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OTC類似薬の技術的検討会


図表1 社会保障審議会医療保険部会 2026年3月19

 2026年5月26日の健康保険法の改正が国会で成立した。これによりOTC医薬品と効能・効果が同じ医療用医薬品であるOTC類似薬の一部保険外療養という特別料金制度が2027年3月より始まる。この新たな制度の経緯とその具体について見ていこう。

1 健康保険法改正とOTC類似薬

 事の発端は、日本維新の会の猪瀬直樹議員は2025年3月6日の参院予算員会で「OTC類似薬で(医療費を)1兆円は削れる」と打ち上げたことだった。そして2025年10月20日の自民党、日本維新の会の連立政権の樹立に至って、OTC類似薬の保険給付の見直しが連立政権の社会保障制度改革のトップ項目に位置づけられた。

 この自民党、日本維新の会のOTC類似薬の見直しの提言を受けて、社会保障審議会医療保険部会(以下、部会)でも2025年11月よりその検討が始まった。

 部会ではOTC類似薬の保険給付見直しについて賛成、反対の意見がさまざまあった。賛成派は「選定療養で追加の自己負担を求める方法や償還率を変える等の方法など、具体的な検討を進めてほしい」、「OTC類似薬と市販薬の用法・用量、効能・効果等の違いを踏まえつつ、市販薬で代替可能なものはできるだけ広い範囲を対象としてほしい」、「一方、子どもや慢性疾患を抱えている方、低所得者への配慮は当然必要だ」としている。

 反対派の意見としては、「医療用医薬品と市販薬で有効成分が一致していない、あるいは一致していても効能・効果が異なる薬があるので、一律の保険外しは難しい」、「患者の判断によっては一日の最大用量が異なることで十分な治療効果が得られないことも考えられる」、「患者が薬の違いを理解し、他の薬との飲み合わせに注意し、病気に対して適切に薬を選択することは現実問題として難しい」、「どの程度の期間服用すればよいかを自己判断しなければならないということは、軽い症状で受診を控えれば、重篤な疾患の早期発見・早期治療の機会を失うことも否めない」などの意見が交わされた。 

 以上より、健康保険法改定にあったて、論点は以下の3つに絞り込まれた。論点①は費用負担の在り方、論点②は配慮が必要な者の範囲、論点③はOTC類似薬の範囲である。この論点に関する部会委員の意見を以下に見ていこう。

論点①費用負担の在り方

 「(もしOTC類似薬を)OTC医薬品に変更した場合、患者の自己負担がかなり増える」、「(OTC類似薬を)保険の枠内に置きつつも、保険外併用療養の形で別途負担を求める仕組みも考えられる」、「選定療養で追加の自己負担を求める方法、償還率を変える方法もある」、「OTC類似薬を保険適応とした上で患者の負担を変更すると言うやり方が弊害が少ないのでは?」。

論点②配慮の必要な者の範囲

 「こどもや慢性疾患を抱えている方、低所得の方については配慮が必要だ」、「一般用医薬品では医療用医薬品の10倍以上の価格になることもあり、難病の方や心身障害者の方などの負担が非常に重くなる」。この配慮が必要な者の範囲として、間(はざま)保険局長は以下を示している。「子供は高校生まで、難病は厚労省が指定する指定難病以外も含む、低所得者は生活保護受給者」としている。また医師が医療上必要と考える患者については、「アトピー性皮膚炎など慢性疾患で年間を通じて通院する患者」を例示している。

論点③OTC類似薬の範囲

 「(OTC類似薬とOTC医薬品は)成分が一致していても、用法・用量、効能・効果、対象年齢、投与経路、剤型など様々な違いがあり、単純に保険適用から外すことは難しい」、「用法・用量、効能・効果等の違いを踏まえつつ、OTCで代替可能なものはできるだけ広い範囲を対象としてはどうか?」以上の部会意見を踏まえて、2025年12月19日に自民、維新の政調会長間協議で以下のような見直し内容で合意がなされた。

 「長期収載品で求めているような別途の保険外負担(特別の料金)を求める新たな負担等を2026年度中に創設」(これには健康保険法の改正が必要)、「特別料金の対象の範囲となる医薬品は77成分(1100品目)とする。これはOTC医薬品と成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品を機械的に選択」、「特別の料金は対象薬剤の薬剤費の4分の1とする」、「配慮が必要な患者はこども、がん患者、難病患者などの慢性疾患を抱えている方、低所得、入院患者、医師が対象医薬品の長期使用が医療上必要と認める患者」。

 こうして成分数77、品目数約1,100の特別料金の対象となる医薬品のリストが社会保障審議会医療保険部会で2025年12月25日に公表された。主な対応症状は、鼻炎(内服・点鼻)、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状全般、腰痛・肩こり(外用)、みずむし、殺菌・消毒、おでき・ふきでもの、皮膚のかゆみ・乾燥肌等。

 上記の政調会長間協議の合意を図表1に示す。このなかの特別の料金とは選定療養の一種で、OTC類似薬の薬剤費の4分の1にあたる保険外療養のことだ(図表1)。これにより節減される医療費は900億円とのことだ。当初のOTC類似薬の保険除外した時の1兆円節減んからずいぶん削減額が圧縮されている。

2 健康保険法改正の成立とOTC類似薬の技術的検討会

 以上の議論をへて2026年4月9日に、OTC類似薬の追加負担を含む健康保険法改正案が衆議院本会議に上程されて、4月24日に衆院厚生労働委員会、4月28日に衆院本会議で可決された。ただ付帯決議でOTC類似薬の患者特別負担による受診控えの懸念が指摘され、施行後の影響検証と必要な見直しを求める付帯決議が採択されたそして同法改正案が2026年5月13日より参議院本会議で審議入りし、同年5月29日参議院本会議でも可決成立した。

 本法案が成立後、2027年3月に施行するまでの間、法律の具体的な運用を検討する場としての「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」(座長著者:以下検討会)が設置され、2026年6月25日に第1回検討会を開催し、同年8月5日まで4回の検討会が開催され、中間とりまとめが行われた。

この検討会は、厚生労働省の保険局長が設置する「制度施行へむけての調整の場」であり、対象成分・除外基準・運用方法を詰めるための専門家による技術的検討会だ。 健康保険法では「選定療養としてOTC類似薬に特別負担を課す」枠組みだけを規定している。このため、具体的な対象成分・除外基準・運用方法は政省令・告示で決まる。その政省令・告示を作る前に、専門家の意見を聴取する場として有識者会議が設置され検討を行った。

 本検討会で議論すべき論点は以下の3つだ。論点① 77成分の医療用医薬品とOTC医薬品における効能・効果の違いの整理、②別途の負担を求めない者と療養の範囲の整理、③その他(図表2)。これらを順次見ていこう

図表2

OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会 2026年6月25日

(1)77成分の医療用医薬品とOTC医薬品における効能・効果の違い

 今回の特別料金の対象となる医療用医薬品、すなわちOTC類似薬の77成分については、厚労省がOTC医薬品と成分・投与経路が同一で、最大用量が異ならない医療用医薬品をまず機械的に抽出した。しかしこのOTC類似薬とOTC医薬品の間には効能・効果に差異がある。簡単にいうとOTC類似薬の方がOTC医薬品より効能効果の範囲が広い。このためOTC類似薬とOTC医薬品の効能効果がどの範囲で一致し、どの範囲で異なるかを添付文章から精査しなければならない。

 このためのルールをまず取り決めた。ルールは以下の2つである。効能・効果が一致する場合と一致しない場合がある。効能・効果は添付文章上、疾患名と症状名で記載されている。

 検討会では疾患名と症状名で一致する場合、しない場合を整理することになった。

 具体例を見ていこう。たとえばアレジオンでおなじみのエピナスチン塩酸塩の医療用の効能・効果はアレルギー性鼻炎で、OTC医薬品と同じだ。しかし医療用には皮膚そう痒症があるが、OTC医薬品にはない。このためエピナスチン塩酸塩を皮膚そう痒症で処方する場合には、特別料金を課すことはできない。

 ムコダインでおなじみのカルボシステインは医療用では効能・効果は上気道炎、急性気管支炎、慢性副鼻腔炎がある。ところがOTC医薬品では効能効果は疾患名ではなく、症状としての「たん」のみの記載しかない。このため検討会では「慢性副鼻腔炎でたんとは一致しないのでは?」との意見もでた。しかし副鼻腔炎でのたんは後鼻漏の場合もあること、副鼻腔気管支症候群もあること、制度運用上のわかりやすさから、副鼻腔炎にカルボシステインを処方した場合にも特別料金の対象とすることにした。

 関節リウマチの患者に鎮痛剤のイブプロフェンの場合を見てみよう。医療用の効能・効果は関節リウマチ、関節痛及び関節炎、月経困難症だ。これに対してOTC医薬品でも、関節痛、生理痛となっている。これだと関節リウマチの患者にイブプロフェンを処方すると、自動的に特別料金がかかることになる。関節リウマチでは長期にわたってイブプロフェンを処方すると、特別料金もばかにならない額になる。こうした患者には後述する長期処方への配慮が必要だ。

 ケナログ軟膏でおなじみのトリアムシノロンアセトニドを見ていこう。医療用のトリアムシノロンアセトニドの効能・効果は歯肉炎・難治性口内炎及び舌炎で、OTC医薬品は口内炎(アフタ性)とある。この場合、口内炎と言う疾患名で一致する。しかし舌炎はOTC医薬品にはない。ただその頻度をNDB(レセプトデータベース)からみると口内炎のみが90.8%、口内炎と歯肉炎の併存が0.2%、舌炎の実が3.2%、歯肉炎のみは0.2%で圧倒的に口内炎が多い。このため医療用医薬品のOTC類似薬とOTC医薬品は口内炎で一致することとして、OTC類似薬に特別の料金を課すことになった。

 ラキソベロンでおなじみのピコスルファートナトリウム水和物は、医療用のOTC類似薬の効能・効果は便秘症、術後蠕動補助、造影剤(硫酸バリウム)投与後の排便促進である。一方、OTC医薬品の効能・効果は便秘と便秘に伴う症状の緩和である。両者が一致しないのは造影剤(硫酸バリウム)投与後の排便促進である。この場合はOTC類似薬に特別の料金を課すことはできないと考えられる。しかしこの場合は頻度的には造影剤投与後における投与頻度が少ないので、制度運用上の分かりやすさを考えて、一律、特別料金の対象とすることになった。

 フロリードでおなじみのミコナゾール硝酸塩は白癬やカンジダ症で医療用のOTC類似薬もOTC医薬品も効能・効果は共通している。しかし医療用のOTC類似薬は癜風(でんぷう)に対しても効能・効果を有する。一方、OTC医薬品には癜風の効能・効果はない。このため医療用のOTC類似薬を癜風に用いるときには特別料金の対象とならない。

(2)別途の負担を求めない者と療養の範囲の整理

 別途の負担を求めない者と療養の範囲については、図表1のように、がん患者、難病患者、入院患者、処置等の一環で対象医薬品の処方が必要な方、医師が対象医薬品の長期使用等が医療上必要と考える方、「OTC医薬品を服用しない」こととされている方などがある。

 このうちがん患者について見ていこう。具体的にはがん患者については、がんの治療中の患者、例えば抗がん剤治療、放射線治療、手術等に伴う副作用や有害事象への対応、免疫抑制状態等への対応が該当する。この場合には特別料金の対象とはならない。一方、がんとは別の疾患の治療や、がんとは直接関係しない一般的症状には特別料金の対象となる。またがん治療後も長期に薬物対応が必要な場合は「長期使用」か否かで判断するとしている。

 難病患者も特別料金の対象外だ。難病とは指定難病患者で軽度者も含む。指定難病にはパーキンソン病、全身性エリテマトーデス(SLE)、潰瘍性大腸炎、特発性拡張型心筋症 、特発性間質性肺炎 、再生不良性貧血、後縦靭帯骨化症などでは特別料金の対象外となる。一方、指定難病と関連ない症状は特別料金の対象となる。国の公費負担医療の受給者についても対象となる。しかし公費負担と関連ない症状は負担対象となる。なお国の公費負担医療の例としては小児慢性特定疾病などが含まれている。

 入院患者も特別料金の対象外だ。理由は以下だ。外来患者はOTC類似薬で特別料金がかかれば、自分でドラッグストアに行って、OTCを選択することができる。しかし入院中の患者はそうはいかない。このため特別料金は免除される。また退院時処方にも同様に特別料金の対象とはならない。しかし在宅医療の患者や介護保険施設に入所中の利用者は特別料金の対象となる。

 また外来における処置・手術等の一環として医療用のOTC類似薬が処方される場合、当該処置・手術と一体不可分であり、かつ当該処置と密接に関連する範囲については特別料金が課せられない。たとえば抜歯後、皮膚の損傷に対する縫合処置後、褥瘡処置後、皮膚生検後、熱傷処置後、骨折に対する非観血的整復術後のロキソプロフェンナトリウムなどは特別料金を課せられない。これらの期間については、NDB調査によるとおよそ14日であったことより、14日間を特別料金の対象外とすることになった。

 次に長期使用の場合を考えてみよう。たとえば寝たきりによる活動量の低下による慢性便秘について酸化マグネシウムを長期に服用する場合、たとえば年間処方日がおおむね50週であることを目安にして、特別料金の対象としないとするなどの例を挙げることができる。

 また外用薬の場合、内服薬と違って貼付や塗布回数がそのまま実際の貼付や塗布日数とはならない。このため通年処方に該当するのは、アトピー性皮膚炎でヒルドイド軟膏などを、医師が毎日塗布を指示し、その前提の下で定期受診を行って処方している場合である。この場合には外用薬の通年処方とみなし、特別料金の対象外とする。しかし症状の有無によって断続的に使用を想定している場合には、特別料金の対象となる。

 湿布薬について見ていこう。変形性関節症、慢性腰痛には湿布薬が長期処方されている。これについてはガイドラインにおいてロコアテープでおなじめのエスフルルビプロフェンについては、臨床試験で52週まで効果が持続することが確認されている。このため長期処方でも特別料金の対象にならない。一方、慢性腰痛に関するNSAIDsの湿布薬は、慢性疼痛診療ガイドラインでは、漫然とした長期投与は避けるべきとされている。このため通年処方でも特別料金の対象となる。

 ただ、年間を通じて鎮痛消炎剤の外用薬が定期的に使用されている患者の中には、変形性膝関節症等の慢性かつ重度の疼痛性疾患を有していると考えられる例が一定数認められる。

 このため、2028年度末までの経過措置として、変形性膝関節症におけるKellgren–Lawrence(KL)分類のGrade4であることが客観的に確認され、医師が年間を通じた疼痛管理として継続使用が医療上必要と判断する場合に限り、特別料金の対象外とすることになった。

 なお、長期投与であるかどうかは、初診時には、診療情報提供書、薬剤情報、お薬手帳、オンライン資格確認による薬剤情報で確認することができる。こうした確認ができない場合は、初診から6か月間にわたり症状の持続反復と、対象医薬品の継続使用が確認される場合、当該医薬品を通年(50週)使用することが医療上必要であることを医師が認める場合には年間の処方日数が50週を満たしていなくとも、特別料金の対象外とすることができる。

 OTC医薬品の添付文書に「服用しない」と記載されている医薬品がある。同様に医療用医薬品でも禁忌、あるいは慎重投与等の記載がある場合がある。こうした中でイトプリドはOTC医薬品では妊婦、授乳婦には「服用しない」と記載があり、医療用医薬品でも妊婦については慎重投与となっている。こうした医師の判断で慎重投与した場合には特別料金の対象とはならない。

 検討会では、以上の議論を2026年8月5日に中間とりまとめとして公表した。この中間とりまとめを社会保障審議会医療保険部会で検討し、患者ヒアリング等をおこない、さらに中医協でも議論することになる。その後、2026年秋にも関連の省令・告示改正等を行い、医療現場や国民への周知を行った上で、2027年3月からOTC類似薬の新たな特別負担制度がスタートする予定だ。その行方に注目したい。

参考文献

厚労省社会保障審議会医療保険部会 2026年3月19日

厚労省保険局 OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会 2026年6月25日