
外来で、23歳男性が下腹部痛を訴えてやってきた。朝の3時ごろから下腹部痛が始まって、だんだん右下腹部に痛みが移ってきたという。発症から6時間ぐらい経っている。嘔気もあり、歩くとお腹に響くという。腹部をみると右下腹部に圧痛があり、反跳痛もある。「急性虫垂炎だ」と思って、血液検査をしてみると、なんとCRP0.1 、白血球4900で炎症反応が少ない。白血球の分画で好中球比率が75%と高い。明らかに急性虫垂炎なのに、CRP(C反応性たんぱく)が正常だ。白血球数も増えていない。理由は検査の時間が早すぎてCRP上昇せず、白血球数も上昇していないのだ。
炎症に対しては、まず好中球が増えて、それから肝臓でやおらCRPが作られて、血中でその値が上昇するのがすじ道だ。CRPの上昇は6時間から12時間といわれている。発症から6時間は、まだCRPが上がるには時間が足りなかったのだ。
このように発症初期の急性虫垂炎では、CRPや白血球数が両方とも正常範囲内であるケースが約20〜30%程度存在すると言われている。だから、「初期の血液検査が正常だから虫垂炎は否定できる」とは言い切れない。
また炎症が収まった後も一定期間はCRPの高値が続く。その理由は、CRPの血中動態や消失のメカニズムにある。CRPは血中からの消失にも時間がかかる。原因となる炎症が完全に消失したり、感染の元が断たれたりした後も、すでに血液中に放出されたCRPはすぐには消えない。CRPの血中半減期は約19時間(およそ1日)だ。このため、炎症がピタッと止まったとしても、CRP数値が元の正常値に戻るまでには数日〜1週間程度のタイムラグが生じるのだ。
このようにCRPはゆっくり立ち上がって、炎症がおさまってCRPが下降するのもゆっくりだ。このためCRPには実際の炎症との間にタイムラグが生じていることに注意が必要だ。
