
秋の長雨がつづくなか、外来では体調不良を訴える中高年の女性があいつだ。前線が来ると頭痛がする。冷たい雨降りなのに、なぜか体がほてって汗をかく。めまいがする、関節が痛む。雨が続いて下痢と便秘を繰り返すなど、症状はさまざまだ。こうした気象に関連した不定愁訴を「気象病」という。なぜか中高年の女性が多い。
長雨や低気圧がつづく時期は、関節痛、頭痛、めまい、全身倦怠感といった「なんとなく体調がすぐれない」という訴えをされる患者さんが外来で急増する。こうした気象病の背景は気圧の変化を感じ取る内耳センサーの働きと、自律神経の乱れが深く関わっている。また「天気が悪いからだるい」と言う言葉の裏には軽度の脱水や気圧低下と自律神経のアンバランスがある。
低気圧が近づくと、内耳の圧センサーがその変化をキャッチし、脳の視床下部に情報を伝える。これにより、交感神経が過剰に優位になり、血管の収縮・拡張や血圧の変動が引き起こされる。これが、頭痛やめまい、古傷・関節の痛みを誘発する要因となる。
ただ「天気が悪いからだるい」という言葉の裏に、軽度の脱水、もともとある慢性疾患の悪化、あるいは器質的な疾患が隠れていないかなど、慎重な鑑別が必要だ。患者さんに対して、必要な検査をして、特に異常がなければ、「気のせいではなく、気圧や温度や湿度の変化によって自律神経が反応して起こる体のメカニズムなのだ」と説明してあげるだけでも、患者さんの不安が大きく軽減する
なかには自分の症状をよくわかっている患者さんもいて、「前線のうごきや低気圧に頭痛が敏感に反応しているので、気象予報士になれる」と言っていた患者さんもいた。患者さんが訴える不定愁訴を年のせいと片付けるのではなく、それそれの症状の糸をほぐして説明してあげれば、納得してもらえる。
またセルフケアの指導も大事だ。起床時にカーテンを開け、室内の明かりでも良いので光を浴びる(体内時計とセロトニン分泌の調整)。ぬるめのお湯での入浴や軽いストレッチで血流を促し、自律神経を整える。気圧の変動を事前にアプリなどで予測し、無理のないスケジュールで過ごすなどだ。
ところで「気象病」と言うのは正式な医学用語ではない。気圧や湿度、気温などの気象変化によって引き起こされる、さまざまな体調不良の総称(または俗称)として使われている。正式には自立神経失調症や、片頭痛、メニエール病などが正式病名だ。でも気象病というまるっとわかりやすい用語も捨てきれない。生活習慣病のように気象病と言う呼称を認めてはどうだろう。
英語圏でもweather-related illness ,weather-related symptoms,weather sicknessと言う言葉はよく見かける。日本でも気象病と言ってあげた方が、患者さんの納得感が得られると思うのだが。
