最近、自分と同じ年代の団塊の世代の病気や死と出会うことが多くなった。1947年から49年生まれの団塊の世代は800万人もいる。私も1949年生まれの団塊世代だ。この団塊の世代の先頭集団が2022年から75歳以上の後期高齢者に突入し、2025年には全ての団塊の世代が後期高齢者となる。

先日も外来で同い年の男性の進行食道がんを見つけた。首の周りのリンパ節の腫脹で来院された。内視鏡で検査したら食道がんだった。1か月前には同い年の女性の肝機能異常を見つけ、腹部CTで検査したところ、膵体部がんの肝転移が見つかった。その女性は1か月半ほどでお亡くなりになった。このように団塊世代の病気や死に立ち会うことが増えてきた。

幸い自分はまだ元気だ。そこで「団塊の世代の何割ぐらいが生き残っているのだろう」という素朴な疑問を持った。それを知るには厚生労働省が5年に1度作成している「生命表」を見てみるのが早い。生命表とは、生存曲線グラフのことで人は何歳で何人生き残っているかを10万人当りの数字に換算して表したグラフだ（図）。

この図を見ると男性の生存曲線は70歳ごろから急にジェットコースターのように坂道を転げ落ちる。一方、女性は少し遅れて転げ落ちる。この生命表から推測すると、現在、75歳になった団塊世代の男性の8割はまだ生きていることが分かる。女性の9割は生きている。でも男性は80歳になれば６割、90歳になれば2割、95歳になれば5分しか生き残っていない。

団塊の世代はこれから「生命表の断崖」を真っ逆さまに落ちていくのだ。このため国内の死亡者数もうなぎのぼりとなり2022年はすでに年間157万人以上がなくなっている。鹿児島県1つ分の人口が亡くなっているのだ。これから団塊の世代の大死亡時代が本格的にやってくる。生命表の断崖を上から見下ろしてみて、ちょっとドキドキした。