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病院経営危機と地域PFM


 

図表1 日本経営資料 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年度(令和5年度)平均」および厚生労働省「診療報酬改定について」より

 インフレで病院が深刻な経営危機に陥っている。人件費や材料費の高騰で病院は軒並み大赤字だ。今年は診療報酬改定年ではないので、改定率はゼロ、このまま行けば来年の今頃は大惨事になりかねない。一方、患者数も減っている。コロナ禍が過ぎても回復しない。実は生産年齢人口が減り始めているので、若者の入院が減っている。こちらが患者数減の本当の原因だ。こうした中、病床利用率が減った病院は平均在院日数を延長して何とか耐えている。

以下、インフレによる病院経営危機、病床の機能分化、在宅医療、地域における患者の流れをマネジメントする地域ペイシェントフローマネジメント(PFM)の必要性について見ていこう。

1 インフレと病院経営危機

 2025年1月22日に、5病院団体が緊急的な財政支援措置の要望を福岡資麿厚生労働大臣に提出した。5病院団体は日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会・日本慢性期医療協会で、以下のような要望と説明を厚労大臣に行った。

 多くの病院がいま深刻な経営危機に陥っている、経営危機の理由は物価や賃金の上昇に診療報酬の上昇が追い付いていないからだ。このため「直近の病院の経営状況を考慮し、地域医療を守るため、緊急的な財政支援措置を講じること」、「診療報酬で物価上昇に対応できる仕組み」の導入、「社会保障関係費の伸びを高齢化の伸びの範囲に抑制する」財政フレームの見直しなどを厚労省に要望した。

 冒頭の図表1は2020年を基準とした消費者物価指数と診療報酬の本体部分の推移をみたものだ。2021年から消費者物価指数が上昇をする一方、診療報酬の本体部分の改定率の伸びが追い付いていない。

 2024年の診療報酬改定は本体部分がプラス0.88%の伸びに対して、インフレ率が2.5%にも達したため、結局マイナス1.62%ととなった。またかろうじて本体部分0.88%を達成したのも、薬価マイナス1%引き下げたからだ。しかし薬価マイナス改定も限界だ。すでにあまりに低い薬価の影響で、新たな新薬の上市が滞ったり、上市そのものがされないといういわゆる「ドラッグロス/ラグ」問題が深刻化している。また後発品の供給も不安定化している。これも後発品の低薬価政策が原因だ。

 このようにインフレが進行するなか、急性期病院では軒並み5~6億の赤字が続出している。大学病院や自治体病院などでその傾向が強い。そしてどこでも病床稼働率が落ちている。病床稼働率低下が病院の赤字の足を引っ張る。このため100%の稼働率でようやく黒字と言うあり得ない事態になっている。これに対して、2024年度の補正予算の中で医療機関経営関連の補助金も組まれてはいる。たとえば病床利用率が低い病院は減ベッドすれば1床あたり400万円という補助金などがその例だ。しかしこの赤字のなか、1医療機関あたりにすればこの程度の補助金では赤字には焼け石に水だ。

2 病院経営とインフレ対策

 デフレ時代が長らく続いていたので、医療機関はインフレへの対応は今までにない経験だ。このため病院にはなすすべがない。理由は民間の企業であればインフレになれば仕入れの物価上昇分を小売り価格に転嫁して、消費者に負担を求めることができる。しかし医療サービスでは診療報酬は公定価格であるので、物価、人件費の高騰を診療報酬に転嫁する仕組みがない。またこれまで医療介護などの社会保障関係費の伸びは高齢化による伸びの範囲に抑制するという財務省の財政規律もジャマをしている。財務省の前でデモが続く理由の一つがこうしたあくまでも財政規律に固執する財務省の体質への反発だ。

 こうした制約を取り払うことはできないのか?たとえば消費税率アップのときには医療サービスは非課税取引なので、消費税を患者に転嫁することができなかった。このため医薬品や材料費以外の医療サービスについては消費税分を入院や外来の基本料に上乗せすることで補填した。また医療従事者の給与アップ(処遇改善)については、たとえば看護師1人あたりの患者数に応じて入院基本料に上乗せすることで対応してきた。

 また今回のようなインフレに対して診療報酬を調整する仕組みはこれまで全くなかったわけではない。1970年代に、石油危機後の狂乱物価のもとで大幅な引き上げが行われた。とくに1974年には2度にわたる改定で35.0%も引き上げられた。1976年には9.0%、78年には11.6%の引き上げが行われた。今からは考えらない超大型のプラス改定率だ。それにともなって、国民医療費も大幅に増大した。

 しかし1980年代に入って、国の予算編成で社会保障関係費の抑制策が講じられるようになり、診療報酬についても引き上げ幅の抑制策が進められた。それ以来、長らくデフレ時代が続いていたので、かつてインフレ調整を行ったことすら忘れられている。

 だが今回のインフレはまだ続きそうだ。このためインフレ率を考慮した診療報酬の仕組みが再度必要だ。また上述のような社会保障関係費の伸びを高齢化の伸びの範囲に抑制するという財政規律の見直しが必要だ。こうした議論を6月の骨太の方針へ向けた議論の中で行ってもらいたいものだ。

3 急性期病院の稼働率低下の理由

 さてコロナ渦が終息しても、減った入院患者や外来患者が戻らない。新規入院患者が減って病床稼働率が低下している。これもコロナのせいなのか?そんなことはない。急性期病床の病床稼働率の低下は実はコロナ以前から始まっていた。

 図表2の病床利用率の推移を見てみよう。一般病床の病床利用率は1996年の83%から一貫して減り続けいて、2022年には69%と70%を割り込んでいる。このため病院の医業利益率は一貫して下がり続け、2020年以降、コロナの補助金の補填を含んでもマイナスに振れている。

 図表2  厚労省症 新たな地域医療構想検討会 (2024年8月26日)

 この病床稼働率の低下の理由は、まず第一には平均在院日数短縮の効果だ。診療報酬等を通じて平均在院日数短縮の効果が病床稼働率の低下を招いている。これに加えて若者が減ったからだ。3年に一度、厚労省が行っている患者調査の2023年版を見て改めて驚いた(図表3)。

 15歳から64歳の生産年齢の入院が1996年ごろから激減しているのだ。一方、65歳以上の高齢者人口の入院が増えている。頭では理解していたつもりだが、患者調査のグラフは衝撃的だ。1984年に80万人近くもいた若者の入院患者が2023年には3分の1の26万人にも減っている。40年間で3分の1の大激減だ。

 1980年代、著者は横浜市にある旧国立横浜病院の外科病棟に勤務していた。当時の外科の病棟は良性胃潰瘍で広範囲胃切除予定の患者や、乳がん、胆石症の手術待ちの若い患者であふれていた。また救急車で運ばれてくるのはバイク事故の若者が多く、病棟は若者だらけだった。それが今や、誤嚥性肺炎や心不全の高齢者で埋めつくされている。この状況は旧7対1の急性期病床でも同様だ。いまや旧7対1病床もその7割が75歳以上の後期高齢者で埋め尽くされている。

図表3 2023年患者調査の概況 suikeikanjya.pdf

 つまり若者の減少とともに、急性期医療ニーズが減ったのだ。これからもニーズは減る。2010年の生産年齢人口の医療ニーズを1としたときに、2040年の医療ニーズは0.7、2060年は0.6までさがる。一方、65歳以上の高齢者の医療ニーズは増えて、2040年には1.4となり、それ以降、高齢者の人口も減るので医療ニーズは下がり2060年には1.2となる。

 また手術件数もこれからは減っていく。2020年から2040年にかけて、すべての診療領域の手術件数の減少が、半数以上の二次医療圏において起きる。さらに救急搬送件数も高齢者では増えているが、増えている救急患者は軽症か中等症の救急ばかりである。

 また生産年齢人口の救急搬送件数は激減している。さらに緊急手術の件数も地域によっては減っている。時間外の緊急手術の発生日数が年間7日以下と言う医療圏が39医療圏もある。このように急性期医療ニーズや緊急手術ニーズが減っている。

 こうしたことから特に地方の人口減の甚だしい二次医療圏では、急性期医療の施設の機能集約が必要だ。急性期医療や救急医療を施設集約することで、医療機関は経営的にも安定する。同時に、機能集約をすると医療の質が上がることも知られている。たとえば食道がんの手術を年間5件しか行っていない医療機関と年間30症例以上行っている病院を比べてみよう。症例数の多い病院の30日以内の手術死亡率は、症例の少ない病院よりも低い。つまり手術症例が多い病院のほうが医療の質は高いのだ。減りゆく急性期医療ニーズへの対応は。地域における急性期医療の集約に他ならない。

4 稼働率の低下と平均在院日数の延長

 このように稼働率が低下しインフレで経営が悪化してくると、平均在院日数を伸ばす動きが病院には出てくる。これは当然の帰結だ。入院患者が減れば病床を開けておくわけいかないので、平均在院日数の延長で病院は対処しようとする。

 現行の診療報酬体系では、平均在院日数を短縮すれば診療単価や重症度、医療・看護必要度等が上がる。一方、新入院患者数が減るなか在院日数だけ短縮すると、病床稼働率や収入は減少する。たとえばある急性期病院では在院日数を1日短縮すると、診療単価が上がる一方、病床稼働率が6%減少し、収入も年間で1.8億円減少するということが起きる。結局、収入を確保するためには、在院日数の延長をせざるを得ない。

 これが全国の病院で起きている。とくに急性期一般入院料2,3や200床以下の地域一般入院料3においては2021年から2022年にかけて平均在院日数が約1~2日増加していた。

 ちなみに地域一般入院料は200床以下で看護単位が13対1,15対1の病床だ。これは単純にこれらの病院で新規入院が減っているからだ。

 図表4 

 このように患者数を減らしている病院は急性期一般入院料2,3に見られる。こうした病院には、いわゆる「なんちゃって急性期」の病院が多い。すでに急性期医療ニーズが激減しているのに、いまだ急性期を標ぼうして急性期医療にこだわり、地域包括ケア病棟に転換していない病院だ。本格的な急性期病院でも患者を集めるのが大変なのに、こうした病院では経営方針の転換が遅れていて現状に追いついていない。これにインフレの津波が襲っている。このため今回のインフレはこうした病院の経営をあぶりだし、病床の機能分化を促進するきっかけになるかもしれない。

5 ニーズが高まる包括期機能

 急性期ニーズが激減する一方、ニーズが高まるのは包括期機能と在宅機能ニーズだ。包括期機能とは地域医療構想でかつては「回復期機能」と呼ばれていた機能のことだ。この機能が2026年から始まる新たな地域医療構想では「包括期機能」と呼称が変わる。その定義は、高齢者救急受け入れ、在宅復帰のための高齢者リハを併せ持つという意味で「包括期機能」だ。また病院機能としては、「高齢者救急・地域急性期機能」とも言う。この機能は「高齢者を始めとした救急搬送を受け入れるとともに、必要に応じて専門病院や施設等と協力・連携しながら、入院早期からのリハビリ・退院調整等を行い、早期の退院につなげ、退院後のリハビリ等の提供を確保する病院機能」としている。具体的には地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟、そして2024年診療報酬改定で新設された「地域包括医療病棟」が相当する。

 この包括期機能(旧回復期機能)の病床は旧地域医療構想では、2025年の必要量は37.5万床としていたが、結局2025年見込みでは21.1万床にしか増えておらず、まだ16.4万床も足りない。このため2026年からスタートする新たな地域医療構想でも、引き続き包括機能病床の増加が求められている。

図表5 厚労省 地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ資料2024年7月10日

 まずは前述の「なんちゃって急性期病床」から、包括機能病床である「高齢者救急・地域急性期機能」病院への転換を行うことが肝要だ。

 著者が勤務する日本医療伝道会衣笠病院グループもまさにこの転換を行った病院だ。衣笠病院は人口39万人の横須賀市に立地し、病床数は194床の200床未満のケアミックス型病院だ。病床区分は急性期一般入院料4病床(50床)、地域包括ケア病棟(91床)、回復期リハビリ病棟(33床)、緩和ケア病棟(20床)である。2014年、2015年にかけて急性期一般病床から地域包括ケア病棟、回復期リハビリ病棟への転換を行っている。病床数は最盛期は290床もあったが、徐々に減床して、2023年には200床以下となった。

 また併設施設に老健、特養、訪問看護ステーション、通所介護事業所などを持ち、2018年からは訪問診療クリニックも併設した。衣笠病院ではコロナ後一時的に患者数が減ったが、このところ患者数増加が止まらない。今年の1月の実績を見ると、高齢者救急の依頼件数が月間74件で、その応需率が69%、入院率57%に達していて高齢者救急を受け入れる地域の病院としての役割を果たしている。また病床利用率は87%に達し、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟では95%に達している。さらに平均在院日数は23日だ。そして75歳以上の後期高齢者割合は70%、その在宅復帰率は80%台に達している(図表6)。まさに先述の「高齢者救急・地域急性期機能」にぴったりの病院だ。

  図表6  著者作成

6 激増する在宅ニーズ

 包括期機能が激増すると同時に増えているのが在宅医療ニーズだ。これも患者調査を見ていこう。患者調査によると、在宅医療を受けた推計外来患者数は1994年から2023年の30年間でなんと3倍に増えている(図表7)。

図表7 2023年患者調査

 著者の勤務する衣笠病院でも在宅需要が増えている。外来で在宅訪問診療を希望する高齢者が後を絶たない。先日も外来をしていたら、90歳台の高齢のご主人が85歳の奥さんの車いすを押しながら診察室にこられた。ご主人によると「自宅前の5段の階段を下りて福祉タクシーまで妻を支えながら外来に来るのが大変だ」という。「そろそろ在宅医療に切り替えますか?」というと、待ってましたとばかり「お願いします!」という。

 こんな具体で外来通院の困難な患者が増えている。著者も週1回だが、衣笠病院附属剤在宅クリニックで訪問診療のお手伝いをしている。訪問診療を始めて分かったことは、横須賀は坂や階段が多いことだ。40段の階段を上って患者さんのお宅を訪問することなどざらだ。「よくぞこの階段を下りて病院まで通院していたとは!」と感心することがたびたびだ。

 それと在宅診療で実感したのは、施設在宅が増えたことだ。有料老人ホームやグループホームなどの施設への訪問診療が3割くらいを占めている。実際にこうした介護施設が介護保険がスタートした2000年以降、150万床まで増えた。病院病床が精神病床も含めると150万床だから、病院病床と同じくらい増えたのだ。

 実は介護保険以前は現在の介護施設の機能を医療機関が担っていた。いわゆる「社会的入院」だ。著者も1990年代の一時期、新潟県の田舎の国立療養所に勤務したことがある。この時の新潟の国立療養所には越冬患者といって冬場になると高齢患者さんが春まですごす病棟があった。避寒のためのショートステイ入院だ。また中には身寄りがないお年寄りが終の棲家として利用している方もいた。そんな中に和歌の上手な患者さんがいて、病室で和歌の教室を開いていた。のどかな昭和の風景だった。

 こうした風景が2000年の介護保険のスタートで一変する。医療施設と介護施設の分離が一気に進んだ。これが医療機関における新規患者が減った理由でもある。また外来患者が減ったのは外来での長期処方が主な原因だが、それに加えて介護施設でのデイサービスが増えたことが挙げられる。ひと昔前は病院の外来が高齢者のサロンになっていると言われていたが、それは昔の話、今や外来のお年寄りサロンはデイサービスに移動していなくなってしまった。

 さて話が横道にそれた。新たな地域医療構想ではこうした在宅医療機能のことを「在宅医療等連携機能」と呼んでいる。具体的には地域での在宅医療の実施、他の医療機関や介護施設、訪問看護、訪問介護等と連携した24時間の対応や入院対応を行う」としている。

 こうした在宅医療等連携機能を担う医療機関の代表には在宅療養支援診療所(在支診)と在宅療養支援病院(在支病)がある。

 在宅療養支援病院とは患者の求めに応じ24時間往診(医師)と24時間訪問看護(看護師)の提供が可能な体制を確保することができ、緊急時にご家庭に赴き、また直ちに入院できるなど必要に応じた医療・看護を提供できる病院のことだ。

衣笠病院では併設施設に在宅クリニックや訪問看護ステーションを有している。今年1月の訪問診療実績は衣笠病院附属在宅クリニックで訪問診療延べ286件、往診 40件、衣笠病院訪問看護ステーションでは訪問看護延べ561件、訪問リハ延べ103件である。こうした実績を活かして今、衣笠病院は機能強化型在宅療養支援病院の取得を目指している。

7 地域ペーシェント・フロー・マネジメント(PFM)

 ペーシェント・フロー・マネジメント(PFM)とは、「予定入院患者の情報を入院前に把握し、問題解決に早期に着手すると同時に、病床の管理を合理的に行うことなどを目的とする病院マネジメント、あるいはその組織」を意味する。このPFMの組織は入退院センター、患者支援センターとも呼ばれている。

 このPFMの考え方は日本では1999年、神奈川県伊勢原市にある東海大学医学部付属病院から始まった。もともと東海大学付属病院の消化器外科の医師で病院管理学助教授だった田中豊氏が1997年よりPFMを始めた。田中豊氏らは、その当時同病院で入院未収金対策や社会的入院患者対策を検討していた。そして田中豊氏らはこれらの患者の社会的・身体的・精神的リスクは入院前に把握できることに気づいた。そして、これらの問題に対して入院前から対策を講じる組織を設けることとし、この組織をPFMと名付けた。その後、PFMの運営ノウハウ等を蓄積し、2006年に東海大学医学部付属病院が建て替えられて新病院となった時に、PFMを全病院的に展開することとした。

 2006年に東海大学医学部付属病院が設定したPFMの機能は、①外来初診患者の受診科振り分け、②PFMの看護師のサポートによる医療連携の充実、③予定入院患者入院申込み時のPFM看護師による患者情報収集と各種リスクのアセスメント、必要に応じた医療ソーシャルワーカーなどの介入、④病床管理(ベッドコントロール)が主な役割であった。

 このPFMを導入したことで、東海大学医学部附属病院はそれまでの赤字を返上して黒字に転じる。黒字化した理由は平均在院日数が短縮化したと同時に、新入院患者が増え病床利用率が向上したからだ。このような効果が認められため、PFMは全国に展開し、また診療報酬でも入退院支援加算や入院時支援加算の導入へとつながる。

 このペイシェント・フローマ・ネジメント(PFM)の概念はこれまで院内だけに留まっていた。しかしこれからは地域全体に拡張して実践することが必要だ。地域全体を一つの病院ととらえて高度急性期・急性期から包括期、慢性期・在宅へと患者の流れを切れ目なくマネジメントしていくためには地域PFMの考え方重要だ。

 これには地域の中にPFMのため医療機関や介護施設などの関係者が参加する協議の場が必要だ。具体的には2024年診療報酬改定で導入された下り搬送の仕組みである「救急患者連携搬送料」にはこうした関係者が集まる協議の場が必須だ。つまり地域の中に「連携室」を設置するのだ。こうした地域PFMの仕組みが地域にあると、誤嚥性肺炎や心不全のような患者数が増加中の患者について、地域で関係者が集まり、疾患別に患者の流れをコントロールする地域連携パスも円滑に運用できる。ぜひ地域の連携の場で地域PFMの仕組みを考えて欲しい。

こうした地域PFMの仕組みづくりがポスト2025年の地域医療には不可欠となるだろう。

参考文献

 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年度(令和5年度)平均」、厚労省「診療報酬改定について」

 厚労省 新たな地域医療構想検討会 (2024年8月26日)

 厚労省 2023年患者調査概況

 厚労省 入院外来分科会 2024年6月8日

 厚労省 地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ資料2024年7月10日

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