
横須賀にある衣笠病院で初診外来を週2回行っている。初診外来では衣笠病院併設の健診センターから精密検査を勧められた患者さんが回ってくる。一番多いのは悪玉コレステロールのLDLコレステロールの高い患者、そして糖尿病疑いでHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が7以上の患者さん、そして脂肪肝で肝機能異常の患者さんだ。これが健診センタ―紹介患者の御三家だ。
HbA1cの紹介の患者さんの中にはHbA1c8とか9の患者さんも交じってやってくる。しばらく健診をうけていない患者さんが突然HbA1cが跳ね上がって驚いてやってくる。たいてい50~60歳台で元気な患者さんだ。そういう患者さんには慌てて糖尿病薬を出さないようにしている。こういう糖尿病患者さんには「まず1に食事療法、2に運動療養、3,4がなくて5に薬」と言っている。意外に早期の糖尿病の患者さんはこの二つでHbA1cも3~4か月で正常化することが分かる。こういう患者さんはインスリン分泌能もよく、細胞のインスリン抵抗性もないからだろう。こういう患者さんには「HbA1cのセブンイレブンから早く抜け出るように」と言っている。また健診センターから回ってくる患者さんはまじめな方が多い。栄養士さんの言う事をよく聞いて、1日歩数6000歩を守って、2Kg減量も成功して、糖尿病のセブンイレブンを脱する。
ところが2023年から高齢者糖尿病のガイドラインが変わって、後期高齢者にはセブンイレブンではなくなった。なんと後期高齢者はエイトイレブンになったのだ。これからは75歳以上の方には「エイトイレブンに気を付けて」と言うことになった。
さて時々、初診外来でイレブンの患者さんがやってくる。HbA1c11の患者さんだ。こういう患者さんは糖尿病治療薬の中断者が多い。年季の入った糖尿病の患者さんで仕事盛りのサラリーマン、忙しさにかまけて受診を中断していた患者さんだ。受診理由を聞くと、「足の指が痛くなったから」という。慌てて靴下を脱がせて足先をみるとすでに小指の壊疽が始まっている。HBA1cも11もある。「これは入院ですよ」と言った。しかし仕事が忙しくて入院できないという。まず中断していた糖尿病薬を出して、整形受診を勧めた。糖尿病できちんと受診する人は少数派かもしれない。多数派は仕事の忙しいセブンイレブン派かもしれない。
さてセブンイレブンに入った患者さんにいつも決まって言うのが「眼科健診を受けてくださいね」ということだ。中途失明の半分が糖尿病性網膜症だからだ。また意外にも眼科からの糖尿病紹介も多い。多いのは虹彩炎でHbA1cを計ったら高かったという紹介だ。
このように糖尿病のセブンイレブンにまつわる話は尽きない。