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セルフメデイケーションとOTC


図表1 薬局で自己採血でHbA1cとコレステロール値を測る

 2024年5月に名古屋で行った第18回日本ジェネリック医薬品バイオシミラー学会でOTC医薬品分科会(会長著者)の第一回シンポジウムを開催した。設立目的は「OTC医薬品の普及促進」だ。そしてOTC医薬品に関するエビデンスの集積と、わが国の医療制度にあったOTC医薬品の活用方法を議論することとした。

 当面の活動方針は以下だ。スイッチOTCの生活習慣病薬への拡大、スイッチOTCデータベースの構築、保険者によるスイッチOTCの普及支援など。

 そして2025年11月には盛岡市でおこなわれた日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会学術大会で第2回のOTC医薬品分科会シンポジウムが開催された。このときにも生活習慣病薬のスイッチOTC化の推進と生活者のヘルスリテラシー向上と、セルフケア・セルフメディケーション支援体制の整備を提言した。

以下、上記のOTC分科会から、生活習慣病薬のスイッチOTC化、OTCデータベースと最近話題のOTC類似薬について見ていこう。

1 生活習慣病薬のスイッチOTC化

 前述の生活習慣病薬分野のスイッチOTC化の前提要件について見ていこう。その要件とは長期リフィルと要指導用薬品への留め置き問題だ。

(1)長期リフィル

 著者らが考える生活習慣病薬のスイッチOTC化の要件は長期リフィル処方でも安全性に問題のない医薬品であることだ。著者は高脂血症剤のアトルバスタチンのリフィル処方を、2023年から著者が勤務する横須賀市の衣笠病院の外来で行っている。具体的にはアトルバスタチン単剤投与の患者について、90日処方の3回リフィルを、薬局での自己採血による血中コレステロール値検査と組み合わせで臨床研究を行っている。

 最近では薬局でも患者自己採血によるコレステロール値の測定が行われている。著者も日本調剤の薬局において自己採血で迅速検査を受けてみたことがある。検査結果が6分ででてきて便利この上ない。「薬局でも検査ができるんだ」と改めて知った(図表1)。

 この薬局での自己採血によるコレステロール検査と90日3回リフィルを組み合わせて先述の臨床研究を行っている。

 最近、90日3回リフィルすなわち270日目に外来に戻って来た患者さんから「ずいぶんお久しぶりですね」と声をかけられた。患者さんに聞くと、「とくに薬局で長期間、薬をもらっていても問題もないし、検査や栄養士の指導も受けられる。病院での待ち時間がなくなり便利だ」という。

 90日間3回リフィル+自己検査は忙しいサラリーマンには好評だ。こうした長期リフィルが可能なアトルバスタチンなどは、医師と薬剤師とが協働して行う薬物治療管理でスイッチOTC化しても問題のない医薬品だろう。その他の長期リフィルの候補薬としてはアムロジピンの単剤投与の患者だ。外来でも数は少ないが、アムロジピン単剤投与の90日処方の患者がいる。次なる90日3回リフィルの対象薬はアムロジピンだと思っている。

(2)要指導用医薬品の留め置き

 生活習慣病薬のスイッチOTC化ですこし心配な点は、現行のスイッチOTCではスイッチ化された直後の3年は薬剤師が介入できる要指導用医薬品であるが、3年が過ぎるとその後は薬剤師の介入が無くなることだ。生活習慣病の場合、長期リフィルで見たように、長期にわたる薬剤師の介入が必要だ。薬剤師が当該の疾患の重症化や、他の疾患の併発などを観察し、医師への受診勧奨を行う必要が出てくる。こうした場合には自己管理だけは心もとない。やはり専門家の薬剤師の介入が必要だ。

 しかしこれまではスイッチOTC医薬品が要指導医薬品として3年間たつと、インターネット販売も可能となる一般用医薬品に移行する。このため安全性の確保や適性使用の観点からスイッチOTC化が進まない状況になっていた。このため医薬品の特性に応じて、必要な場合には一般用医薬品に移行しないことを可能とする案が検討された。その対象としてはオーバードースなど濫用等の恐れのある医薬品もあるが、生活習慣病薬についてもこのカテゴリーに加えることが望ましいだろう。

 こうしたカテゴリ―の医薬品が2025年の薬機法改正で新設された「特定要指導医薬品」という区分だ。これは、従来の「要指導医薬品」の中でも特にリスクが高く、薬剤師による対面販売と服薬指導が厳格に求められる品目に対して設けられた新しい区分のことだ。

 以上の長期リフィルで安全性を確認し、特定要指導医薬品の制度を用いて、生活習慣病薬のスイッチOTCの要件は、90日3回の長期リフィルにより安全性を確認した上で、生活習慣病薬のスイッチOTCは要指導医薬品として留め置き、医師と薬剤師の協働の薬物治療管理薬として認めてはどうだろうか?

2 プロトコールに基づく薬物治療管理(PBPM)

 上記のリフィルとは、医師と薬剤師の協働の薬物治療管理の一つの形態だ。医師と薬剤師の共同の薬物治療管理については、2010年4月30日付厚生労働省医政局長通において、「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」の中で、以下のように病棟における薬剤師と医師の協働・連携によるチーム医療が提唱されている。「薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間等の変更や検査のオーダについて、医師・薬剤師等により事前に作成・合意されたプロトコールに基づき、専門的知見の活用を通じて、医師等と協働して実施すること」

 このプロトコールに基づく薬物治療管理(PBPM:Protocol Based Pharmacotherapy Management )は、薬剤師に認められている現行法の業務の中で、医師と合意したプロトコールに従って薬剤師が主体的に実施する業務を行うことを意味する(図表2)。

図表2

厚労省 医政局通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進」2010年4月30日

 この医政局通知は病棟内という限定はあるが、この考え方は地域における医師と薬剤師の協働にも拡張することは可能だろう。たとえばリフィル処方はまさにリフィル処方せんというプロトコールに基づいた医師と薬剤師が協働する薬物治療管理と言える。さらに特定要指導医薬品と言うカテゴリーも薬剤師が医師に受診勧奨をおこなう上での症状や検査値を事前にプロトコールで定めておけば、PBPMであると言える。

 このように生活習慣病薬の長期リフィルの安全性確認のあと特定要指導医薬品として扱うことは、まさに医師と薬剤師の協働薬物治療であるPBPMの考え方に他ならない。

 こうした環境整備によって生活習慣病薬のスイッチOTC化も当たり前のように行える時代が来るだろう。ぜひ2025年を生活習慣病スイッチOTCのスタート元年にしたいものだ。

3 医療用医薬品とOTCの統合データベース

 スイッチOTCが次第に増えている。2025年6月から8月にかけてタケプロン、パリエット、オメプラゾールなどのプロトンポンプ阻害薬(PPI)のスイッチOTCが続々と市場に出てきた。このためスイッチOTCは100成分近くも市場に流通している。また後述するように、今後、海外2か国以上でスイッチOTC化されている医薬品、およそ43成分が2026年までにスイッチOTC化される予想もある。

 こうしたなか医療用医薬品と同じ成分のスイッチOTCの間での重複投与が問題となっている。一番多い重複投与がバイアスピリンとロキソプロフェンナトリウムとの重複だ。処方せんで貰っているこれらの薬について、薬局の薬剤師が市販薬の服用歴を調べて、重複投与に気づいて疑義照会を紹介元に行って事前に重複投与を防いでいる場合がある。

 医療用医薬品の場合、マイナポータルの画面からデータベースにアクセスして、重複投与のチェックを行うことができる。しかしOTCの場合にはこうしたデータベースがない。このためまずはOTCのデータベースを作って、それをマイナポータルの医療用医薬品データベースと連結させる必要がある。

 しかしOTCデータベースの作成が難題だ。電子お薬手帳にOTCを入力できるアプリもある。ただこうしたアプリを使っている人については重複チェックをできるが、使っていない人には依然として重複チェックはできない。

 先日、外来でお薬手帳にOTCのレシートを貼ってきた患者さんに出会った。理由は、セルフメデイケーション税制の申告の資料とするためレシートを張り付けているという。これをみてセルフメデイケーション税制申請にもつかえる医療用医薬品とOTCの統合型電子お薬手帳を開発してはどうかと思った。セルフメデイケーション税制を使っている利用者は全国5万人あまりしかいない。理由は申請が面倒なことに尽きる。このためセルフメデイケーション税制申請アプリ付きの統合型電子お薬手帳を開発してはどうだろう。

4 さらなるOTCの普及を目指して

 ここからはさらなるOTCの普及促進策を見ていこう。

(1)日本のOTC医薬品普及率はG7最下位

 我が国のOTC医薬品の普及率は低い。2023年、全医薬品の10兆2千億円に占めるOTC医薬品は約7000億円で、金額ベースの普及率は6.9%、G7の7か国のなかでは最下位だ。シェア率のトップ3はカナダ17.1%、イギリス11.9%、イタリア10.5%であり、日本は最下位に甘んじている(図表3)

図表3

武藤正樹監修 「偽造医薬品横行の個人輸入問題と、スイッチOTC医薬品推進のための5つの提言」一般社団法人日本パブリックアフェアーズ協会 2023年10月2日

 中でも医療用医薬品から一般用医薬品に転用したスイッチOTCの品目が少ない。その品目は2024年、93成分である。このため国内で入手ができないスイッチOTC医薬品は海外からの個人輸入が行われている。個人輸入のOTC医薬品の用途としてはダイエット、美容、育毛、性機能の増強でおよそ6割を占めている。個人輸入する理由は「日本の薬局で買えないから」、「値段が安いから」、「インターネットで手軽に注文できるから」、「医療機関に行くのが面倒だから」がトップ5の理由だ。

 しかしスイッチ医薬品の個人輸入には落とし穴もある。それは偽造医薬品だ。たとえば性機能の増強で入手するバイアグラ、シアリス、レビトラなどのED医薬品の約4割が偽造医薬品であるという。その被害額は3835億円にも上る。こうした偽造薬を防ぐ手立ての一つが、これらの医薬品を国内でスイッチOTC化することである。つまりこれらの医薬品を医療用医薬品からスイッチOTC化し、薬局での販売を認めれば、正式な流通ルートを介することができ、偽造医薬品の問題を回避することができる。

(2)スイッチOTCの承認ラグ

 では改めてスイッチOTCを見ていこう。スイッチOTCとは医師から処方される医療用医薬品のうち、副作用が少なく安全性の高いものを医療用医薬品からOTC医薬品に転用(スイッチ)した医薬品のことである。このスイッチOTCが前述したように日本では先進諸国に比べて少ない。この理由について見ていこう。その大きな理由の一つがスイッチOTCの承認ラグいわゆる「スイッチラグ」問題だ。スイッチラグ問題とは、海外で承認されているOTCが日本では承認されていない、あるいは企業が要望しても承認に時間がかかる問題だ。

 2016年から21年にかけてスイッチOTC医薬品候補として厚労省に要望が提出された成分の中で、いまだ承認されていない医薬品が10成分もある。また海外におけるスイッチOTC化と日本のそれを比較すると、未承認の成分数が日本では圧倒的に多い。未承認状況をみるとなんとロラタジンのように29年も前に海外では承認されているのに、日本ではまだ承認されていない薬もある。おそるべき日本のスイッチラグの実態だ(図表4)。しかし、最近では先述のようにPPIについては2025年6月から8月に続々と市場に出てきている。

図表4

武藤正樹監修 「偽造医薬品横行の個人輸入問題と、スイッチOTC医薬品推進のための5つの提言」一般社団法人日本パブリックアフェアーズ協会 2023年10月2日

 このスイッチラグ問題では、最近では緊急避妊薬レボノルゲストレルが社会問題になった。レボノルゲストレルは世界30か国以上では、薬局で入手できる医薬品だ。しかし日本ではスイッチOTC化されていない。緊急避妊薬は、性交後72時間以内に内服する必要があり、迅速な対応が求められる。しかし休日夜間などで患者が産婦人科を受診することができなかったり、デートレイプを含む犯罪が関係していることから受診が遅れたりする。このため海外の30か国では緊急避妊薬をスイッチOTC化して、薬局でもアクセス可能としている。この緊急避妊薬のスイッチOTC化の議論は我が国ではなんと2017年から始まり、ようやく2025年10月にようやく実現した。なんとスイッチOTC化に9年もの年月を費やした、

(3)スイッチラグ解消へ向けて

 このスイッチラグに関しては、スイッチOTCの承認を行っている「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(評価検討会議)の審議の在り方が問題となった。とくにレボノルゲストレルの承認に見られるように、一旦は評価検討会議で承認が否決されれ、再度、審議に入ってからなんと7年もの審議時間がかかり、合計9年間を経てようやくレボノルゲストレルが市場に出たという経緯がある。あまりに長い審査期間だ。

 こうした審査期間について規制改革推進会議からの提言と厚労省の対応により、最近になってようやく改善が見られた。特に規制改革推進会議が主張していたスイッチOTC化への審査機関の短縮が受け入れられ、スイッチラグについては大きな前進がみられた。

 2023年12月に厚労省は以下のようにその審査機関の短縮を目標としてを設定した。

①2023年末時点で海外2か国以上でスイッチOTC化されている医薬品については原則として3年以内(2026年末)までに日本でもOTC化すること目標として設定。

②関係審議会等の審査・審議・意思決定プロセスの見直し等必要な措置を講ずることにより、国内でスイッチOTC化の要望があり申請されたものについては、原則として評価検討会議への要望書の提出時点から総期間1年以内に検討結果を取りまとめる。承認申請から承認の可否を判断するまでの総期間1年以内とする。

海外2か国以上でスイッチ化されていて国内では未承認の成分は、2023年末現在、以下の49成分である。この中には胃酸関連疾患用薬(オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール)、機能的医腸疾患用薬(ドンペリドン)、抗乾癬薬(カルシボトリオール)、緊急避妊薬(レボノルゲストレル)、鎮痛薬(スマトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン)、駆虫薬(ビランテル)、鼻用製剤(レボカバスチン、モメタゾン)、全身用抗ヒスタミン剤(レボセチリジン)などがある(図表5)。

図表5

厚労省 一般用医薬品(スイッチOTC)の選択肢拡大について 2024年3月28日

 この中で、すでに胃酸関連疾患薬のPPIやレボルノゲストレルが前述のように2025年には承認されが。これからも続々と承認が続くだろう。

このリストの中の鎮痛薬にゾルミトリプタンがある。著者は現在、横須賀市にある衣笠病院で外来を担当している。外来患者さんの中には片頭痛でゾルミトリプタンを希望して月曜日に来院する女性患者がいる。ゾルミトリプタンは片頭痛の薬だ。その患者さんによると片頭痛が土日の休みに悪化するという。土日は病院も薬局も閉まっているので、待ちかねて月曜外来にやってくる。こうした患者にとってゾルミトリプタンがスイッチOTC化されれば日曜日に開いている薬局で薬を購入できて福音だろう。

5 今後スイッチOTC化が考えられる成分

 海外でのスイッチOTC化の状況をみながら、国内でのスイッチOTC化を進めるのと同時に、国内で今後承認をすすめるべきOTC医薬品にはどのような成分があるかを考えてみよう。こうしたスイッチOTC化が可能と考えあれる医薬品の在り方について、2021年2月の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(評価検討会議)の中間とりまとめでは以下のように述べている。

スイッチOTC化する上で満たすべき基本的要件には以下がある。

①人体に対する作用が著しくないものであって、使用者の状態やその変化に応じて、医師による薬剤選択や用量調整等(多剤との併用も含む)を必要としない医薬品であること。

②以下のいずれかのような医薬品であること。

・使用する際に使用者自身が症状から判断することが可能であり、使用者自身が適正に購入し短期間使用できる医薬品であること。

・初発時は、使用者のみでは自己判断が難しい症状であるものの、一定期間内の診断情報、服薬指導等といった医師、薬剤師による一定の関与により、使用者が適正に購入し使用できる医薬品であること。

③原疾患以外の症状をマスクするリスク等を含め、医療機関への受診が遅れることによって生じるリスクについて、講じる対策により許容可能なリスクにできること。

④スイッチOTC化した際に懸念される公衆衛生上のリスク(医薬品の濫用等)について、講じる対策により許容可能なリスクにできること。

この基本要件に加えて、これからOTC医薬品として承認されている医薬品には、具体的に次のようなものがあるとしている。

基本的要件を示した疾患に該当するもので、

①自覚症状により自ら、服薬の開始・中止等の判断が可能な症状に対応する医薬品(アレルギー性鼻炎用点鼻薬、胃腸薬、水虫・たむし用薬、解熱鎮痛薬等)

②再発を繰り返す症状であって、初発時の自己判断は比較的難しい症状であるものの、再発時においては自ら、症状の把握、服薬開始・中止等の判断が可能なものに対する医薬品(過敏性腸症候群再発症状改善薬、膣カンジダ再発治療薬、口唇ヘルペス再発治療薬等)

③さらなる薬効群のスイッチOTC化を進めていくためには、OTC医薬品を取り巻く環境の整備がより強く求められている。これらの環境の整備に関する要件が整えば、新たにスイッチOTC化が考えられるものとして、評価検討会議において、次のような医薬品が議論された。医師の管理下での処方で長期間状態が安定しており、対処方法が確定していて自己による服薬管理が可能な医薬品等。なお、これに対して自覚症状がないものに使用する医薬品については、スイッチOTC化すべきではないとの意見もあった。

 前記について、スイッチOTC化の適切性は個別の成分ごとに異なるものであるが、どのような薬効群の医薬品がスイッチOTC化の対象となるのか、その具体的な状況については、各ステークホルダーの連携等のさらなる環境の整備の状況も踏まえつつ、個別の成分の議論等を通じて、今後も議論が進められる必要がある。

 以上のように、中間とりまとめではさらなる新分野におけるスイッチOTC化の議論を行う必要があると述べている。

6 OTC類似薬

 ここからは、最近話題のOTC類似薬について見ていこう。

(1)OTC類似薬の保険外し

 2025年3月、自民、公明と日本維新の会は社会保険料の改革に関する協議の初会合を開催した。今後、OTC類似薬(市販薬と成分や効能が類似する処方せん医薬品)の保険給付のあり方などを検討するという。日本維新の会の猪瀬直樹議員は2025年3月6日の参院予算員会で「OTC類似薬で1兆円は(医療費を)削れる」と打ち上げた。

 高額療養費制度で一波乱の後、今度はOTC類似薬でまた波乱が起きそうな状況だ。もちろん、日本医師会はOTC類似薬の保険除外には大反対だ。宮川政昭常任理事は「医療機関の受診控えによる健康被害が起きる。現役世代を含めた『経済的負担の増加』につながる政策として容認でない」と強調した。これを認めたら患者は診療所の前を素通りしてドラッグストアにみんな行ってしまう。今回はOTC類似薬を振り返って見よう。

(2)OTC類似薬とは

 OTC類似薬とは、市販薬と類似の効能効果を有する処方薬のことだ。たとえば処方薬のPL顆粒にはOTCのパイロンPL顆粒がある。同様に処方薬のロキソプロフェンナトリウム60㎎にはOTCのロキソニンSがある。処方薬のケトプロフェンパップ60㎎にはケトプロフェンパップがあるように市販薬と処方薬の二面性を持つ薬のことだ。これらのOTC類似薬の保険給付を止めて、OTCに一本化して医療費を節減するというのが日本維新の会の主張だ。

 こうしたOTC類似薬はなんと7000品目もある。この保険給付を停止すれば1兆円の医療費が浮くことになる。しかし本当に患者も納得して保険外しができるのだろうか?

 ちなみに著者の勤務する衣笠病院(横須賀市)では、昨年末よりPL顆粒の流通が悪くなったので、電子カルテのマスターからPL顆粒を削除した。すると早速、外来で患者さんからクレームがでた。「なぜPL顆粒を処方してくれないのだ?処方薬のPL顆粒が欲しい」と言う。「薬局でパイロンPL顆粒を買った方が、病院に来て処方してもらうとのと自己負担分はあまり変わらないですよ」と言っても聞かない。たしかにOTCは100%自己負担に対して、OTC類似薬は保険適応なので3割の自己負担で済む。ただPL顆粒の場合は薬局での値段が自己負担と同じくらいなのだ。しかし「処方薬のPLの方が絶対に効く」と言って患者は譲らない。こんな状況でOTC類似薬の保険給付が停止したら患者の反乱がおきるかもしれない。

(3)OTC類似薬の経緯

 そもそもこうした二面性をもつ医薬品がなぜできたのだろうか。それは1961年の薬事法に遡る。この年の薬事法改正で医薬品が「医療用医薬品」と「一般用医薬品」に大別された。この医療用医薬品のうち、販売規制上の分類として、「要指示医薬品」と「要指示医薬品以外」が分けられた。そして2002年の薬事法改正において、要指示医薬品が「処方せん医薬品」と改められた。その時に要指示医薬品以外すなわち処方せんを必要しない医療用医薬品のうち処方せん医薬品に似ている医薬品が今日のOTC類似薬となった。OTC類似薬は風邪薬・胃腸薬・ビタミン剤・うがい薬・湿布・漢方などでリスクは比較的低い医療用医薬品といえる。

 ここからは日本総研調査部の成瀬道紀氏の資料より見ていこう。処方せん医薬品、OTC類似薬、OTC医薬品の関係は以下のようだ。処方せん医薬品は1万3千品目、OTC類似薬は7千品目、OTC医薬品は1万3千品目もある(図表6)

図表6

成瀬道紀 OTC類似薬はOTC医薬品に区分を JRIレビュー2024Vol8,No.119

 処方せん医薬品か否かは投与経路、有効成分、効能で決まる。抗がん剤、抗菌剤、向精神薬、生活習慣病治療薬、さらに輸液剤は処方せん薬となっている。一方OTC医薬品かOTC類似薬かの区分については、企業申請に基づいて審査される。企業としても保険適応の処方せん医薬品で申請するのか、OTC医薬品で申請するのかは企業の経営戦略に基づいて決めている。

 また処方せん医薬品とOTC医薬品の間の出入りも多い。漢方は長らく一般用医薬品だったが、1978年に保険適応になった。一方、スイッチOTCのように、長らく処方せん医薬品であった医薬品が、同じ成分のままOTC化する場合もある。現在スイッチOTCは93成分で、これからもスイッチOTCはその数を増やしていくだろう。

 また最近ではダイレクトOTCと言って、発毛効果のある「ミノキシジル」、内臓脂肪減少薬「アライ」のように企業はあえて処方せん医薬品では申請せず、最初からOTC医薬品として申請する薬もある。

(4)OTC類似薬のマーケット

 OTC類似薬のマーケットはどれくらいだろうか?先の成瀬氏によれば2021年度でおよそ1兆円という。先のOTC類似薬の保険適応外しで1兆円の医療費節減という数字がこれだ。1兆円の内訳でトップ5は漢方・生薬、消化器官用薬、外皮用薬、アレルギー薬、血液・体液用薬でおよそ6割を占めている。

 同一成分ごとに処方せん医薬品の公定薬価とOTC医薬品のメーカー希望小売価格を比較すると、アセトアミノフェン300㎎では6円に対して88.9円、ファモチジン10㎎では10.1円に対して179.7円、フェキソフェナジン60㎎では10.1円に対して103.2円、ロキソプロフェンナトリウム50㎎湿布薬は12.3円に対して138.3円といずれもOTC医薬品の方が高い。

 しかしOTC医薬品の小売価格とOTC類似薬を処方したときの自己負担分を比べると話は変わる。東京大学大学院の五十嵐中氏によれば、抗アレルギー薬の場合は処方薬の場合とOTC医薬品の小売価格を比べると、2000円と4000円で、圧倒的に医療機関で3割負担の方が安い。ところが、風邪薬、便秘薬、胃炎薬、頭痛薬では3割負担の方がわずかに安いのだ。

 また五十嵐氏によれば、対象をかぜ症候群、頭痛、腰痛・肩痛、便秘、胸やけ・胃痛・もたれむかつき、鼻炎などに限定し、現状すでにOTC使用可能薬と、高血圧・偏頭痛など将来的なOTC導入可能性も含めて、OTCへの置き換えによる医療費削減効果を試算したところ、その額は3210億円であった。

さて財政制度審議会もOTC類似薬の保険給付について議論している。財政審の基本スタンスは重篤な疾病リスクに対しては保険給付で、一方、軽症リスクについてはセルフメディケーションとしている。海外を見れば、イギリスでは軽症の患者に対する処方せん医薬品の交付を減らし、OTC医薬品の購入を促すためのガイダンスを発行している。またフランスのように薬剤の種類に応じた患者負担の割合を変えている国もある。たとえば抗がん剤には負担ゼロであるが、軽度な疾患については85%の自己負担を課している国もある。

(5)OTC類似薬の保険給付の見直し

 我が国でもこれまでOTC類似薬の保険給付の見直しを行ってきている。例えば2012年には単なる栄養補給目的のビタミン剤の投与を保険給付から外した。2014年にはイソジンガーグルのようなうがい薬での単体の処方を外した。2016年には湿布薬を1処方で70枚に制限した。最近ではこの処方上限が63枚に減らされた。2018年にはヒルドイドのような皮膚保湿剤の処方も外された。しかしアトピー性皮膚炎などの治療目的には処方せん医薬品として処方できる。

 また社会保障審議会医療保険部会では2023年9月にOTC類似薬の保険給付の在り方の見通しとして、以下のように述べている。OTC類似薬は保険給付からの除外や、償還率の変更、定額負担の導入など保険給付の在り方を見直すとしている(図表7)。

図表7

 さて今後、OTC類似薬についてはどのように検討を進めていけばよいのだろうか?

 著者としては以下を提案したい。

 まず対象薬を限定して保険給付の見直しを始める。風邪薬、鼻炎、胃薬、湿布、鎮痛剤、うがい薬などの領域からスタートし生活習慣病領域へ拡張してはどうか?

 そして後発品のある長期収載品に対して選定療養を行ったように、OTC医薬品のあるOTC類似薬にも選定療養を課してはどうだろうか?たとえばPL顆粒について、公定薬価と市販薬の平均小売価格の差額の4分の1のから選定療養をスタートする。しかし医師が治療上の必要があれば選定療養を課すことはしない。OTC医薬品とOTC類似品とはちょうどジェネリック医薬品と長期収載品との関係に似ている。このため著者が代表理事を務めている日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会ではOTC医薬品分科会を一昨年より設置して、こうした議論を行っている。OTC医薬品を第2のジェネリック医薬品と見定めて、その普及を進めていくつもりだ。

参考文献

武藤正樹監修 「偽造医薬品横行の個人輸入問題と、スイッチOTC医薬品推進のための5つの提言」一般社団法人日本パブリックアフェア協会

厚労省 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議の中間とりまとめ 2021年2月2日

厚労省 一般用医薬品(スイッチOTC)の選択肢拡大について 2024年3月28日

厚労省 医政局通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進」2010年4月30日

成瀬道紀 OTC類似薬はOTC医薬品に区分を JRIレビュー2024Vol8,No.119

厚労省 社会保障審議会医療保険部会 2023年9月29日