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 身体拘束に人権法に基づく基本法を!


 2024年診療報酬で身体拘束最小化に関する報酬が導入され、2025年6月から実施されている。身体拘束最小化する体制整備をしなかった場合に入院基本料から40点の減算とするというものだ。すでに身体拘束については、精神障害保健法や介護保険法では、その規定が盛り込まれている。

 先進各国の身体拘束に関する法規定を調べてみた。すると各国とも「憲法」における人権保護で規定したり、「人権法」で規定する場合、「精神保健法」などの個別法で規定する場合などがある。

 日本では憲法における基本的人権で規定しているが、主に個別法による規定となっている。諸外国ではこの中間段階に人権法による規定を行っている国が多い(図表)。むしろこちらのほうが国際標準だ。

 現状、日本の身体拘束や隔離に関しては、その収容先施設においてまちまちだ。たとえば医療、介護施設、精神科施設などは、個別に規定されている。ただ医療においては診療報酬の規定のみで、その根拠法はない。

 多くの国では身体拘束を人権法の枠組みで明確に規定し、その基盤としての人権法が整備されている。もし日本でも統一的な人権法で、身体拘束を包括的に扱うことになれば、より明確な規定や倫理的判断が可能になり、国際基準とも一致することになる。

 またこうした人権基本法はそのスコープを医療介護以外に拡張して適応することも可能だ。刑務所・拘置所、入管収容施設などの隔離中に、医療が必要であるにもかかわらず受けることが出来ず、収容者が亡くなるケースも報道されている。

 これは身体拘束や隔離に対応ができる統一的な人権にもとづく身体拘束や隔離に関する「基本法」がないためだ。早急に法的な整備が必要だ。