
図表1 厚労省 新たな地域医療構想等に関する検討会 2024年10月17日(筆者加筆)
2026年診療報酬改定へ向け、中医協の下部組織である入院・外来医療等の調査・評価分科会(以下、入院外来分科会)で2025年7月3日、急性期入院医療の議論が行われた。今回は急性期医療の指標、救急医療、重症度、医療・看護必要度について見ていこう。
1 新たな地域医療構想と急性期医療
2025年2月14日、新たな地域医療構想を含む医療法改正案が閣議決定された。現在の地域医療構想の目標年は今年2025年である。このことから2040年へ向けた新たな地域医療構想が医療法改正案に盛り込まれている。この新たな地域医療構想では、旧地域医療構想で定められた高度急性期、急性期、回復期、慢性期と言う病床機能に加えて、地域ごとに5つの医療機関機能が加えられた。
5つの医療機関機能は以下である。①高齢者救急・地域急性期機能 ②在宅医療等連携機能、③急性期拠点機能、④専門等機能。そして大学病院本院などの⑤医育及び広域診療機能を担う広域な観点の医療機関機能とした(図表1)。
入院医療分科会では、2026年の診療報酬改定へ向けて、この5つの機能の中で、とくに①の高齢者救急・地域急性期機能と、③の急性期拠点機能に着目して議論が始まっている。
まず①高齢者救急・地域急性期機能とは、高齢者の救急搬送を受けるだけではなく、入院早期からリハビリ等の離床のための介入を行う。必要に応じて専門病院等と協力・連携するとともに、高齢者が抱える背景事情も踏まえて退院調整を行う。これにより患者を早期退院につなげ、他施設とも連携しながら通所や訪問でのリハビリを継続する機能である。
一方③の急性期拠点機能は持続可能な医療従事者の働き方や医療の質も確保するために、搬送体制の強化等に取り組み、一定の症例数を集約して対応する地域の拠点として対応する機能である。
両者とも急性期機能ではあるが、①は地域の中ではより一般的な急性期機能であり、③は拠点的な急性期機能といえる。これまでの診療報酬の中では、急性期充実加算や総合入院体制加算ではこの拠点的な急性期機能を評価してきていた。今回は①の高齢者救急・地域急性期機能の「一般的な急性期機能」をどのように評価するかが論点となる。
これまで急性期機能を評価する指標としては、「救急搬送件数」、「手術・全麻件数」、「DPC指標」等が用いられてきた。たとえば総合入院体制加算や急性期充実体制加算では、「全身麻酔手術件数年2000件以上」、「救急自動車等による搬送件数年2000件以上」等が用いられている。
今回、入院外来分科会ではこうした指標を用いて拠点的な急性期機能以外の一般的な急性期機能をどのような指標を用いて評価することが妥当であるのかの議論が行われた。
2 一般的な急性期医療の評価指標
一般的な急性期医療の評価指標の候補指標には救急搬送件数、全身麻酔手術件数、DPCカバー率などが挙げれる。以下、見ていこう。
(1)救急車搬送件数
前述したように拠点的な急性期機能では「救急車搬送件数は年2000件」などが用いられている。全国6051病院を対象にした中医協の調査によると、救急車搬送件数が2000件以上は病院の17%、4000件以上は7%しかなかった。また救急車搬送件数は二次医療圏の人口とほぼ正の相関がある。すなわち二次医療圏の人口が多いところ、すなわち都市部ほど救急車搬送件数が増えるのだ。このため一般的な急性期機能をみるときには地域人口も一緒に検討することが必要だ。たとえば人口が20万人未満の二次医療圏で救急車搬送件数をみると、500件以上で22.7%を占めている。また人口の少ない地域での救急搬送件数は数少ない医療機関に集中し、その医療機関の救急搬送件数の地域シェア率が高くなる傾向が見られた。このため一般的な急性期医療の評価を行うときには、救急車搬送件数ばかりでなく救急車搬送台数の地域シェア率も同時にみる必要があることが分かる(図表2)。
図表2

厚労省 入院・外来医療等の調査・評価分科会 2025年7月3日
また深夜の救急車受け入れ率も急性期評価の指標になるかもしれない。急性期一般入院料1(旧7対1)の医療機関でも深夜に救急車を受け入れる医療機関の割合は10~30%が多く、それ以上受け入れる病院もあれば、全く深夜に受け入れていない病院もある。こうした深夜の救急車受け入れ台数も使えるかもしれない。
(2)手術件数・全麻件数
拠点的な急性期病院、たとえば総合入院体制加算や急性期充実体制加算では全身麻酔手術件数年2000件以上が要件となっている。
中医協調査6051病院でみると、全身麻酔手術件数年500件以上の病院は22.7%であった。急性期充実体制加算病院で救急搬送件数500件以上の病院と500件以下の病院を比べると、500件以下の病院では全身麻酔手術は実施しているものの加算対象となっている手術(悪性腫瘍手術,腹腔鏡下・胸腔鏡下手術、心臓カテーテル法手術、消化管内視鏡手術)の数は少ない傾向がみられた。このため一般の急性期機能の評価では、手術件数と同時に加算対象となっている手術件数についても検討されるかもしれない。
また外保連手術指数といって、外科手術の「技術の難易度」「手術に必要な外科医の数」「所要時間」などを基に算出される指数がある。こうした外保連手術指標などを駆使して新たな一般的な急性期医療を現わす指標が検討されることになるかもしれない。
(3)DPCカバー率
DPC制度による評価指標も考えらえる。一般的にDPC制度は急性期一般入院料1,2で算定件数が多く、急性期医療を評価する指標でもある。このDPCには様々な患者に対応できる総合的な体制を評価する指数がある。この指数の代表例にはカバー率がある。カバー率とは、当該病院で算定している診断群分類の種類の多さから、様々な疾患に対応できる総合的な体制を評価している。 具体的にはカバー率は当該病院で一定症例数以上算定している診断群分類数」÷「全診断群分類数」で表される。一般に病院の規模が大きいほど、カバー率は高くなる傾向がある。ただ規模が同じような病院同士でもカバー率にはばらつきがある(図表3)。このため例えばカバー率のある値以上を一般の急性期の指標とすることも可能だろう。
図表3

厚労省 入院・外来医療等の調査・評価分科会 2025年7月3日
3 救急医療
救急医療については下り搬送を評価する救急患者連携搬送料とウオークイン救急が検討がされた。
(1)救急患者連携搬送料
高齢者救急が増えている。高齢者救急には誤嚥性肺炎、尿路感染、心不全が多い。こうした高齢者救急がいったん急性期病床に入院すると、急性期病床を占拠し入院期間が延長する。こうした事態を回避するため、2024年診療報酬改定では、救急患者を受け入れた高次救急病院でトリアージし、後方病床へ転送するいわゆる「下り搬送」が導入された。
これが2024年改定で新設された「救急患者連携搬送料」である(図表4)。救急患者連携搬送料のポイントは、高次救急病院と地域の一般病院が日頃から「連携関係」を構築しておき、高次救急病院に搬送された患者について一般病院でも十分対応可能と判断された場合に、下りの「転院搬送」を行うことが評価される。いわば院内連携で急性期病床から地域包括ケア病棟に転棟させていたことを、地域の中で病院間で行うという発想だ。
図表4

厚労省保険局医療科 令和6年度診療報酬改定の概要 2024年3月5日
救急患者連携搬送料(図表4)の以下の内容を詳しく見ていこう。
最も高点数の「1.入院中の患者以外の患者」とは、救急搬送されてきた患者を救急外来で受け入れ、救急外来でトリアージして入院させずに他の病院に直接下り搬送した場合の点数である。それ以下は一旦入院させて、1日目、2日目、3日目に下り搬送する場合である。下り搬送のためのトリアージ期間が短ければ短いほど高点数となっている。
さて改定後の救急患者連携搬送料の算定結果について見ていこう。まず届け出医療機関が2024年7月から2025年5月にかけて大幅に増加して387医療機関となっている。算定数はもっと多いのが、入院中以外の場合(すなわち入院前)で、月当たり669件だ。2番目に多いのが、入院2日目の患者だ。届け出は高度救命救急センター、救命救急センター、2次救急医療機関で全体の17%にとどまっている。届け出をしない理由としては、「救急用の自動車、救急医療用ヘリコプターによる救急搬送件数が年間2000件以上でない」、「搬送に同情するスタッフが確保できない」、「自院・連携先医療機関が緊急時奏者を保有していない」となっている。
また算定患者の搬送理由としては、「処置・手術等を必要としないが、急性疾患に対する治療を必要とする状態であった」が最も多い。また「自院・連携先医療機関の保有する緊急自動車がない」がネックとなっているのことに対しては、「民間の患者搬送事業者」の活用も重要だ。
(2)ウオークイン救急患者
また救急車等による受け入れ医患者が少ない医療機関でも相当数の「ウオークイン救急患者」を実際には診ている。ウオークイン救急患者とは徒歩または自家用車で外来受診する救急患者である。著者も横須賀市にある衣笠病院で初診外来を週2日担当している。この初診患者の中にウオークイン救急患者が混じってくる。「昨夕から胸部痛がひどくて眠れなかった。朝一番で外来受診した」と言う患者は心電図を取ったところ急性心筋梗塞だった。また「急に片足に力が入らなくなった」と言ってきた患者の脳MRIを撮影したら視床部のラクナ梗塞だった。また「2~3日前から胃の痛みが右下腹部痛になってきた」と来院した患者は急性虫垂炎だったなど。
このように初診外来には普通にウオークイン救急患者が混じってくるので油断がならない。入院外来分科会の資料によると救急車等による受け入れ患者数が500件以下である医療機関は約27.7%、ウオークインの救急受け入れ患者数が500件以下である医療機関は約33.8%に上る(図表5)。
図表5

厚労省 入院・外来医療等の調査・評価分科会 2025年7月3日
こうしたウオークイン救急患者についても救急医療管理加算が算定できる。救急搬送された重症患者に対し、入院初期に集中的な検査や処置を行うことで、一般病棟等で重篤な救急患者を受け入れる際のコスト増を評価する制度だ。具体的には、緊急に入院を必要とする重症患者に対して、入院初日から7日間を限度に、所定の点数が加算される。
4 重症度、医療・看護必要度
2024年診療報酬改定では重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)が見直された。看護必要度はA,B,C項目よりなる。A項目とは入院患者の「モニタリング及び処置等」を評価する項目だ。具体的には、点滴ラインの管理、注射薬剤の種類、呼吸ケア、創傷処置、特殊な治療や処置など、急性期患者に特化した医学的管理や処置の実施状況を評価する。B項目は日常生活動作(ADL)、C項目は手術や特定の医学的処置を受けた患者の状態を評価する項目だ。以上の項目をスコア化して患者の重症度を評価する。そのスコアが高いことが急性期一般入院料算定の要件になっている。
前回2024年改定では、看護必要度について以下の見直しが行われた。
(1)基準①A項目2点以上かつB項目3点以上の廃止
最近後期高齢者の救急搬送も右肩上がりで増えている。それも軽症ないし中等症の高齢者の救急患者が急増している。年間の高齢者救急搬送のうち軽症患者は120万人、中等患者は160万人と10年前の1.3~1.4倍だ。その多くが急性期一般入院料の病床に運ばれる。救急搬送される疾患で多いのが誤嚥性肺炎と尿路感染だ。これらの患者が急性期一般病床に集中している。これにはワケがある。
理由は急性期一般入院料の重症度、医療・看護必要度による患者評価とその該当基準のせいだ。これまでは重症患者の患者該当を以下の基準で行っていた。基準①A得点が2点以上かつB得点が3点以上、基準②A得点が3点以上、基準③C得点が1点以上の基準である。
この基準①に後期高齢者の救急搬送がぴったり該当する。というのもA項目には救急搬送後の入院(5日間)と緊急に入院を必要とする状態(5日間)が2点でカウントされる。また後期高齢者はADLに問題が多いので、B項目での点数も高い。ということで後期高齢者の救急搬送や緊急入院は重症度、医療・看護必要度の重症患者の基準①におあつらい向けなのだ。しかも救急搬送される誤嚥性肺炎や尿路感染はおよそ5日で軽快し、医療資源投入量も急性期疾患の中では比較的低い。このため入院してもあまり手もかからず、お手ごろな重症度、医療・看護必要度の点数稼ぎとなっていた。
しかし誤嚥性肺炎や尿路感染が本来、急性期病床で診ることがふさわしい疾患かであるかどうかには疑問が生じる。急性期病床にふさわしい患者はもっと他にあるのではないだろうか? このため2024年改定では、急性期入院基本料1から基準①がバッサリと削られた。
(2)重症度、医療・看護必要度Ⅱ
重症度、医療・看護必要度には従来方式の1とDPCのEFファイルからデータを引用する方式Ⅱの二つがある。重症度、医療・看護必要度Ⅱは入院患者の重症度をDPCデータ(EF統合ファイル)で測定する仕組みで、従来のⅠに比べて医療従事者の負担軽減や測定方法の精緻性や透明性が高まるなどの利点から、2008年に導入された。それ以来、その適応が改定のたびに拡大されてきた。
重症度、医療・看護必要度ⅠとⅡを個別の項目間の実施率を急性期一般入院料で比べてみると、たとえばA2の「呼吸器ケア」では、DPCのEF統合ファイルから引用しているⅡに比べて、ⅠではⅡで実施されている医療行為の15~40%しか実施されていなかった。すなわちⅡのほうがⅠよりより精緻な評価方式であることが言える。
このため現状では重症度、医療・看護必要度Ⅱを届けている施設は、急性期一般入院料1では89%、急性期一般入院料2~3では71.9%、急性期一般入院料4~6では34%であった。一方、特定機能病院や専門病院の入院基本料では100%の導入が進んでいる。
これまで200床以下の急性期一般入院料1では重症度、医療・看護必要度Ⅰを認めてきた。しかしこれを2024年の改定からは急性期一般入院料1の全病院でⅡの使用を必須とすることになった。
(3)内科系と外科系の評価の違い
以上のような2024年改定を受けて、2024年7月3日の入院外来分科会では急性期一般入院料1におけるA・C項目の内科系、外科系の違いが議論となった。図表6でみるように、急性期一般入院料1におけるA項目(モニター項目)とC(手術項目)では、内科系では外科系とくらべてA項目得点分布が外科系に高いことが分かった。またC項目も外科系に高いことが分かる。これは当然だろう。外科系のほうが術後のモニターを使う期間が長いし、もともと手術が多いのでC項目も高い。つまり看護必要度は外科系が高得点を挙げやすいのだ。これでは内科系の病棟が不利だ(図表6)。
図表6

厚労省 入院・外来医療等の調査・評価分科会 2025年7月3日
たとえば高齢者救急で多い誤嚥性肺炎や尿路感染症は内科系疾患だ。このいずれもA項目やC項目が内科症例全体よりも低かった。
前述のように高齢者救急で誤嚥性肺炎や尿路感染は救急搬送・緊急入院が多い傾向がある。このため外科系と内科系症例で救急車搬送、緊急入院の割合を比べたところ、明らかに内科系症例の方が外科系症例よりも多かった(図表7)。
図表7

厚労省 入院・外来医療等の調査・評価分科会 2025年7月3日
こうしたことから、入院外来分科会の下部組織である診療情報・指標等作業グループでは、例えば、看護必要度のA項目について緊急入院の該当日数を伸ばす、免疫抑制剤のポイント2点から3点に引き上げるなどの見直しを行う。検査の包括内出来高点数が一定以上の場合に加点する。内科救急当で明らかに入院適応があり、かつ、頻度の高い一定の疾患について入院〇日目まで加点を行うなどの追加評価するなどの議論があった(図表8)。
図表8

厚労省 入院・外来医療等の調査・評価分科会 2025年7月3日
(4)B項目廃止の議論
2024年改定では、急性期一般入院料1では、B項目については、「現場の負担軽減のために、即手義務も廃止・削除すべきと言う意見と、患者状態の変化の継続的な悪のため測定の継続が必要と言う議論が対立した。この結果、B項目は評価の対象から削除するが、測定は義務付けることになった。
7月3日の入院外来分科会でも測定義務についても廃止するべきと言う意見が医師側委員から出ている。たしかに入院初日にB特定が3点以上である割合は、特定機能病院や急性期一般入院料1で低く、急性期一般入院料2~5で高い。また入院中にB得点が3点以上となる割合は、入院初日に3点以上である場合に高く、初日に2点以下である場合はその後も低い得点に推移することが判っている。こうしたことからB項目が『急性期入院医療の必要性を評価するもの』として妥当なのかの疑問が生じた。
しかし今回もB項目を評価する意見は看護側委員からは強い。B項目は「看護の手間のかかり方を評価できる」、また「転棟タイミングの予測や転倒防止などにB項目が活用されている」などの事例をあげて反論している。図表9にB項目の活用事例をあげる。
図表9

厚労省 入院・外来医療等の調査・評価分科会 2025年7月3日
以上、2025年7月3日の入院外来分科会の検討内容を紹介した。ポイントは以下である。一般的な急性期機能の候補指標には救急搬送件数、全身麻酔手術件数、地域シェア率、DPCカバー率などがあげられた。救急医療については下り搬送を評価する救急患者連携搬送料とウオークイン救急が検討された。また重症度、医療・看護必要度については内科系症例の評価が外科系症例の評価より低いこと、B項目の測定義務についての議論がなされた。
入院外来分科会の今後の議論の行方に注目したい。
参考文献
厚労省 新たな地域医療構想等に関する検討会 2024年10月17日
厚労省 入院・外来医療等の調査・評価分科会 2025年7月3日
厚労省 令和6年度診療報酬改定の概要 2024年3月5日
