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セルフメデイケーション


 セルフメデイケーションは当初、和製英語と思われていた。1950年代の後半、この語を配置薬を意味する言葉として発案者したのは石坂哲夫(東大薬学部・日本薬学会事務局長)で、それを広めたのは曽我正雄(全国配置家庭薬業協会長)だ。

 WHO(世界保健機構)も1998年に、「セルフメディケーションとは、個人が自分で認識できる症状や慢性疾患、再発する症状に対して、安全性・有効性が保証された医薬品を適切に使用して自ら対処すること」 (WHO The role of the pharmacist in self-care and self-medication, 1998)と定義づけた。

 WHO の 1998 年の定義は FIP(国際薬剤師連盟)と共同で作成されており、 FIP は1980年代からすでにセルフメデイケーションを用いていた。

 以上をみると1950年代の後半から日本で用いられていた配置薬としての「セルフメデイケーション」は、期せずしてWHOやFIPのセルフメデイケーションを30年も前に先取りしていたことになる。

 さて話は変わるが実は英米圏ではセルフメデイケーションと言う言葉は19世紀からすでに使われていた。ただその言葉には現在のような意味ではない。よりネガテイブな意味がつきまとう。それは「アルコールや薬で精神状態を紛らわす」という意味だ。英語の辞書では、ほぼ必ずこの例が引用される。ケンブリッジ英英辞典では 「セルフメデイケーションとはストレスや不安を酒で紛らわせる」、オックスフォード学習者用辞書では「精神的苦痛を酒や薬で抑え込む行為」という意味が示されている。

 これに対してWHOがセルフメデイケーションを採用したのは公衆衛生のプライマリヘルスケアの文脈上で、セルフケアに並ぶ用語として、旧来からあるセルフメデイケーションに新たな定義をつけて採用したということだ。

 この意味では冒頭に述べた配置薬に対するセルフメデイケーションはWHOやFIPのセルフメデイケーションの定義を30年も前に先取りした画期的なネーミングだったといえる。

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