
育毛剤のミノキシジル、フィナステリドやまつ毛の育毛剤のビマトプロストの発見物語だ。薬の副作用から生まれた新薬だ。
ミノキシジル(Minoxidil)
有名な育毛成分「ミノキシジル」の話だ。ミノキシジルはもともとは高血圧の治療薬として開発された。けれど臨床試験中に被験者の患者さんたちから「なんか体毛が濃くなってきたんだけど…」という報告が相次いだ。医師たちは「これは…もしかして副作用というより新たな効果⁉」と気づいて、そこから育毛剤としての研究が始まった。そして1980年代、「ロゲイン(Rogaine)」という名前で外用育毛剤として製品化された。頭皮に塗ると、毛根の血流を良くして毛髪に栄養が届きやすくなり、育毛効果が上がる。大ヒット作となった。
フィナステリド(Finasteride)
前立腺肥大の薬の開発過程から生まれた「フィナステリド」も、男性型脱毛症の治療薬としてヒットした。フィナステリドは、前立腺肥大症の治療薬としてもともと開発された。前立腺が大きくなると、尿が出にくくなったり、頻尿になったりするので、それを抑えるために研究されていた。
フィナステリドの作用の仕組みは以下だ。テストステロンという男性ホルモンが、5α-リダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換される。このDHTが、前立腺を刺激して大きくする。フィナステリドはこの5α-リダクターゼの酵素作用を阻害して、DHTの生成を抑え、前立腺肥大を押さえる。
このフィナステリドの臨床試験中に「前立腺の症状が改善しただけではなく、髪が増えてきた!」っていう副次的な効果が報告された。研究者たちは「おや?」と思って、男性型脱毛症(AGA)への応用を本格的に調べ始めた。その結果、DHTが毛包を萎縮させ、脱毛の主要因であることが明らかになった。このためフィナステリドはAGA治療薬としても承認されることになった。つまり前立腺の薬が、育毛剤になったというわけだ。こうしてフィナステリドはAGA治療薬プロペシアとして大ヒットする。
ビマトプロスト(Bimatoprost)
ビマトプロストという成分を含む目薬は、もともとは緑内障や高眼圧症の治療薬として開発され使われていた。この目薬を使っていると、その副作用としてまつ毛が長く・濃く・太くなることが報告された。この副作用が注目されて、今では「グラッシュビスタ」というまつ毛貧毛症の治療薬としても使われている。医療用医薬品だから、基本的には医師の処方が必要だけど、美容目的で処方してくれるクリニックもある。長いまつ毛は魅力的だ。まつ毛が長くなる副作用を持つ目薬からできたまつ毛の育毛薬だ。
