
2025年9月10日の中医協総会で2026年診療報酬改定における「調剤」の議論がスタートした。本稿ではこの「調剤」の議論を振り返ってみよう。ポイントは以下である。薬剤師の偏在、調剤管理料、かかりつけ薬剤師指導料等の薬学管理料の評価、そして調剤基本料、地域支援体制加算、後発医薬品調剤体制加算等の調剤技術料の評価等について見ていこう。。
1 薬局・薬剤師を取り巻く状況
2024年時点で全国の薬局数は62.823軒、そのおよそ半数が20店舗以上のグループ薬局により占められている。全体の薬局数はなお増加している。都道府県別の薬局数の増減をみると、東京、大阪、神奈川、埼玉、愛知の大都市圏は増加の傾向、一方、広島、山口、宮崎、鹿児島の地方は減少に転じている。二次医療圏で比較すると、処方箋発行枚数当たりの薬局数は医療圏間で最大と最小で6倍の開きがある。人口の少ない医療圏では処方箋発行枚数当たりの薬局数は全国平均を下回る地域が多い。
2022年の全国の薬剤師数は32.4万人で、薬局薬剤師数は19.1万人、医療施設の薬剤師数は6.3万人である。この経年変化をみると1988年に5万人程度だった薬局薬剤師数は2022年19.1万人と4倍近く増加している。一方、医療施設の薬剤師医は5万人前後でその増加は僅かである(図表1)。薬局薬剤師の増加は医薬分業による薬局数の増加がその背景にある。薬局数は1974年には2.6万軒だったが、2023には6.3万軒、およそ2.4倍に増えている。薬局への薬剤師の偏在が課題だ。
薬局薬剤師と病院薬剤師の薬剤師偏在指標をみると、薬局は1.08、病院は0.80で明らかに薬局に偏在していることが判る。なお薬剤師の偏在指標とは薬剤師の現在の労働量を必要な業務量で割った指標で、1が標準となる。1以上は現在の労働量が過剰、1以下が過少となる。都道府県別に見ると薬局薬剤師に関しては東京都、神奈川県、兵庫県など18都道府県で1以上である。一方、病院薬剤師で1を超すところはなく、青森県、秋田県、山形県など東北県では0.6以下であり病院薬剤師の過少が際立っている(図表2)。
図表2

厚労省 中医協総会資料 2025年9月10日
こうした薬剤師の薬局への偏在や地域偏在については、医師、看護師などの偏在とともに新たな地域医療構想のなかでの課題となっている。
2 患者のための薬局ビジョン
2015年、厚労省は「患者のための薬局ビジョン」を策定した。ビジョンでは薬局のあり方を「門前薬局」から「かかりつけ薬局」、そして「地域に根ざした薬局」へと進化させることを目指している。
この背景には、医薬分業が進む中で、薬局の役割が十分に発揮されていないという指摘があるからだ。また人口の高齢化により地域包括ケアの重要性が高まる中、患者本位の医薬分業を実現する必要があるとされた。
患者のための薬局ビジョンでは以下の3つの基本方針からなる。
1つ目つは「立地から機能へ」だ。病院の門前薬局ではなく、地域住民の健康を面で支える機能を持つ薬局へと変えていく。2つ目は「対物業務から対人業務へ」のシフトだ。薬を患者に渡すだけでなく、患者との対話や服薬指導を行い、そのアセスメントやフォローアップを行うなどの対人業務へのシフトだ。3つ目は地域連携だ。服薬情報の一元管理を進め、医療機関や他職種との連携を強化する。
具体的な薬局の機能は以下だ。かかりつけ薬剤師・薬局機能 服薬情報の継続的把握、24時間対応、在宅医療支援など。「健康サポート薬局」では、OTC医薬品の提供、健康相談、地域イベントの開催などを行う。「高度薬学管理機能薬局」では、 抗がん剤や専門薬の管理、医療機関との連携による専門的支援を行う。
目標としては、2025年までにすべての薬局を「かかりつけ薬局」に再編することを目指している。調剤報酬改定にもこのビジョンが反映されており、薬局経営や薬剤師の働き方に大きな影響を与えている。
3 調剤報酬
まず調剤医療費の現状から見ていこう。2024年の調剤医療費は8.4兆円でそのうち技術料は2.3兆円で、残り6.1兆円が薬剤費だ。技術料は調剤技術料で、調剤基本料(薬局の設備・機器などに関する点数)、調剤料(薬の調剤に対する点数)、各種加算料(一包化など)よりなる。このうち調剤料はどちらかと言うとこれまで対物業務イメージが強かった。このため2024年改定では、調剤料を廃止し、その内訳を見直して、薬剤調整料(対物)、調剤管理料(対人)、服薬管理指導料(対人)に整理し、対物から対人の流れを加速した。
以下、調剤報酬改定の改定の経緯と現状を以下のポイントについて見ていこう。
(1)調剤管理料
2024年改定でこれまでの調剤料を廃止し、処方内容の薬学的分析、調剤設計等と、薬歴の管理等に係る業務を評価する「調剤管理料」を対人業務として新設した。調剤管理料はなお日数による評価があり、日数が多いほど、算定回数や総額が増えていた。
(2)服薬管理指導料
2024年改定で調剤料を廃止したあと、それまでの薬剤服用歴管理指導料として評価されていた服薬指導等に係る業務を評価するため、「服薬管理指導料」が新設された。服薬管理指導料の算定回数の推移は、処方せん枚数の推移と同様の傾向であり、患者が3か月以内に同じ薬局を利用した場合の算定回数は全体の約75%であった。
(3)継続的な服薬指導
薬局調査によれば薬局薬剤師の継続的な服薬指導の方法としては電話によると言う回答が最も多かった。対象患者には糖尿病の患者が多かった。次いで喘息・COPD,心不全、抗血栓薬を服用している患者、抗がん剤の服用患者、小児の順であった(図表3)。
図表3

厚労省 中医協総会資料 2025年9月10日
(4)かかりつけ薬剤師指導料
かかりつけ薬剤師指導料は、かかりつけ薬剤師が医師と連携して患者の服薬状況を一元的・継続的に把握し服薬指導等を行った場合に算定する。このかかりつけ薬剤指導料及び火価値つけ薬剤師包括管理料の算定回数・届け出薬局数は増加中で、保険薬局全体の約6割に達している。算定割合は調剤基本料3ロ、ハ、特別調剤基本料Aの届け出施設に高かった(図表4)。調剤基本料3ロ、ハは同一グループの保険薬局数が300以上の大手調剤グループ薬局である。また特別調剤基本料Aは敷地内薬局で、こちらも多くは大手調剤グループ薬局である。
図表4

厚労省 中医協総会資料 2025年9月10日
(5)重複投与、多剤投与、残薬解消
医師への疑義照会により処方内容が変更され、重複投与・相互作用等防止加算を算定した割合は、2018年以降同程度で推移している。一方、外来服薬支援料Ⅰ(残薬解消等の服薬支援)、服用薬剤調整支援料(原薬の取り組み)の算定回数は増加傾向にある。
(6)医療機関等への情報提供、連携
薬局から医療機関への情報提供を評価する服用情報等提供料は全体としては2021年度以降、算定数は伸びている。しかし薬剤師が必要性を認めて医療機関へ行う情報提供やリフィル処方せん調剤の伴う処方医の情報提供や介護支援専門員への情報提供である、服薬情報提供料2の伸びは鈍化している(図表5)。
図表5

厚労省 中医協総会資料 2025年9月10日
(7)調剤基本料、地域支援体制加算
2022年改定で、大型のチェーン薬局を評価する調剤基本料3に同一グループで処方箋受付回数が月40万回超又は同一グループの保険薬局の数300以上の「ハ」が新設された。この調剤基本料3「ハ」は2024年度には全体の18.8%になった(図表6)。
図表6

厚労省 中医協総会資料 2025年9月10日
地域支援体制加算とは「地域医療に貢献する薬局を評価するための加算」で、2018年に新設された。地域支援体制加算には 調剤基本料の区分によらない共通の施設基準(一定の開局時間、在宅体制整備等)と、調剤基本料の区分により、実績要件を設けた。実績要件は4区分が設けられている。4区分の内訳は調剤基本料1で2区分、調剤基本料1以外で2区分に分けた。区分には店舗ごとの実績要件を求める区分と処方箋受け付け回数ごとに実績要件をカウントする設定を設けた(図表7)。
図表7

厚労省 2024年診療報酬改定の概要 2024年3月
地域支援体制加算1~4のいずれかを届け出ている薬局は2024年度で38.4%である。調剤基本料1の薬局で約4割、調剤基本料1以外の薬局で約3割が届け出をしている。
(8)後発医薬品使用体制加算
後発医薬品調剤体制加算は後発医薬品普及のため、後発医薬品使用割合が80%以上の場合に加算1,85%以上の場合に加算2,90%以上の場合に加算3,逆に50%以下の場合は調剤基本料の減算を行う仕組みだ。
この後発医薬品調剤体制加算の算定回数は増加傾向にあり、特に加算3の回数・届け出薬局数が増加している。後発医薬品使用割合は2024年10月の長期収載品への選定療養費の導入の影響もあり、後発医薬品の使用割合は2024年10月に全国平均で90.1%となり初めて9割を超えた。
こうしたことから中医協では支払い側は「後発品使用が当たり前になった。当たり前になった後発品の使用を今後も加算で評価する必要があるのだろうか?」と疑問を投げかけている。一方、診療側は「後発品を中心としうる医薬品の供給不安が解消しておらず、薬局の手間は依然として重い」として後発医薬品調剤体制加算の見直しには反対している。
図表8

厚労省 中医協総会資料 2025年9月10日
以上のような現状を踏まえ、次回2026年診療報酬改定では、以下が課題となる。
調剤基本料、地域支援体制加算、後発医薬品調剤体制加算等の調剤技術料の評価をどのように考えるのか?薬剤師の対人業務をさらに拡充させる観点から、調剤管理料、かかりつけ薬剤師指導料等の薬学管理料の評価をどのように考えるか?
今後とも中医協の調剤の議論の動向を注視したい。
参考文献
厚労省 中医協総会資料 2025年9月10日
厚労省 2024年診療報酬改定の概要 2024年3月
