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安楽死法がある国とない国の差は宗教的背景の違いだろうか?


医師による臨死介助の現状:

  図の濃い青は安楽死が合法化されている国、薄い青は憲法裁判所によって合法(または犯罪ではない)と判断されているが、法制化されていない国、灰色は非合法の国。

  世界地図をみると医師による臨死介助(安楽死)が合法化されている国はスイス、オランダ、スペイン、カナダ、米国の一部、オーストラリア、ニュージーランドだ。安楽死法が合法であるこれらの国はプロテスタントの国が多いのではないのか?

 2018年8月にフランスのパリにある国立緩和ケア終末期研究所を訪れた。この研究所は終末期に関する患者権利法に基づいて作られた。この法律は国会議員のクレスとレオネッテイが超党派の議員立法として成立させた。この法律では、最後まで安楽死を認めてはいない。しかし、終末期の患者の苦痛を取り除くため、麻薬と麻酔薬によるデイープ・セデーションを認めた法律だ。

 フランスはカトリックの国だ。このことから安楽死に対するプロテスタントとカトリックの宗教の違いを感じた。

 プロテスタントの国々は個人の意思や自由を強調する傾向があり、それが安楽死の合法化に結びつきやすい。一方、カトリックの影響が強い国々では、生命の尊厳や神が生命を与えるという考えが重視されるため、安楽死への抵抗が強い。

 しかし事はそれほど単純ではない。スペインやイタリアのようなカトリックが深く根付いている国でも、安楽死や医師による自殺ほう助を認める動きがあるのは、宗教的価値観と現代社会のニーズや倫理観とのバランスを模索しているからかもしれない。

 例えばスペインでは、個人の自己決定権や尊厳死の権利が重視され、2021年に安楽死が合法化された。またイタリアでも似たような議論が続いていて、法改正や裁判所の判断を通じて、このテーマに対する理解が広がっている。またポルトガルも最近合法化に踏み切ったけど、そのプロセスにはカトリックの宗教的価値観と個人の自己決定権との間の大きな葛藤があった。

 安楽死問題は、ヨーロッパではプロテスタント、カトリックの違いを超えて国民的な議論が進んでいる。

 一方、日本では日本尊厳死協会が、尊厳死の立法化を目指しているが、いまだ立法化のめども立っていない。現在、日本にあるのはアドバンスド・ケア・プラニングという終末期におけるケアの患者本人、家族、医療チームの合意形成のガイドラインだけだ。日本でもフランスのような終末期の患者権利法のような国民的が議論をまき起こすにはどうしたらよいのか?

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