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骨太の方針と地域フォーミュラリー


 2025年9月17日、厚生労働省が地域フォーミュラリーの取り組み状況に関する調査結果を公表した。それによると、地域フォーミュラリーの取り組みは以下の10府県16地域にとどまるとのことだった。山形県、茨城県(2件)、埼玉県、神奈川県(2件)、長野県、愛知県(2件)、大阪府(3件)、兵庫県、広島県(2件)、沖縄県。こうした地域フォーミュラリー作成の主体は薬剤師会、医師会、医療機関、地域連携推進法人等であるという。

 しかし10府県16地域とはあまりに少ない。規模的には47都道府県で二次医療圏330地域のほとんどをカバーしなければ全国的とは言えないだろう。

 これまで地域フォーミュラリーは地域の薬剤師会、医師会等、医療機関などの有志の活動に支えられてきた。しかしこれでは骨太の方針2025年で言っているような全国展開に至るまでにはこの先、何年もかかるだろう。そろそろ全国展開へ向けてギアチェンジをすべきだ。

 それには医療費適正化計画のなかで地域フォーミュラリーの普及目標と目標年度を示して推進することだ。このためまずは都道府県フォーミュラリーを作成することから始めてはどうか?この作成には既存の都道府県の後発医薬品推進協議会を活用することだ。すでに後発医薬品の市場シェアは90%を超えている。もう後発医薬品推進協議会はその役割を終えた。これからはフォーミュラリー推進協議会に衣替えして、フォーミュラリーの普及推進に取り組むべきだ。まず都道府県フォーミュラリーによってどれくらいの医療費が削減できるかを試算する。そしてその試算から目標値を設定する。

 2018年、全国健康保険協会(協会けんぽ)静岡支部は、地域フォーミュラリー策定に向けたレセプト分析を行い、協会けんぽだけで年間最大13億5千万円の薬剤費削減効果が見込まれると試算した。その内訳は以下だ。後発医薬品への切り替えによる効果は年間最大9億円、消化性潰瘍治療薬であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)など、4つの薬効群でシミュレーションを実施したところ、年間最大4億5千万円であった。協会けんぽに加入しているのは人口の3分の1だ。このため荒い試算では、静岡県全体ではおよそ40億の医療費削減になっている。静岡県の2018年の人口から全国の人口で削減医療費の荒い推計をすると地域フォーミュラリーの作成で、全国1400億円の医療費が浮くことになる。

 このようにして各都道府県で、地域フォーミュラリーによる医療費削減目標を立てる。その際には日本フォーミュラリ学会の示すモデルフォーミュラリーを用いて試算してもよい。そしてその後、地域の薬剤師会、医師会、医療機関等で地域の事情に応じてフォーミュラリーを作成し、地域における医療費削減額を試算して、各地域の地域フォーミュラリーを推進してはどうか?

このように医療費適正化計画に載せることで、都道府県のトップダウン方式で地域フォミュラリーを進めることができる。これとこれまでの地域におけるボトムアップ方式を組み合わせて全国展開が図れるのではないか?

2026年度からの医療費適正化計画に地域フォーミュラリー推進を明確に位置付け、2027年から2029年の計画最終年までに全国展開を計るべきだ。