
最近、慢性腎臓病(CKD)や代謝異常関連脂肪肝(MASLD)などの疾病領域における「栄養とリハビリテーション(運動療法)の統合」が注目のマトだ。こうした傾向は慢性疾患の重症化予防アプローチとして、ますます広く、そして深く定着していくと考えられる。CKDのリハビリは腎臓リハともいう。またMASLDのリハは肝臓リハともいう。なぜこれらの疾患にリハが有効なのだろうか?以前はこれほどこれらの疾患にリハビリの重要性は言われていなかった。その転機は以下である。
2010年ごろまでCKDでは、「運動は腎血流量を減らし、蛋白尿を悪化させる」という神話が長く信じられてきた。しかしその転機は 2011年に「日本腎臓リハビリテーション学会」が設立されたことが大きい。運動が腎機能を悪化させないばかりか、むしろ微小循環の改善や運動耐容能の向上に寄与することが臨床的に証明され、食事療法(低蛋白食などによる腎保護)と運動療法を組み合わせる「腎臓リハビリ」の概念が急速に確立した。
MASLDでも、長らく脂肪肝は「食べ過ぎと飲み過ぎによる肝臓の局所病変」として捉えられ、ひたすらカロリー制限が行われてきた。しかし近年、単なるカロリー制限では筋肉量が落ちてかえってインスリン抵抗性が悪化するケースから、「ただ痩せる」のではなく、「良質なタンパク質を摂りながら運動で筋肉量を維持・向上させる」ことが治療の根幹に据えられるようになった。このためMASLDのリハは肝臓リハとも呼ばれる。
さてCKDやMASLDの共通の背景にある高血圧、肥満、高血糖、脂質異常症といった生活習慣病(メタボリックシンドローム)の改善・管理には食事栄養療法とともにリハビリが必須だという考え方が定着してきた。というのも筋肉は糖や脂質を処理する最大の「代謝臓器」だからだ。栄養を整え、リハビリによって筋肉量を維持・向上させることが、結果的に全身の代謝改善につながり腎臓、肝臓への負担を軽減させることが分かってきたからだ。
さてリハビリの診療報酬評価も疾患ごとのリハで評価している。脳血管系リハ、運動器リハ、呼吸器リハ、心血管リハ、がんリハ、廃用症候群リハである。ところが、まだ腎臓リハ、肝臓リハはない。このためこれらのリハは廃用症候群リハで点数を取っているという。そろそろ腎臓リハ、肝臓リハを独立した疾患リハとして創設してはどうか?
