
気象の変化が引き起こす本格的な疾患も数多い。
代表例は自然気胸だ。自然気胸の多くは、肺の表面にできた「ブラ」や「ブレブ」と呼ばれる小さな空気の袋(嚢胞)が破裂して起こる。 周辺の気圧が下がると、ブラやブレブの中の圧があがってパンクして、胸膜腔に一気に空気が入り込み、肺がぺちゃんこになる。台風の接近や低気圧の通過、あるいは飛行機への搭乗や登山などによって急激に外気圧が下がると、肺のブラがパンクする。呼吸器外科や救急の現場では、「台風が上陸した日」や「気圧が大きく変動する悪天候の前後」に、自然気胸の急患がまとまって受診することが珍しくないとされている。また一回、自然気胸を起こした人は二回目もある。気胸の人は注意したほうがいい。
片頭痛も気象病だ。やはり気圧の急低下、前線の通過、湿度の変化で、片頭痛が誘発される。耳の奥にある内耳(気圧センサー)が気圧の低下を感知すると、脳の自律神経を介して全身の血管が拡張します。この頭部血管の急激な拡張が、周囲の三叉神経を刺激・圧迫することで、激しい頭痛発作を引き起こすのがその原因だ。
メニエール病・良性発作性頭位めまい症などのめまい・耳鳴りも気象病だ。やはり気圧の急激な変動で、内耳リンパ液の圧力バランスに影響を与え、内耳のむくみや三半規管・前庭器官の誤作動を招くことで、めまいや耳鳴りの発作を誘発する。
気管支喘息の発作も気温の急低下(寒暖差)、台風・低気圧(気圧低下や高湿度)で誘発される。そのメカニズムは冷気や寒暖差が気道を直接刺激して収縮させるほか、気圧の低下や大気中のアレルゲンの拡散、湿度の変動などが気道の過敏性を高め、発作を誘発する。季節の変わり目や悪天候時に救急外来が増えやすい要因となる。
もう一つは、急性虫垂炎は晴れた日曜日に多いという外科の医者の言い伝えだ。これは晴天の日には免疫動態が変わるとかいろいろ外科医は理屈をつけているが、本当のところは違う。晴れた日曜日にゴルフにでも行こうかと思っていた外科医に病院から急性虫垂炎の手術の連絡が入る。こういうことは滅多にないのだが、1度でもあると、決して忘れない。せっかくの日曜日が潰れたという強烈なインパクトがあるため、同僚との雑談や医局の語り草で「晴れた日曜日の急性虫垂炎」が都市伝説となったものだ。
