
外来で糖尿病の患者さんを診ていると、中には食事療法や運動療法だけで薬なしでよくなる患者さんがいることが分かる。健診センターから紹介されてくる患者に多い。比較的若く、糖尿病の治療歴がなく、健診でたまたまHbA1cが7以上あることが見つかる患者さんだ。見つかるまではHbA1cは6台だった患者だ。
7以上になって患者さんもびっくりして外来受診する。中にはHbA1cが8や9ぐらいの患者も時々いる。こういう患者さんには最初から糖尿病薬を出さずにまず食事療法、運動療法によって、体重の減量を勧めている。
体重の減量もあまり過大な目標は設定しないで「まず2Kg減らしてみましょう」と言う。そして栄養指導を栄養士さんにしてもらって2~3か月後に診察予約をして帰す。すると長くて半年でHbA1cが正常化する。
こうした患者さんがどれくらいいるのかと思って文献を見た。すると新潟大学医学部の研究チームの論文が見つかった。研究では全国の糖尿病専⾨施設に継続して通院している糖尿病患者約4万8,000⼈の臨床データベースを解析している。このデータベースは、一般社団法人糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)のデータベースで、2001年から糖尿病患者の臨床データを集積している。
この研究によれば、⽇本⼈の2型糖尿病患者のおよそ100⼈に1⼈が「薬物療法を行っていない状態で、HbA1c6.5%未満が3ヵ月間続いている」ことが分かった。つまり食事療法、運動療法だけで「寛解した」ということである。
「寛解」は、肥満のある患者で、体重を大きく減らした患者に多かった。「寛解」の頻度は、体重の1年間の減量幅が5%から9.9%の⼈で2.5倍、10%以上の⼈では5.0倍に増加した。また「寛解」は「糖尿病と診断されてからの期間が短い⼈」、「HbA1cの値が低い⼈」「体格指数(BMI)が⾼い肥満の⼈」、「1年間の体重減少幅が⼤きい⼈」「薬物治療を受けていない⼈」に多く見られた。
再発率をみると1年間の減量幅が5%以上の⼈では、寛解後に再発する傾向は低い、つまり寛解の状態が継続する傾向が⾼いこともわかった。
研究は、新潟⼤学⼤学院医⻭学総合研究科⾎液・内分泌・代謝内科学分野の藤原和哉特任准教授、曽根博仁教授らの研究グループによるもので、研究成果は、Diabetes, Obesity and Metabolism Volume 25, Issue 8 p. 2227-2235 2023年に掲載されている。
でも外来で診ていると100人に1人よりもっと多い気がする。衣笠病院の外来で栄養士さんに協力してもらって、その頻度を一度、調べてみたいと思う。