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市立病院の将来像


 いくつかの地域の市立病院の将来像を検討する委員会に委員として参加している。共通しているのは新築移転や他の経営主体の病院との合築移転など、建築がらみの話だ。建築の話は10年後の将来の話だ。病院建築はその基本設計から詳細設計、着工から竣工までには時間がかかる。このため10年前くらいから議論を始めないと間に合わない。

 ところがこれから先の10年と言う時間を読みにくい。地域の人口動態や医療ニーズを予測をまず行う。しかしこの時世、病院の10年後の経営状態、さらに建築業界の事情を見越して予測するのはまず無理だ。

とくに最近の建築資材の高騰や建築人材不足による建築費の高騰は目を覆うばかりだ。当初予算の2~3倍に高騰している。このため入札不調が相次いでまるで予測が立たない。新築を諦めて大規模修繕に切り替えたところもあるが、修繕費まで同様の理由で高騰していて八方ふさがりだ。

 そんな中でも委員会では10年後の新築移転や合築の話を念頭に議論している。10年後に今の常識が通じるとはとても思えないのにお構いなしだ。もっとも全く何もしないわけにもいかないので、仕事をしていることを示すためのアリバイ作りの意味合いもあるのかもしれない。

 そんな中、ある委員会で「市立病院の将来の経営形態の見直しも抱き合わせで検討したほうがいい」と言った。すると市側からは「この会議の議題ではない」と断られた。しかし内心では、病院建築は経営形態の見直しと関係ないのか?未来永劫、市が病院事業を持ちづけることが可能なのか?一旦病院を作るとそのランニングコストはイニシアルコストの4~5倍に達する。これを病院の診療報酬だけで賄うことはもう無理だ・・・とも思った。市立病院の財政負担はどこも巨大だ。「本当に病院サービスが市の予算配分の中で最優先事業なのか?」といつも思う。

 さてこれからの病院事業はできるだけダウンサイズして機能もスリム化して行うことが必要だ。病院が単体ですべての機能をフルセットで持つような時代は終わりだ。そして官民パートナーシップをフル活用すべきだ。PFI、デザインビルト(DB)、包括委託、民設公営、民設民営などのような多様な手法を駆使すべきだ。

 市立病院の将来の建築を議論するに当たっては、病院機能の議論と同時に経営主体の見直し議論も平行して行うべきだ。

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