
米国ではリフィル処方が1950年代から始まり、75年になる。1980年代後半にニューヨークに留学していた時、外来では患者さんがカラの薬ボトルを外来に持参して、「リフィルでお願い」といっていた。米国では日本の薬袋の代わりに薬ボトルを持参する。リフィルは「カラのボトルに詰め替えて」と言う意味だ。中にはクレストール90日分を4回リフィルでお願いという言う患者もいる。90日4回だから次に診察室に患者が戻ってくるのは360日後、つまり1年後だ。「七夕処方」だと思った。
日本でリフィル処方が始まったのは2022年の診療報酬改定からだ。処方期間は医師が設定でき、3回を上限にリフィルが可能だ。しかしリフィルは思ったより伸びない。2024年7月調査では、リフィル処方せんは病院で0.14%、診療所で0.05%、平均で0.07%しか普及していない。
理由はなんだろう?一つの理由が長期処方がすでに普及しているからだ。たとえば30日処方を3回リフィルにして90日後に医師の受診をすることを考えてみよう。その間、患者は薬局で薬剤師に調剤をしてもらう。でもこれだったら90日処方にする方が簡単だ。
最近では安定している患者は90日処方にすることが増えている。中には99日処方をする医師もいる。向精神薬は30日処方制限があるが、生活習慣病薬などで安定している患者は90日処方でもOKだ。
しかし90日以上の処方したい場合にはリフィルで行う。90日3回リフィル、すなわち270日処方だ。こうした処方はすでに行われていて、保険の査定も受けていない。著者も90日3回リフィル処方推進派だ。著者は横須賀市にある衣笠病院で新患外来を担当している。新患の中には、敷地内の健診センターから回ってくる患者もいる。こうした患者の中に、高脂血症や高血圧の新患がいる。働き盛りのサラリーマンで、アトルバスタチンやアムロジピン単剤で経過を見ることができる患者だ。
こうした患者には90日3回リフィルがぴったり合う。最初の90日が終わったところで、問題がなければリフィルを勧める。すると忙しいサラリーマンの皆さんは二つ返事でOKしてくれる。先日もこうして270日目に診察室に戻って来た患者さんにリフィルの感想を聞いた。すると「診察のための待ち時間もないし、診察料の自己負担もない。早くて安くて便利」と言っていた。ただ中にはやっぱり心配なので毎回診察をしてほしいという人もいる。もちろんそういう方にはリフィルを中断して診察室に通ってもらう。ケースバイケースだ。
ただこうしたことから、90日3回リフィルにぴったり合う患者は意外にすくない。比較的若い患者で合併症もなく単剤治療で済むような患者だ。このため2年程前から始めて、これまでに10例ほどしかいない。でもこうしたリフィルの患者さんは薬局からトレーシングレポートで情報フィードバックもあり、薬剤師さんと共同で診ているという実感がある。と言うワケであせらず地道にリフィルの普及を図って行ければと思う。