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精神科の医療保護入院が増加したワケ


     図表 中医協総会 精神医療① 2025年10月24日

 精神科病棟への入院は、大きく分けて本人の同意を伴う「任意入院」と、同意を必要としない「非同意入院(医療保護入院など)」に二分されている。2000年頃から任意入院が減少し、医療保護入院が急速に増加して現在は同数規模となっている(図表)。

 医療保護入院が急増した理由はなんだろう?この背景には、国が推進した精神科救急・急性期医療の体制整備と、診療報酬における「年間新規入院患者の非同意入院6割以上」という要件が深く関わっている。この要件が病院側に非同意入院である医療保護入院を促進させるインセンティブとなり、医療保護入院が増加したのではないかとの懸念や批判の声が上がっていた。

 このため2025年度厚生労働行政推進調査事業費補助金「精神科救急医療体制に関する研究」(研究分担者杉山直也)において、精神科救急急性期医療入院料病棟を持つ81医療機関から得られた2164名について、「精神科救急急性期医療入院料病棟必要性チェックリスト」を用いた研究が行われた。チェックリストは緊急に医療的介入を要する具体的因子の8因子と15の要配慮因子について、それぞれ1~3点評価を用いて定量評価を行った。結果は8因子15の配慮因子のチェックリスト3点以上の割合は73.1%で、従来の非自発入院の割合74.9%とほぼ一致した。つまり、判定の物差しを入れ替えても、算定対象となる患者層のボリュームはほぼ同じという結果だった。

 このチェックリストは、患者の臨床的な緊急性や重症度を測るための尺度で、上記の研究調査でも実際に3点となる因子に該当する患者が増えていることがわかった。増えているのは 「他害の事実」または「攻撃的・威圧的言動」(3点)、「自殺行動または切迫した自殺念慮」(3点)、「自立不全」や「危険回避困難」などの生活機能不全 (2〜3点)だった。こうした医療入院が増えた理由は以下の点が挙げられる。

 一つは1990年代後半以降の精神科救急・急性期医療の重視政策とそれに沿った診療報酬の影響だ。精神科救急や精神科の急性期治療病棟の拡充が、チェックリストの3点以上の患者の入院を増やしたのだろう。つまり救急や急性期を重視することで、興奮状態や病識が欠如している急性期の患者が医療保護入院の適用対象としてスピーディーに入院させられるケースが増加した。もう一つ見逃せないのが、認知症高齢者の入院増加だ。近年、精神病床に入院する高齢者、特に認知症に伴う周辺症状(BPSD:興奮、せん妄、徘徊など)を抱える患者の入院が増えている。このように医療保護入院が増えた理由はこうした精神科救急や急性期重視の制度的理由と認知症高齢者の増加のような疾病変化による複合的理由だろう。

 さて、2026年診療報酬改定で、これまでの「年間新規入院患者の非同意入院6割以上」と言う入院形態による要件は廃止され、「精神科救急病棟等必要性チェックリストにおいて3点以上のものとする」と言う入院の必要性に置き換えることになった。このように評価スケールを変えることで従来の医療保護入院がどのように変わるかについては今後の検証が必要だ。

 また精神科入院と同時に、精神科地域包括ケアの充実が必要だ。地域での精神医療を支える最も重要なインフラとして、精神科の重症者や退院直後の患者、医療保護入院の履歴がある人などを積極的に受け入れ、24時間対応を行う機能強化型の訪問看護ステーションへの手厚い評価も必要だ。これには専門性の高い精神科訪問看護師の評価も必要だ。また精神科入院患者の退院支援・地域移行の強化も必要だ。 病院に入院した段階から、保健師や精神保健福祉士(PSW)が関与し、退院後にどのような生活支援や医療サービス(デイケア、福祉サービスなど)をあらかじめ組み立てる「退院時共同指導」の強化や、また退院した人が地域で孤立しないよう、定期的な訪問や相談、生活環境の調整を行う事業所への支援が必要だ。こうした地域ぐるみの精神科地域包括ケアの充実が何より必要だ。

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