エッセーの投稿

すい臓のう胞


 外来ですい臓のう胞の患者さんに出会った。70歳台の女性で、上腹部の痛みで受診された方だ。お腹を触診したら、なんと上腹部に拍動性の腫瘤を触れた。最初は腹部大動脈りゅうかと思った。CTを撮影してみるとすい臓のう胞だった。すい臓は大動脈の上にまたがって乗っているので、大動脈の拍動が直接のう胞に伝わって、拍動性の腫瘤のように手に伝わっていたのだ。血液検査ですい臓のアミラーゼも高かった。

 すい臓のう胞はときどき見るが、こんなに大きなのう胞は初めてだった。のう胞内の液体(漿液や粘液など)は基本的に非圧縮性流体だ。そのため、後方にある腹部大動脈などの大血管からの拍動(圧力変動)が、エネルギーロスを少なく均一にのう胞全体を介して前方に伝達したのだろう。のう胞の貯留液を通じて大動脈の拍動がダイレクトに手に伝わることを伝達拍動という。大動脈りゅうなどは周囲に後腹膜の脂肪組織が多いので、その拍動は脂肪組織に吸収されるので、かなり減衰して伝わる。

 さてすい臓のう胞は多くは良性だが、なかには粘液性ののう胞性腫瘍のように悪性のものもある。診断は造影CT、MRIやエコー、CA19-9などの腫瘍マーカが決めてになる。