エッセーの投稿

イエスが重い皮膚病の患者を癒す


 先週の衣笠病院の朝の礼拝のとき、赤松牧師が読んだ聖書の箇所はルカによる福音書 5章12節~16節のイエスが重い皮膚病に苦しむ患者を癒した箇所だ。重い皮膚病とはハンセン病(らい病)のことだ。

 さてイエスの癒しの力は具体的にはどのようなものだったのだろうか?イエスが行った癒しは、多くの場合、触れることや祈りを通じて、病気や怪我に苦しむ人々に安心と回復を与えるものだった。心や体だけでなく、人々の魂そのものを癒していた。

 また聖書には、イエスが病を癒すだけでなく、罪も許す力を持っていることを示す場面もある。例えば、「あなたの罪は赦された」という言葉と共に癒しを行う場面だ。

 聖書の中で「罪」というのは、必ずしも個人の具体的な悪行を指すわけではなく、神との関係が損なわれている状態や、人間の弱さ、過ちを象徴していることが多い。

 病気に苦しむ人は、実は病気に伴う偏見や差別に苦しんでいることが多い。特にハンセン病患者の場合、イエスの時代からけがれたものとして社会の差別と偏見にさらされていた。このため患者みずからもハンセン病にり患したことを、罪として呪い憎んでいた。つまり自らに対する差別・偏見の意識、すなわちセルフ・ステイグマにさいなまれていた。差別偏見は他者ばかりに向けられるものではない。自らに対しても向けられる。それがセルフ・ステイグマだ。イエスはこのセルフ・ステイグマを取り除くことを「罪をゆるす」と述べたのではないか。これによって患者はステイグマから解放されることによって、安寧な魂を取り戻す。

 ハンセン病は日本でも最近まで差別や偏見の対象となっていた。そして患者のハンセン療養所での強制隔離が最近まで続いていた。しかし2001年にようやく国もハンセン病患者に対する隔離政策の誤りを認め、ハンセン病患者・元患者に対して謝罪した。

 しかしそれはあまりに長い年月がかかった。イエスの赦しから、なんと2000年を経てようやくハンセン病に赦しを与えたのだ。