
ときどき市民病院の経営見直しのお手伝いを頼まれることがある。こんな中、市長選挙がらみになった例を二つほどご紹介しよう。
ある県の市民病院の民間移譲で移譲さきの選考委員長を頼まれた。病院は100床で、もともと小児中心の病院だ。市長さんは勉強熱心で市民病院に思いれが強い。ただ小児病院はどこも経営難で、経営見直しが課題だ。当初、病院は指定管理者制に移行することを模索して一時は大学病院の附属病院化のアイデアもでた。しかしどこの大学もそうしたお荷物を引き受けようとはしない。そうした中、次なる経営見直しとして民間移譲する話が持ち上がる。
このとき市長よりその選考委員長を依頼された。そこで移譲の公募案や選考基準を作成することになった。ところがその最中に、市長選挙が行わる。選挙のイシューにもこの市民病院問題が入っている。市長選挙の行方も気になりながら公募の準備をしていた。するとなんと現役の市長が落選してしまったのだ。この市長に任命された選考委員長なので、どうなることかとドキドキした。幸い、新市長も経営移譲に賛成だったのでそのまま移譲先の選考を行い、無事、民間移譲に成功した。
もう一つの例を紹介しよう。ある県の市民病院が国の地域医療構想で、旧国立病院に再編統合されることが明らかになった。これに反発したのが市立病院を有する市の市長さんだった。上から目線で行う県のやり方に納得できず、市立病院の考え方を前面に押し出した独自の再編案を提案する。著者はこのための委員会の委員に市長から任命される。この時も委員会の議論の最中に、市長選が行われる。市長の進める再編案は財政負担が大きすぎるとして反対する市の部長と現職市長の一騎打ちとなる。この選挙戦中、市長側、反市長側からそれぞれの意見で説得されて大変な思いをした。しかし結果は反市長側の部長の勝利だった。
われわれ前市長から任命された委員は全員クビになり、新たな市長のもと再編案がすすむことになった。
このように市民病院の経営形態見直しは大変だ。市民病院という市民生活に密着した病院は市長選挙の最大のイシューになりかねない。そんな経験から2019年に国が行った424病院再編統合リストに名指しされた自治体の市長さんたちの気持ちや思いがよくわかるようになった。