
横須賀市にある衣笠病院で週2回の外来を担当している。初診患者の担当をしていることもあって、特養や老健、有料老人ホームの入居者が、紹介状を持参して受診されることも多い。多くは尿路感染、脱水患者、誤嚥性肺炎患者、心不全の患者さんだ。
患者さんはたいてい大きなリクライニング型の車いすに乗せられて、家族や介護施設の職員と一緒に診察室に入ってくる。これで狭い診察室は一杯になる。こうした患者さんは問診や診察、検査に時間がかかるので、待たせずに急患扱いで対応することにしている。そして検査結果を待って、入院が必要なときは当日の入院担当の医師や家族と相談して入院を決める。
こうした特養、老健、有料老人ホームなど介護施設からの受診する患者が年々、増えている。衣笠病院は在宅療養支援病院(在支病、198床)で、地域包括ケア病棟91床を持っている。このため地域の老健、特養16施設と提携して、これらの施設の入院要請に対応している。
こうした介護施設からの救急受け入れを評価する診療報酬の加算がある。代表的な加算が以下の3つである。①在宅患者緊急入院診療加算、②協力対象施設入所者入院加算、③在宅患者支援病床初期加算。
①在宅患者入院診療加算は、在宅の患者が病状の急変で入院が必要になった場合で、在支病を要件として、地域包括ケア病棟で算定できる加算だ。②協力対象施設入所者入院加算は、提携協力をしている老健、特養で療養している患者が、病状の急変で入院が必要になった場合、協力医療機関である在支病を要件として、地域包括ケア病棟で算定できる加算だ。③在宅患者支援病床初期加算は、老健や在宅で療養している患者が、発熱、下痢等の症状で入院医療を要する状態となった時に、地域包括ケア病棟で受け入れることを評価した加算だ。
衣笠病院では①と②の加算合計が月平均、地域包括ケア病棟50床あたり7.24件で、年々増えている。中医協の調査によるとこの加算合計が5件を超える施設は調査した施設の6%しかない。また③は29件でこれも多い方だ。おかげで地域包括ケア病棟の稼働率もアップし、入院単価も2021年8月3万6557円が2024年8月の3万8473円と2000円もアップした。
2019年の全国調査では、特養・老健から医療機関に入院した入所者は、特養退所者の23.7%、老健退所者の33.3%にも及んだ。現在、85歳以上の超後期高齢者が年率1割から2割の割合で増えている。そして2040年には1千万人を超える。こうして介護施設の入居者も高齢化が進むので、これらの介護施設からの在支病の地域包括ケア病棟への入院は今後も増大の一途をたどるだろう。
衣笠病院の初診外来でもこのところ提携先の介護施設からの入院する患者が増えている。今後も初診外来には介護施設や在宅からの入院要請が増えて、ますます忙しくなるだろう。