レポートの投稿

2026年診療報酬改定と在宅医療・訪問看護


図表1 厚労省 中医協総会 2025年10月1日

 2026年診療報酬改定の議論が秋の深まりとともに、中医協総会で活発になっている。今回は2025年10月1日の中医協総会における在宅医療と訪問看護の議論を見ていこう。

1 在宅医療

在宅診療についての議論は以下の3点、「在宅医療において積極的な役割を担う医療機関」、「患者の状態等に応じた適切な診療の評価」、「へき地における在宅医療と訪問栄養食事指導」。これらを順次見ていこう。

(1)在宅医療において積極的な役割を担う医療機関

 在宅医療において積極的な役割を担う医療機関としては、在宅療養支援診療所(在支診)と在宅療養支援病院(在支病)がある。在支診、在支病には常勤医師が3名以上の機能強化型の在支診、在支病がある。3名以上の常勤医を単独で確保している場合が単独型、他の医療機関と連携で確保しているのが連携型と呼んでいる。

 すべての在支診・在支病に共通する基準は、24時間連絡を受ける体制の確保、24時間の往診体制などが挙げられる。また在支病の基準としては許可病床数が200床未満であること、または半径4Km以内に診療所が存在しないことが挙げられる。図表1のその要件の詳細を示した。

 現状の在支診の届け出件数は1万5300件でほぼ横ばいだ。一方在支病は2127件で急増中である。

 また在宅看取りや緊急往診を行う在支診・在支病を評価する加算に「在宅緩和ケア充実診療所・病院加算」がある。要件は機能強化型在支診・在支病であることに加えて、過去一年間の「緊急往診実績が15件以上」、かつ「看取りの実績が20件以上」あることである。しかし、10月1日の中医協総会の資料によれば、この基準を大幅に超えて緊急往診や看取りを行っている在支病、在支診があることが分かる(図表2)。図表2の赤線が上記の基準値を表している。この基準線を越えて緊急往診や看取りを実施している医療機関が多数ある。

図表2

厚労省 中医協総会 2025年10月1日

また機能強化型在支診・在支病の中にも、「3名以上の在宅担当医師を配置」するところや、「在宅担当医師が1人当たり150名以上の患者を担当」するところなど基準超があることも分かった(図表3)。こうした基準以上の実績を上げているところの評価が次回報酬改定では検討されることになるだろう。

図表3

厚労省 中医協総会 2025年10月1日

(2)患者の状態等に応じた適切な診療の評価

 在宅医療における患者の状態に応じた適切な評価を見ていこう。患者の状態は患者重症度や要介護認定度で評価される。患者の重症度は、「別表8(末期がんなどを含む)」の疾患をどれくらい取り扱っているかで評価する。機能強化型在支病・在支診のうち訪問診療患者に占める重症度の高い患者の割合が20%以上の医療機関が35%ほどあった。

 また教育に力を入れている在宅医療機関も一定程度ある。たとえば学生実習、臨床研修医、専門研修の地域プログラム等に所属する専攻医の受け入れを行っていた。

 以上より、厚労省の林修一郎医療課長も「『十分な在宅医療の支援機能、医育機能を併せ持つ在宅医療機関』を、在宅緩和ケア充実診療所・病院加算と統合して評価してはどうか」との考えを示している。具体的には緊急往診実績や看取りの実績の引き上げた上で、それを機能強化型在支病、在支診の要件としてはどうかという提案だ。

 次に在宅療養支援診療所・病院においては、24時間の連絡体制や往診体制の確保が要件となっている。しかし連携型の機能強化型在支診の1週間当たりの連絡体制確保時間や往診体制確保時間には医療機関ごとに大きなバラツキが認められた。図表4に連絡体制確保時間のバラつきについて示した。

図表4

        厚労省 中医協総会 2025年10月1日

 その他、連携型の機能強化型在支診では、「他院のかかりつけ患者に対する緊急往診・看取り代行」の実績にもおおきなバラツキが認められた。

 このようなバラツキから、林修一郎医療課長も「地域の24時間往診体制への貢献度合いに応じてきめ細かく評価してはどうか」との論点を提示している。

 往診時医療情報連携加算とは、2024年改定で導入された加算で、在支診・在支病が普段からICT連携を行っている他の医療機関の患者に往診を行うことに対する評価だ。算定する在支診・在支病数は41医療機関、算定数は380と少ない。これをICT連携を行っていない他の患者にも対象範囲を広げて行ってはどうかという提案が林課長よりなされている。

 また地域の在宅医療提供体制を災害時にも継続して確保できるよう、在支診・在支病においてBCP(事業継続計画)を策定することが必要だ。この策定状況は現状では在支病で32%、在支診で11%であった。林課長はこれを在支病・在支診の要件に加えてはと言う提案をしている。

 在宅医療におおける診療報酬上の評価は、基本は以下の3つである。一つは定期的な訪問診療に対する評価、2つ目は総合的な医学的管理等を行った場合の評価、3つ目は人工呼吸指導管理などの指導管理等に対する評価だ。一つ目の定期的な訪問については単一建物内の人数区分により評価が分かれる。単一建物内の複数人に対応した場合には単一建物減算が適応される。理由は単一建物内で複数人を診療する方が、より効率的だからだ。2つ目は居宅(個人宅)における在宅時医学総合管理料(在医総管)と老人ホームなどの施設を訪問した場合の施設入居時等医学総合管理料(施設総管)のように総合管理料が2つに分かれている。そして3つ目は在宅人工呼吸指導管理料のように特別な指導管理料に応じた評価だ。

 総合的な医学管理を評価する在医総管・施設総監は医療機関が機能強化型であるかないか、訪問診療の頻度などでさらに点数が区分されている。そして患者の重症度に応じて、溶解度3以上や認知症高齢者の日常生活自立度ランクⅢ以上には加算も設けられている。

 しかし在宅医療提供データを見ると、有料老人ホームでは、施設スタッフが外来受診に付き添うことが困難なため、頻回な訪問が必要になるケースが多い、19%の医療機関では在宅医療から外来医療への意向を経験しているなどが明らかになっている。外来受診可能な患者が在宅医療を受けていることが伺える(図表5)。

図表5

    厚労省 中医協総会 2025年10月1日

 こうした状況を踏まえれば、必要性の低い在宅医療を漫然と継続する医療機関については評価を引き下げ、通院可能患者は在宅医療から外来医療への復帰を促すことも考えられる。

 しかし現実はそう簡単ではない。著者は横須賀市の衣笠病院で外来を担当している。すると85歳の妻の車いすを90歳の足元もおぼつかない夫が押して診察室に入ってくる。横須賀市は坂や階段が多く、その90歳の夫は自宅前の8段の階段を介護タクシーの運転手に手伝ってもらいながら、妻の車いすを抱えて降りるのが大変だという。「そろそろ在宅に切り替えますか?」というと二つ返事で「お願いします!」と言う。こうした通院困難を訴える患者が外来では増えている。軽症だからといって在宅医療を切り捨てることは簡単ではない。

(3)へき地における在宅医療と訪問栄養食事指導

 次にへき地における在宅医療の扱いだ。へき地診療所では、基幹病院からの派遣医師によって在宅医療が成り立っている。こうした場合には当該へき地診療所における在医総管・施設総管の算定を、医師派遣元の基幹病院に算定可能としてもよいのではないかと言う議論もされている。

 訪問栄養食事指導については、退院直後の一定期間については、退院支援や居宅療養管理指導との連携のため、入院医療機関から行う訪問栄養食事指導を評価してはどうかという議論も行われている。

2 訪問看護

 在宅医療における訪問看護の需要も今や急増している。2023年現在、要介護・要支援者を介護保険で支える訪問看護利用者は74.4万人、小児等の40歳以下の成人を医療保険で支える訪問看護利用者は48.4万人もいる。しかもその利用者数はウナギ上りに増えている。このため訪問看護ステーションの利用に係る費用は、医療費及び介護給付費共に増加している。増加の伸び率は医療費の方が多い。介護保険による訪問看護利用者は23年前の2001年の3.9倍、医療保険による訪問看護利用者は9.9倍の伸びだ。

以下、同一建物の複数居住者への訪問看護、頻回訪問看護について見ていこう。

(1)同一建物の複数居住者への訪問看護

 同一建物の複数居住者への訪問看護、短時間・頻回な訪問看護について議論がなされている。同一建物については、例えば有料老人ホームに居住する複数の高齢者に同一日に訪問看護を提供できれば、移動コストも削減でき、効率的な訪問看護が行える。このため訪問看護基本療養費は同一日に同一建物に居住する3人以上の利用者への訪問を少し低く評価している。また2024年改定では、訪問看護管理療養費のうち月2回目以降の区分については、同一建物居住者の割合が多い場合には訪問看護基本療養費Ⅱとして低い評価とする見直しも行われた(図表6)。

図表6

厚労省 中医協総会 2025年10月1日

 この現状をみると、同一日に同一建物に居住する利用者3人以上に対して訪問看護を行う訪問看護基本療養費Ⅱの算定が増加傾向にあることが判った(図表7)。

図表7

    厚労省 中医協総会 2025年10月1日

(2)頻回な訪問看護

 訪問看護基本療養費Ⅱを算定する場合の訪問看護みると、1月当たりの訪問日数が多く、1回当たりの訪問時間は短い傾向がみられる。また同一建物に居住する利用者数が多くなると、1回の訪問時間は短くなる傾向がみられた。さらに介護保険の訪問看護の収支差(利益率)は5.9%であるが、高齢者の住まいに併設した訪問看護ステーションでは、20%超の利益率をたたき出すところもある。

 こうした状況から、林医療課長は次のような点を検討してはどうかと提案している。「高齢者住まいに等に居住する利用者については、多人数の利用者に対する頻回な訪問看護が行われている点を踏まえて、訪問看護基本療養費における同一建物・単一建物の利用者の人数や訪問看護に応じた提供コストを踏まえて、評価の在り方を見直してはどうか?」、「高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションに対する評価を検討してはどうか?」、また「頻回な訪問看護を必要とする場合には主治医が交付する訪問看護指示書にその旨を明記してはどうか?」。

 この提言について関しては、中医協では医師会委員からは、訪問回数の多い、訪問看護ではパーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)などの重症患者が多い点も勘案すべきという意見(図表8)、不適切な請求についてはまず指導で対等すべきなどの意見が出されている。

図表8

 厚労省 中医協総会 2025年10月1日

 以上、2026年診療報酬改定へむけて、訪問診療、訪問看護について中医協の議論を振り返ってみた。今後、12月末へ向けて改定率が明らかになり、来年2月に中医協答申が行われる予定だ。年度末の答申へ向けての中医協の議論から目が離せない。

参考文献

厚労省 中医協総会 2025年10月1日