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底点(ていてん)


 衣笠病院では毎朝8:30からチャペルで礼拝がある。昨日の礼拝で大野牧師から深津文雄牧師の「底点」の話を伺った。深津文雄牧師(1909年~2000年)は福井県敦賀市生まれだ。深津牧師は1933年元売春婦ら社会復帰が困難な女性を救済する婦人保護施設・いずみ寮を開設、1960年には千葉県館山郊外の丘の上に、従軍慰安婦のための鎮魂の碑を建立したことで知られる。

 この深津牧師の言葉に「底点」と言う言葉がある。深津牧師は言う。「われわれが、社会のことを語るとき、上のほうは頂点とよぶ。それに対して、下のほうは底辺とよんで、だれも、それを疑わない」、しかし「そこに降りてみると、考えていたよりは凸凹で、奥深く、下には下があって、・・・・(底辺は)ただひとつの点になる。そこを、ぼくは「底点」とよぶことにした」、「なぜ、このような、こまかい言葉のはしにこだわるかというと、底辺という考えかたでは、そこが一番大きく感じられ、・・・・絶望感に陥ってしまう」、「ところが、底点ということになると、だれか一人いって、手をとれば、解決がつく。やってみようという気になる」、「この、みんなが見落としている小さな場所をみつけることが、福祉事業学の第一課なのである」。

 衣笠病院の創立の精神には聖書の以下の言葉か掲げられている。「わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」新約聖書・マタイによる福音書 25章40節

 底点に神が宿るのだ。

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