
図表1 厚労省 入院外来分科会 2025年6月26日
中医協の下部組織である入院外来分科会では、2026年診療報酬改定へ向けて議論がスタートしている。同分科会の2025年6月の議論の中から、看護職員の現状とそのタスクシェア・シフトについて見ていこう。
1 看護職員の現状
看護職員の現状をまず見ていこう。看護職員は2020年現在173.4万人、内訳は看護師132万人、准看護師30.5万人、保健師6.7万人、助産師は4.2万人だ。全体数173.4万人は30年まえの1990年には83.4万人だった。その間30年で2倍増だ(図表1)。
看護師の就労先は病院が101.2万人、診療所が34.8万人だ。そして最近の就労先で増加しているのは訪問看護ステーションが6.8万人、介護保険施設が17.3万人と、どちらも20年間で3倍増だ。一方、病院、診療所の看護師の伸びは横ばいだ。
また看護師の年齢階層別の数の伸びをみると40歳以上の看護師が現在は101.8万人と2008年の65.3万人から36万人も増えている。そして年齢階級別の就労場所では、年齢が高くなるほど介護保険施設での就労が増えている。
都道府県別の看護師の人口1000人当たりの就労数を見ると、首都圏など大都市圏の就労数が低い傾向がある。大都市部での看護師不足が顕著だ。全国の看護師の有効求人倍率は2.12で全産業の1.14のおよそ2倍に上る。また離職率は11.3%で一般産業全体の12・1%よりは低い。
看護師養成学校の全卒業生数は2021年の59万人をピークに徐々に減少している。一方、大学卒業者は23万人と増えている。今後、少子化の影響で新卒の看護師数は年々減って行く。
以上をまとめると看護師の需給状況は地域別、就労領域別に差が大きい。今後2040年へ向けて少子化による生産年齢人口が減少していく中、看護師確保が急務だ。その一つの方策は社会人経験者の看護教育訓練の受講支援が必要だ。また地域包括ケアが推進される中、訪問看護ステーション等での需要増加に対応するための実習支援も必要だ。
また病院勤務の看護師等の処遇改善も必要だ。夜勤業務の負担軽減、ICT化、チーム医療、タスクシェア/シフトの促進だ。そして特定行為研修の受講支援も必要だ。さらに人生のライフステージを通じて継続して就労ができるような看護キャリア支援も必要だ。
2 看護職員の負担軽減とタスクシフト/シェア
(1)看護職員の業務負担軽減効果
入院外来分科会の調査で、病棟における看護職員の業務負担軽減の効果を尋ねたところ、そのトップ10は以下であった。「入退院支援部門スタッフ(MSW等)との業務分担」、「看護補助者との業務分担」、「病棟クラークの配置」、「早出や遅出の看護補助者との業務分担」、「PT,OT,STとの業務分担」、「欠勤、患者急変、不穏患者対応時の他部署からの応援」、「看護補助者の増員」、「電子カルテの活用」、「薬剤師による内服薬管理や服薬指導の実施」、「夜勤帯の看護補助者の配置」(図表2)。
図表2

厚労省 入院外来分科会 2025年6月26日
(2)看護補助者との業務分担
ここでは看護補助者との業務分担について見ていこう。まず看護師が看護補助者とどのような業務分担を行っているかを見ていこう。看護職員と看護助手の業務分担のトップ10は以下である。「寝具やリネンの交換、ベッド作成」、「物品搬送」、「配下膳」、「環境整備」、「医療材料の物品補充、準備、点検ん」、「患者の病棟外への送迎(検査、リハ等)」、清潔、整容(清拭、陰部洗浄、口腔の清拭等、入浴介助等)」、「移乗(車いす、ベッド党)」、「おむつ交換等」、「食事介助等」。
しかし病院に勤務する看護業務補助者の従事者数は2011年の19.6万人をピークに年々減少して、2023年には16万人となっている。看護補助者が減る原因の一つが、看護補助者の定着率の低さだ。2016年の調査によると、看護補助者の退職率は12.2%、1年以内の離職率は43.4%にも達していた。理由は人間関係や看護補助者の業務のリアリテイショックが原因であるが、その賃金の低さも大きな要因だろう。こうして看護補助者が少なくなることで、その不足分を看護師が業務カバーをするため、看護師の時間外勤務が増加する。
また看護補助者の業務標準化や教育体制が確立していないことが、看護補助者のモチベーション低下につながっている。こうしたことから「看護補助者ラダー」といって、その能力基準をレベルゼロからレベルⅢまでの4段階に分けてレベルに応じた役割が遂行できる教育体制を整備しているところもある。こうした取り組みが看護補助者の離職率の低下に貢献するとも言われている。このため看護補助者の業務標準化マニュアルの整備や教育研修の充実を行う施設が8割を超えていて、ラダー整備についても3割において行われているという。
以上のポイントは以下だ。看護職員の業務負担軽減効果に果たす看護補助者の役割は大きい。しかしその数は年々減少傾向にある。その定着率を向上させるためには、看護補助者の業務標準化と教育研修の充実にあるのだろう。
(3)ICT,AI,IoT等の活用
前述の看護職員業務負担軽減のトップ10には入らなかったが、看護業務負担軽減に対するICT、AI、IoT等の活用の効果も大きい。たとえば神奈川県川崎市にある聖マリアンナ医科大学病院の「ナースハッピープロジェクト」のように音声入力による記録は、記録時間の削減に貢献する。その削減により看護の1人当たりの月平均時間外労働時間を約2分の1に軽減した例もある。このプロジェクトではスマートフォン向け音声入力サービス「AmiVoiceMLx」が活用された(図表3)。
図表3

厚労省 入院外来分科会 2025年6月26日
また群馬県藤岡市にある医療法人育成会篠塚病院では、バイタルサインの自動入力の仕組みが活用されている。この入力作業の効率化も看護業務改善に効果的だ。このシステムにより日勤看護師の時間外業務時間が12時間短縮したという。
こうした看護記録の負担軽減の取り組み、ベッドサイドで記録できるタブレットやモバイルシステム、音声入力やバイタルデータの自動入力などを実施している病棟は63%にも上ると言う。また今後はAIを活用した看護アセスメント支援システムの導入に期待がかかっている。
3 看護特定行為
2017年よりスタートした特定行為に係る看護師の研修制度が整備されつつある。特定行為研修のための指定研修機関数は2025年現在、462施設、特定行為研修修了者数は11,840人まで増加している。
特定行為研修では、看護師が手順書により特定行為を行う場合に必要とされる実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能の向上が求められる。特定行為には38行為21区分がある。
この特定行為研修修了者の就業場所を見ると、その9割が病院に就業している。また都道府県別にみると東京、大阪、神奈川、愛知などの都市部に多い。また特定行為区分別にその修了生数をみると、とのトップ5は「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」、「人工呼吸療法に係る行為」、「動脈血液ガス分析」、「創傷管理関連」、「気道確保に係る行為」である(図表4)。
特定行為研修修了者の配置数は病床規模の大きい病院は度配置数が多い。また部署別に見ると、ICU,救命救急病棟、HCU,NICU、障害者病棟の順に多いことが判る。
図表4

厚労省 入院外来分科会 2025年6月26日
特定行為以外で医師から看護師へのタスクシフト/シェアの業務も多い。業務で多いのは以下だ。「注射、採決、静脈路の確保」が74%と最も多く、次いで「事前に取り決めたプロトコールに基づく薬剤の投与、採決・検査の実施」が43%、「カテーテルの留置、抜去等の各種行為」が34%、「特定行為の実施」が18%であった。
以上、看護師業務の現状とタスクシフト/シェアを見てきた。2026年診療報酬改定では、こうした現状についてどのように評価するか?またこの現状を踏まえてさらに検討すべき事項な何かについての議論が中医協で行われるだろう。看護師の業務とタスクシフト/シェアについて注目していこう。
参考文献
厚労省 入院外来分科会 2025年6月26日
