訪問診療では看護師さんが、患者さんのフットケアをすることがある。爪白癬で肥厚した足爪をニッパーで切り取って、足の指の間を清拭し抗真菌薬を塗ったり、かかとの角質にヤスリをかけたりする。
先日訪問したグループホームに入居中の83歳の高齢の男性、なぜか機嫌が悪くて、看護師さんが勧めたフットケアを拒否して、「放っとけや~」と言っていた。看護師さんと二人で、おもわず「フットケアは放っとけや~」と言って笑った。
ところが今日訪問したら、天気もよいのでご機嫌の様子、すなおに看護師さんのフットケアを受けている。フットケアをしている看護師さんのベッドわきを見ると、競馬馬と一緒に写っている男性の若いときの写真が飾ってあった。「馬主をされていたんですか?」と話しかけると、「雌のアラブ馬で優勝もしたんだ」とご機嫌だ。鹿児島出身で仕事は羽田で飛行機の整備の請負もやっていたと話してくれた。
さて高齢者のフットケアは足病変の早期発見に重要だ。高齢者の足病変は歩行時の疼痛や歩行困難の原因になり転倒を招いて寝たきりのリスクにもなる。とくに糖尿病の患者さんのフットケアが大事だ。ゴマ粒のような小さな皮ふ壊死病変が、あっというまに指全体に広がる。
2008年の診療報酬改定のとき「糖尿病合併症管理料」でフットケアに点数が初めて付いた。糖尿病合併症管理料は、糖尿病足病変のハイリスク患者に対し、医師あるいは看護師が指導・管理を行うと、月1回170点を算定できる。 看護師が行う場合、糖尿病足病変の看護の5年以上の実務経験と、フットケアの研修(16時間以上あるいは2日程度)の受講が求められている。この点数のおかげで病院の外来にフットケア外来を設置するところも増えた。
もはや「フットケア」は「放っとけや」の時代ではなくなっている。