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炎症性貧血


 外来や老健で患者さんを診ていると、貧血の患者さんに出会うことが多い。ヘモグロビンで7g/dlと言った貧血もめずらしくない。高齢者の貧血の原因は以下のようにいくつかある。

 多いのは薬剤の影響による貧血だ。消炎鎮痛薬のロキソプロフェンなどで、胃潰瘍や十二指腸潰瘍ができて、そこから出血して鉄欠乏性貧血になることがある。それから食事から十分に鉄が取れなくて、貧血になる。また消化管のポリープやがんからの出血で貧血になる。また腎機能が低下すると、エリスロポイエチンという赤血球を増やすホルモンが減って、腎性貧血になる。また骨髄異形成症候群のような高齢者に多い造血障害でも貧血になる。

 このほかにちょとレアものだが、炎症性貧血というのもある。高齢者は炎症性疾患で貧血になる。とくに慢性炎症で貧血が発生する。この炎症性貧血の特徴は鉄不足ではないのに貧血がおきるのだ。このメカニズムは以下だ。炎症が起きると、免疫細胞から炎症性サイトカイン(IL-6など)が分泌される。これが刺激となり、肝臓からヘプシディンというホルモンが大量に分泌される。

 ヘプシディンには、体内の鉄を細胞内に閉じ込めて血中に出さないようにする働きがある。そのため、体内に十分な鉄(貯蔵鉄)があっても、骨髄に鉄が供給されなくなり、赤血球がうまく作れなくなる。鉄は赤血球の中のヘモグロビンの重要な成分だ。赤血球は骨髄で作られ、全身をめぐって酸素を運び、古くなると主に脾臓や肝臓でマクロファージ(大食細胞)という細胞によって補足されて壊される。そして赤血球の成分のうち、鉄分などは新しい赤血球を作るために再利用される。

 ヘプシデインはマクロファージの中に取り込まれた鉄を囲いこんで、細菌に鉄を使わせなくする。鉄は細菌が増殖するにも必要な物質だ。このため体は細菌に鉄を使わせないように鉄を囲い込んで細菌を兵糧攻めにする。

 なんとも高度な感染防御戦略の一環と言える。

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