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2026年診療報酬改定~回復期リハと地域連携~


図表1 中医協総会 2025年11月14日

 中医協における2026年診療報酬改定の議論が佳境に入っている。今回は2025年11月の中医協総会の資料から、回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)のこれまでの改定経緯、2026年診療報酬改定へ向けての回復期リハ病棟の重症患者基準と実績指標、質の高いリハ推進、退院支援と地域連携の在り方について振り返ってみよう。

1 回復期リハ病棟の経緯

 回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)は、脳血管疾患や骨折などの病気で急性期の治療を終え、症状が安定し始めた患者さんが、自宅や社会に戻ることを目指し集中的なリハビリテーションを行う専門の病棟だ。ここでは、日常生活動作(ADL)の改善や、退院後の生活を見据えたリハビリテーションが行われる。回復期リハ病棟は2000年にスタートして以来、2024年8月現在、全国9万5710床、1625医療機関ある。この10年をみてもその病床数は1.3倍に達した。

 回復期リハ病棟の改定の経緯を見ていこう。2000年に回復期リハ病棟が創設された。2006年には回復期リハでは患者状態ごとに、疾病別リハ料を設定し、算定上限日数を60日~180日とした。具体的には、脳血管疾患などは最大180日、大腿骨骨折などの運動器疾患は最大90日など、疾患ごとに入院上限日数を定めた。また患者1人あたりのリハ提供単位数の上限を6単位から9単位に引き上げた。

 2008年には入院料を入院料Ⅰ、入院料2の2区分とした。入院料1の施設基準に軽症者を受け入れて重症者を回避するいわゆるクリーム・スキミングを防ぐため、新規入棟患者の重症患者の受け入れ割合と在宅への復帰率の要件も加えた。2010年には休日にもリハを行う休日リハ加算を新設した。2012年には入院料を入院料1から入院料3の3区分に増やした。2014年には休日リハ加算を入院料に包括化した。

 2016年にADLの改善(FIM利得)に基づくアウトカム評価を導入した。2018年に入院料を入院料1から入院料6までの6区分に見直した。また入院料1の施設基準に専任の常勤管理栄養士を1名配置することを望ましいとした。2022年には入院料5を廃止、入院料6を入院5として設定し、5区分とした。そして入院料1~入院料4における重症の新規入院患者割合を見直した。リハ実績報告の適正化を計るため入院料1・3において第三者評価を受けていることを要件に加えた。2024年に運動器リハ料の算定単位数が6単位を超えてもADL改善が認められなかったことより、算定単位数の上限を見直した。またGLIM基準による栄養評価の要件化を計ることとした。

2 回復期リハ病棟の施設基準

 以上の経緯を踏まえて現状の回復期リハ病棟の施設基準が出来上がった。現状は以下である。入院料は1~5と近隣に回復期リハ病棟がない場合の入院医療管理料よりなる。回復期リハ病棟の目的は急性期病院からの受け入れや在宅患者の緊急受け入れ、そして集中的なリハビリテーションを提供することで、患者さんの機能回復と社会復帰を促進することにある。

 入院料の構成は以下の3層構造よりなる。1つ目は包括払いの入院基本料、2つ目は診療実績、そして3つ目は実績指数だ。実績指数は入院料1・3に導入されている(図表1)。

(1)包括払いの入院基本料

回復期リハ入院管理料は包括払いの入院基本料からなっている。入院基本料に投薬料、注射料、処置料(一部を除く)、検査料、画像診断料、リハビリテーション料(一部を除く)など、多くの医療サービス費用が含まれ、これらが包括払いとなっている。

そしてその算定要件としては専従の医師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、社会福祉士などの多職種配置が要件となっている。

(2)診療実績

 診療実績には在宅復帰率、重症者の割合が含まれる。在宅復帰率とは退院した患者のうち、自宅(または一定の介護施設)へ復帰した患者の割合だ。在宅復帰率は多くの入院料区分で70%以上だ。また重症者の割合とは、前述のように軽症者ばかり集めて「いいとこどり」をするクリーム・スキミングを防ぐ措置だ。入棟時のFIMスコア、年齢などから重症患者の定義が決められている。

(3)実績指数

 実績指数はアウトカム評価ともいわれ、リハビリの効果を評価する指数だ。評価指標としては FIM(機能的自立度評価表:Functional Independence Measure)という評価スケールが用いられる。FIMは食事、更衣、トイレ、入浴などの運動項目(13項目)と、理解、記憶などの認知項目(5項目)の合計18項目から成り、それぞれ介助量を点数化している。

 FIMの計算方法は入院時と退院時のFIM運動項目の得点差(改善度)を、入院期間と疾患ごとの標準的な入院日数(算定日数上限)の比率で割るという以下の計算式で算出される。

実績指数 = (退院時のFIM点数 - 入院時のFIM点数) / (実際に入院した日数 / 疾患ごとの算定上限日数)

 この数値が大きいほど、短い入院期間でより効果的にADLが改善した、すなわち「リハビリテーションの効果が高かった」とみなされる。 

上記の施設基準を入院料ごとにその詳細を図表2でしめす。

図表2

   中医協総会 2025年11月14日

3 回復期リハの現状の課題

 2020年に実績指数が40に引き上げられた際に、以下の「実績指数の計算除外」の基準が設定された。具体的にはリハビリの効果が期待できない運動FIMが20点以下(重度の身体機能障害)、運動FIMが76点以上(改善余地が少ない)、認知FIMが25点未満(認知機能が著しく低下)、年齢が80歳以上。

 これらの基準に該当する患者は、実績指数の計算から除外することで、回復期リハ病棟の評価が不当に低下しないよう配慮された結果だ。しかし、来年2026年度の診療報酬改定に向けて、これらの除外基準の妥当性が現在、再検討されている。特に後述するように「80歳以上」や「認知FIMが24点以下」の患者を一律に除外することについての見直しの議論が進んでいる。

 次に実績基準の基準値の引き上げること、また実績要件の無い入院料区分をどのように考えるかの検討もなされている。また2024年改定で運動器リハ料について6単位を越えて実施している患者が相当数いるが、単位数が増えてもFIM利得がほとんど変わっていないため、6単位を超えるリハビリを実施できる対象について分析を深める必要があるとされている。

4 回復期リハ病棟における重症患者基準

 ここからは回復期リハ病棟における「重症患者基準」の詳細を見ていこう。前述したように2008年から回復期リハ病棟における「重症患者」の基準が導入された。重症患者の定義は、日常生活機能評価が10点以上またはFIM総得点が55点以下である。そして入院料ごとに「重症患者割合」の基準も以下のように決まっている。入院料1・2は重症患者割合は4割以上、入院料3・4は3割以上。

 この重症患者割合を入院料ごとにみると、入院料1・2、入院3・4ともそれぞれの基準値に近い病棟が多いことが分かった(図表3)。それぞれ基準値をクリアするために基準値ぎりぎりになるように患者を集めている。

図表3

      中医協総会 2025年11月14日

また重症患者のうち約1割は「FIM得点20点以下」(FIM運動得点・認知得点共にほとんどが1点(全介助)またはそれに準じる状態)で、これらの患者はFIM利得(FIM改善度)が全体と比べて小さく、きわめて低い患者も多い(図表4)。

図表4

       中医協総会 2025年11月14日

 これを見ると、回復期リハ病棟の多くが「重症患者割合をクリアすることに苦労していて、リハビリ効果の出にくい全介助に近い患者を無理やり受け入れている」ともとれる。

 これに対して、中医協では保険者側の委員が、「FIM得点20点以下の患者はリハビリ効果が出にくく、ほかの病棟での対応がのぞましいのではないか?こうした患者を重症患者の定義からはずしてはどうか?」などの意見も出ている。

 一方、診療側の委員の意見としては「FIM得点20点以下の患者でもリハビリ効果が高い患者も一定程度いる。FIM得点20点以下の患者はリハビリ効果が出ないと決め付けることはよくない」との意見もある。

5 回復期リハ病棟における実績指数

 実績指数とは、回復期リハビリテーション病棟でのアウトカム評価の1つで、日常生活動作の改善率を入院日数で割ったものだ。 つまり、短い入院期間で日常生活動作が良く改善した場合、この 点数は高くなり、逆に入院期間が長く、日常生活動作があまり改善していない場合は点数が低くなる。

 この回復期リハの実績指数から除外できる条件には、在棟中に一度もリハビリを算定しなかった患者や、死亡した患者がある。また、一定の割合(30%)を超えない範囲で、FIM運動項目得点が20点以下、76点以上(いずれもFIM改善の見込みがすくない)、またはFIM認知項目得点が25点未満の患者も除外対象となる。さらに、高次脳機能障害患者が40%を超える医療機関では、高次脳機能障害の患者を全員除外することもできる。また入棟時に年齢が80歳以上の患者も除外できる(図表5)。

図表5

          中医協総会 2025年11月14日

 

 ただ、この実績指数が適応になるのは入院料1・3で、入院料2・4は適応とはならない。このため入院料1・3では基準を満たす病棟が大半で、基準を大きく超える病棟もある。一方、適応にならない入院料2・4の病院では実績指数が低い病棟がある。

 以上の実績指数の算出から除外できる基準のうち、「年齢が80歳以上のもの」に該当する患者が40%以上である施設がほとんどである。

 このため、前述のように次期2026年度の診療報酬改定に向けて、これらの除外基準の妥当性が現在、再検討されている。特に「80歳以上」や「認知FIMが24点以下」の患者を一律に除外することについての見直しの議論が進んでいる。このため、これらの患者のFIM利得を全体の患者と比較してみた。これによると年齢が80歳以上の患者は全体と変わらなかった。一方、認知FIM24点以下のものは全体よりわずかに低く、運動FIM20点以下の者はさらに低かった(図表6)。また認知FIM24点以下でも15点から24点はある程度社会性やコミュニケーションが保たれた患者が多いことから、これまでの除外基準を見直して、80歳以上の患者や認知FIM15点以上の患者は除外せず、リハビリ実績指数の計算に含めるべきと厚労省側の林医療課長は提案している。

図表6

        中医協総会 2025年11月14日

 また林医療課長は「退棟時のFIM下位項目のトイレ動作や移動(歩行・車いす)の得点が5点・6点となった患者では自宅復帰割合が高くなる」ことも紹介している(図表7)。これらトイレ動作、移動動作に対する集中リハが在宅復帰率を高めることになるだろう。

図表7

     中医協総会 2025年11月14日

 また排尿自立支援加算や接触嚥下機能回復体制加算などのより質の高いリハビリ提供に向けて、これらの加算を回復期リハ1・2において要件化してはどうかとの議論もある。

6 回復期リハと退院支援

(1)退院前訪問指導

退位前訪問指導は、現在包括評価となっている。この退院前訪問指導について、複数のスタッフによって60分以上の長時間かけて行われていること、さらに円滑な在宅復帰へ向けて有用であることを踏まえて、包括評価として扱うかどうかについての議論も行われている(図表8)。

図表8

       中医協総会 2025年11月14日

(2)回復期リハ病棟と高次脳機能障害の退院支援

 回復期リハ病棟には高次脳機能障害患者も一定数いる。中医協の調査によると、高次脳機能障害患者が病棟に1~10人いる病棟が36.4%もあった。

 そもそも高次脳機能障害の診断がついていない場合もある。また回復期リハ病棟を持つ医療機関が地域の障害福祉関連機関とのネットワークとの関係が希薄であることも多い。こうしたなか高次脳機能障害支援普及事業では全国126か所の高次脳機能障害の相談支援や地域の医療機関との関係調整を行う医療機関を設定している。回復期リハ病棟の退院支援では、こうした高次脳機能障害の拠点医療機関と連携することが求められている。

(3)回復期リハ病棟の地域支援事業への参画

 2024年改定で、回復期リハ病棟入院料1・2では地域支援事業への参加が望ましい要件となった。現状では約70%の医療機関が地域支援事業に参加している。回復期リハ病棟にとっては地域支援事業のなかでも地域リハビリ活動への参加が特に重要だ。地域における介護予防の取り組みに参加することだ。具体的には地域ケア会議、通所・訪問介護事業所、住民運営の通いの場等へのリハビリスタッフの関与を促すことが大事だ。医療機関の地域貢献の中でもリハ専門職を定期的に地域支援事業に定期的に派遣する体制を構築することが大事になる。いずれ回復期リハ病棟の地域支援事業への参画は必須要件になるだろう(図表9)。

図表9

       中医協総会 2025年11月14日

以上、2025年11月の中医協総会の回復期リハ病棟の議論を振り返った。今後の中医協答申に期待したい。

参考文献

 中医協総会 2025年11月14日