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ペイシェント・フロー・マネジメント


 ペーシェント・フロー・マネジメント(PFM)とは、「予定入院患者の情報を入院前に把握し、問題解決に早期に着手すると同時に、病床の管理を合理的に行うことなどを目的とする病院マネジメント、あるいはその組織」を意味する。

 このPFMの考え方は日本では1999年、神奈川県伊勢原市にある東海大学医学部付属病院から始まった。もともと東海大学付属病院の消化器外科の医師で病院管理学助教授だった田中豊氏(写真)が1997年よりPFMを始めた。田中豊氏らは、当時同病院で入院未収金対策や社会的入院患者対策を検討していた。そして田中豊氏らはこれらの患者の社会的・身体的・精神的リスクは入院前に把握できることに気づいた。そして、これらの問題に対して入院前から対策を講じる組織を設けることとし、この組織をPFMと名付けた。その後、PFMの運営ノウハウ等を蓄積し、2006年に東海大学医学部付属病院が建て替えられて新病院となった時に、PFMを全病院的に展開することとした。

 2006年に東海大学医学部付属病院が設定したPFMの機能は、①外来初診患者の受診科振り分け、②PFMの看護師のサポートによる医療連携の充実、③予定入院患者入院申込み時のPFM看護師による患者情報収集と各種リスクのアセスメント、必要に応じた医療ソーシャルワーカーなどの介入、④病床管理(ベッドコントロール)が主な役割であった。

 このPFMを導入したことで、東海大学医学部附属病院はそれまでの赤字を返上して黒字に転じる。黒字化した理由は平均在院日数が短縮化したと同時に、新入院患者が増え病床利用率が向上したからだ。このような効果が認められため、PFMは全国に展開し、また診療報酬でも入退院支援加算や入院時支援加算の導入へとつながる。

 しかし田中豊氏はこうしたPFMの全国展開を見ることなく残念なことに大腸がんでお亡くなりになる。ご冥福をお祈りするばかりだ。

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