がしにくい。また地域医療構想後に地域包括ケア病棟や地域包括医療病棟などの急性期と回復期の双方の機能を有する病棟が出来たことなどで、医療機関機能が病床機能だけの報告では判りづらくなったからだ。このため医療機能報告を以下のように5つとした。①高齢者救急・地域急性期機能 ②在宅医療等連携機能、③急性期拠点機能、④専門等機能、⑤医育及び広域診療機能。(図表3)。

図3厚労省 第8回新たな地域医療構想等に関する検討会 2024年9月6日(一部、著者加筆)

これらの機能をより具体的に見ていこう。①高齢者救急・地域急性期機能は、救急搬送を受けるだけではなく、入院早期からリハビリ等の離床のための介入を行う。必要に応じて専門病院等と協力・連携するとともに、高齢者が抱える背景事情も踏まえて退院調整を行うこよなどにより早期退院につなげ、他施設とも連携しながら通所や訪問でのリハビリを継続できる。②在宅医療等連携機能は地域で在宅医療を実施し、他の医療機関、訪問看護ステーション、歯科医療機関、薬局、介護施設等と連携して、24時間の対応や在宅患者の入院対応ができる。③急性期拠点機能は持続可能な医療従事者の働き方や医療の質も確保するために、搬送体制の強化等に取り組み、一定の症例数を集約して対応する地域の拠点として対応する。④専門機能は地域によっては回復期リハビリや一部の診療科に特化した医療機関等が存在していて、その役割を発揮する機能だ。

 そして⑤医育及び広域診療機能は大学病院のようにより広域で医師を派遣したり、医師を養成したり、三次救急やがんや小児などのより広域での診療の担う機能とした。

薬局へのポイントアドバイス

  • 地域医療構想が変わった!
    入院医療から外来、在宅、介護へと拡大した。4つの病床機能区分と5つの医療機関機能へと変わった
  • 5つの医療機関機能から医療機関との薬局の連携の在り方を考えよう。
    1. 高齢者救急・地域急性期機能 
    2. 在宅医療等連携機能
    3. 急性期拠点機能
    4. 専門等機能
    5. 医育及び広域診療機能

3 急性期機能

 以上を念頭におきながら、まず急性期医療から見ていこう。急性期医療のニーズが実は減っている。これを一般病床の病床利用率でみると、1996年には83%であったが、2022年には69%まで低下ししている。病床利用率の低下とともに病院の医業利益率も減少傾向にある(図表4)。これらは生産年齢人口の減少により手術など多くの医療資源を要する急性期医療のニーズが減っていることに起因する。実際に手術件数は2020年から2040年にかけてすべての診療科で、半数以上の二次医療圏で減少することが予想されている。

図表4 厚労省 第7回新たな地域医療構想等に関する検討会 2024年8月26日

 急性期医療の機能として救急などの緊急手術の頻度をみると頻繁に緊急手術を行う医療機関のある医療圏は少なかった。具体的には年間360日以上実施する医療圏は3つ、300日以上が31,200日以上は102、100日以下が165であった。

 また救急医療を提供する機能について見ると、図表5のように二次医療圏ごとに救急車の受け入れ台数が異なり、多くの救急車を受け入れていても二次医療圏における救急車受け入れシェアの少ないA病院もあれば、救急車受け入れ件数は少ないが、地域でのシェア率が100%近い病院まで地域ごと救急医療の件数とシェアにばらつきが多かった。

図表5 厚労省 第10回新たな地域医療構想等に関する検討会 2024年10月17日(一部著者加筆)

 ただ緊急手術のニーズがそれほど多くない医療機関でも相当数の医療機関が緊急手術の待機体制を敷いている実態があった。こうした医療機関については医療圏内で集約する必要があるだろう。

 また様々な手術において症例の多い医療機関ほど死亡リスクが低い傾向にあることが知られている。たとえば食道切除術について、症例数の多い医療機関では術後・30日死亡率が症例数の少ない医療機関と比べると、低い傾向がみられた。これは胃、大腸、肺がんの手術についても同様の傾向がみられる(図表6)。

図表6厚労省 第8回新たな地域医療構想等に関する検討会 2024年9月6日

 これは現場にいれば当たり前のこととして受け取られている。食道切除術を1年に数回、お祭り騒ぎのように行っている病院と毎週2回行っている病院とでは、手術チームの習熟度に差が出て、手術アウトカムにも差が出るのは当然だ。このため食道がんの5年生存率を上げるには1つの病院に食道がんの手術症例を多数集める疾患センター方式が一番だということが分かっている。このように急性期医療における疾患集約が必要なのだ。これは先の救急医療についても言えることだ。こうした観点から地域医療構想における急性期病院機能の地域集約は引き続き行うべきだ。その時に必要なのは急性期医療における疾患別のシェア率の明らかにしていくことだ。シェア率の低い疾患や救急医療については集約すべきだ。

薬局のためのポイントアドバイス

  • 急性期の入院需要が減っている。
  • 急性期拠点病院の救急や緊急手術の数は病院ごとにバラツキが大きい。
  • 救急や手術は1か所のセンターに集めることが医療の質を上げる。
  • 医療圏内で急性期拠点病院の選択と集中が行われる。
  • 急性期拠点病院の地域再編が課題。
  • こうした中、地域における薬局のあり方を考えよう。

4 大学病院

 全国に大学病院本院は81ある。これら大学病院本院の機能は、医師派遣機能、医育期間機能、より広域な観点で医療を行う機能である。これを見ていこう。まず大学病院から全国の医療機関におよそ5万9千人の医師派遣が行われている。これらの医師は常勤の医師や代診の医師として地域の病院で働いている。また大学病院本院は専門医研修を行う基幹病院としての役割も果たしている。大学病院本院は内科専攻医プログラムで1割、小児科専攻医プログラムで4割、産婦人科専攻医プログラムで5割、外科専攻医プログラムで3割を占めている。また看護師の特定行為の研修を行う大学病院も多い。全国426の特定行為の研修機関のうち55が大学病院だ。また腎移植を除く臓器移植施設にも大学病院本院が多い。その他、難病診療連携拠点病院、がん診療連携拠点病院、救命救急センター、総合周産期母子医療センターも大学病院本院が一定の役割を担っている。

薬局へのポイントアドバイス

  • 大学病院と薬局との連携について、再度考えよう

5 回復期、慢性期、在宅医療

 ここからは回復期機能、慢性期機能、在宅医療について見ていこう。

  • 回復期機能

 これまでの地域医療構想において、回復期機能とは急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能とされている。前述したように生産年齢人口の減少に伴い急性期の医療ニーズが減ると同時に、高齢者の増加に伴い、回復期機能のニーズが増えている。実際に地域医療構想における病床機能報告においても急性期と報告された病床は2015年の59万床から2022年には53万床にまで減少した。一方、回復期と報告された病床は2015年の13万床から2022年の20万床に増加している。回復期と報告した病床の内訳は回復期リハビリテーション病棟が8.7万床、地域包括ケア病棟が5.3万床であった。回復期リハビリテーション病棟は専門的なリハビリを行う病棟で、専従の医師、リハビリセラピストからなり脳血管疾患、筋骨格系などの疾患別リハビリを行っている。

一方、地域包括ケア病棟では高齢者救急で多い誤嚥性肺炎や白内障手術後、大腿骨近位部骨折術後などの治療やリハビリを行っている。また最近では高齢者救急の受け皿となる地域包括医療病棟も回復期の仲間入りをして徐々に増えている。このようにして高齢者が増えるなか回復期のなかに高齢者救急の受け入れのような急性期機能を一部含む病棟が増えている。このため新たな地域医療構想ではこれまでの回復期と言う名称の変更も含めて議論が行われた。その結果、「回復期」の名称に替えて「高齢者等の急性期患者について、治療と入院早期からのリハビリテーション等を行い、早期の在宅復帰を目的とした治し支える医療を提供する機能」として「包括期機能」の名称に変更することとした。

薬局へのポイントアドバイス

  • 病床機能の回復期機能のコンセプトが変わった。高齢者救急を含む包括期機能となった。
  • 包括期機能では、高齢者救急の受け入れから入退院支援がポイントだ。
  • 包括期機能と薬局の関係を考えよう。

6 慢性期、在宅医療

地域医療構想における慢性期医療とは、状態は安定しているものの長期にわたる治療が必要な患者さんが入院している病床のことで、全国に30万床ある。その多くを療養病床が占めている。療養病床については、比較的軽症の医療区分1の患者は在宅医療へ移行すること、都道府県でバラつきのある療養病床の入院受療率の平準化を計ることより、療養病床数が減少しつつある。

こうした患者の地域の受け皿になるのが、高齢者向けの介護施設や住まいで、その数が増加している。たとえば特別養護老人ホームは2001年の30万床から2022年64万床に増加している。同様に有料老人ホームは4万床から61万床に増加、老人保健施設は24万床から37万床、2012年に新設されたサービス付き高齢者住宅は27万床と軒並み増えている。こうした介護施設や高齢者の住まいと療養病床の一部については患者像が重複する場合があり、都道府県別の療養病床数について、介護施設の定員数と合わせて見ると、地域差は縮小している現状も見られる。このため療養病床と介護施設や高齢者の住まいの両者の状況を合わせて将来像を考える必要がある。

また前述したように、高齢者の増加が続く都市圏では在宅医療の需要が増えている。二次医療圏でみると訪問診療の増加が50%以上見込まれる二次医療圏は、全国365ある医療圏のうち都市圏を中心に66医療圏にも上っている(図表7)。

図表7厚労省 第8回新たな地域医療構想等に関する検討会 2024年9月6日

在宅医療について、医療機関によって1か月あたりの在宅訪問患者数に幅がある。無床診療所を中心とした一部の医療機関では1か月あたり200人以上の患者に在宅医療を提供しているなど、在宅訪問患者数が多い医療機関の割合が増加している。特に人口規模の大きい地域では、多数の在宅訪問患者を診る医療機関が増加している。また、二次医療圏ごとに病院が対応する在宅訪問患者の割合が異なるなど、地域によって在宅医療に係る病院の役割は異なる。病院における在宅医療の提供は、急性期や回復期に係る病棟を有する医療機関が中心であり、後方支援を行う医療機関は急性期に係る病棟を有する医療機関が中心となっている。

また訪問看護ステーションについては、人口規模の小さな市町村では存在しないところもある。多くの事業所が常勤換算7人未満で運営されている小規模施設で、常勤換算で7人以上の体制等を有する機能強化型訪問看護管理療養費の届出のある訪問看護ステーション数は全体の5.6%とまだまだ少ない。

薬局へのポイントアドバイス

  • 地域医療構想の慢性期機能は、在宅機能とセットで考えることが必要。
  • 在宅機能は施設在宅、居宅在宅がセットとなっている。
  • 医療と介護の連携強化がポイント
  • 薬局との介護との連携の在り方を考えよう

7 外来医療

外来患者数はすでに減少傾向にある。すでに2020年までに224の医療圏で、外来患者数はピークを迎えて、それ以降が減少の一途をたどっている。一方、在宅医療は前述のようにこれから増加の一途をたどる。2040年に237の医療圏で在宅医療のピークが訪れる。

診療所においては内科を標ぼうする診療所が最も多い。診療所の医師もこれからは高齢化する。このため75歳で診療所の医師が引退すると考えると、2040年に診療所がない市町村数が170程度に増加する。また外来医師偏在指数の全国の外来医師の分布をみると、外来医師多数地域は大都市圏と西日本に多い。全国の外来医師の分布は明らかに西高東低を示している。現在、医師偏在是正のための総合政策パッケージが進行中である。外来医師多数地域への医師の流入を規制的措置によって制限しようとしている。2024年末にまで取りまとめを行うとしているがその動向に注目が集まっている。

一方外来医療については2023年5月の改正医療法によりかかりつけ医機能が明確化した。かかりつけ医機能とは以下の5つの機能だ。①日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能、②時間外診療を行う機能、③病状急変時等に入院など必要な支援を提供する機能、④居宅等において必要な医療を提供する機能、⑤介護サービス等と連携して必要な医療を提供する機能。このかかりつけ医機能の都道府県知事への報告制度も2025年4月から始まる。さらに2026年からはかかりつけ医の医療計画への記載も始まろうとしている。

このかかりつけ医機能は診療所ばかりでなく、200床以下の病院外来にも適応される。このためかかりつけ医機能の動向も気になるところだ。

新たな地域医療構想では外来やかかりつけ医機能が大きな役割を果たす。今後、外来医療やかかりつけ医機能に関する報告と、それに基づく地域における協議体における検討が重要性を増すだろう。

薬局へのポイントアドバイス

  • 外来医療は全国的に減少局面に入っている。
  • 外来医師偏在の是正が課題。
  • 外来医師多数医療圏への新規参入規制が始まる。
  • 薬局への影響を考えよう。

8.かかりつけ医機能報告

前述したように2025年4月から「かかりつけ医機能報告」がスタートする。この報告は2023年5月に成立した改正医療法に基づいている。

報告は1号機能と2号機能に分かれている。1号機能は日常的な診療を行っているかどうかを報告する。具体的には頻度の高い40疾患と17の診療領域が挙げられている。40疾患は、高血圧、腰痛症、関節症、かぜ・感冒、皮膚の疾患、糖尿病などの日常よく遭遇する疾患であり、17診療領域とは循環器系、筋骨格系、呼吸器系などである。これらの17診療領域ごとの一次診療の対応可能の有無、すなわちどの診療領域について一次診療を行うことが出来ることや相談に応じることができることを報告する。同時にかかりつけ医機能に関する研修を修了した医師の有無、総合診療専門医の有無を報告する。

2号機能の報告とは、具体的には以下の4項目である。①時間外の診療、②入院時の支援、③在宅医療の提供、④介護サービス等と連携した医療提供である。

 1号機能の日常的な診療、2号機能の時間外診療、入退院支援、在宅医療、介護等との連携などあわせて5つの機能について報告をおこなう。この報告結果はいずれ医療機関のホームページ上でも公開することになる。それによって医療機関がどのようなかかりつけ医機能を有するのかが住民・患者の目からも分かりやすくなり、患者の医療機関選択の助けになる。

さらにかかりつけ医機能報告制度は、医療計画や地域医療構想とも関係する。今後、このかかりつけ医報告の情報に基づいて、かかりつけ医機能を有する医療機関の機能分類がなされ、その地域における医療機関配置の議論にも影響することになるだろう。そしてかかりつけ医機能が不足する地域においては、こうした機能を普及拡充するために、医療介護確保基金などの補助金の対象にもなりうるだろう。あるいは逆にかかりつけ医機能が重複したり、あるいは過剰である場合にはその配置の適正化も行われるようになるかもしれない。

こうした意味から今回のかかりつけ医機能報告制度は我が国の医療提供体制の今後に、大きな影響を与える制度となる。ぜひその行方に注目してほしい。

薬局へのポイントアドバイス

  • 外来機能の中で、かかりつけ医機能に注目。
  • 200床以下病院外来はかかりつけ医機能の発揮がポイントとなる
  • 2025年4月よりかかりつけ医報告制度が始まる。かかりつけ医機能と薬局との関係を考えよう

以上、新たな地域医療構想を振り返ってみた。新たな地域医療構想のポイントは以下である。これまでの地域医療構想での病病機能区分で回復期が包括期と名称が変更された。さらに4つの病床機能に加えて5つの医療機関機能が加えられた。そしてこれまで入院病床の実を扱ってきた地域医療構想が、かかりつけ医機能や在宅医療、医療介護連携までそのスコープが大幅に拡張された。以上のポイントを押さえながら新たな地域医療構想と薬局との関係を考えていこう。

参考文献

厚労省 第7回新たな地域医療構想等に関する検討会 2024年8月26日

厚労省 第8回新たな地域医療構想等に関する検討会 2024年9月6日

厚労省 第10回新たな地域医療構想等に関する検討会 2024年10月17日