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宿便による直腸穿孔


 昨日の外来で女性の中高齢の患者さんと話していたら、その体験談がなんとも恐ろしかった。患者さんはもととも便秘気味で、宮古島に旅行中、旅行の忙しい日程で便秘がひどくなって、ホテルのトイレで思いっきり力んだら、急に腹痛がして救急病院に駆け込んだ。診断はなんと岩石のように固くなった宿便が直腸とS字結腸の境目で腸の壁を突き破って腹腔内に飛び出したというのだ。

 緊急手術で、S字結腸の人口肛門を一時的に作って、落ち着いたころに、また直腸とS字状結腸をつなぎ合わせて、人口肛門を閉じて難を逃れたという。大変な体験談だったので、思わず話に聞き入ってしまった。

 若い時に高齢の女性でバリウムによる胃透視のあと、結腸でバリウムがしっくいのように固まって、S字状結腸を突き破った例を経験した。開腹したところS状結腸に穴があいて腹腔に白いバリウム便がぷかぷかと浮いていた。

 宿便による直腸穿孔とは、長期間にわたって直腸やS状結腸などに岩石のように固くなった宿便が腸管壁を強く圧迫し、血流障害や壊死を引き起こし、腸の壁に穴(穿孔)を開けてしまう病態だ。穴が開きやすいのはS状結腸や直腸・S状結腸移行部だ。硬くなった宿便が長時間にわたり腸管の内側から壁を圧迫し続けることで、毛細血管の血流が低下する。すると腸の粘膜に「宿便性潰瘍」が形成される。さらに進行すると壁全体が壊死して穴があき、便が骨盤内や腹腔内、あるいは後腹膜へと漏れ出しまう。一般に重度の慢性便秘の高齢者や長期臥床者、排便機能が低下している人に多い。 高齢者などの場合、症状が非特異的で自覚症状が乏しく、診断が遅れる場合もある。

 治療は基本的には緊急手術が必要となる。結腸の破裂した穴を単純に縫い閉じるだけでは炎症や組織の脆弱性から再穿孔のリスクが高いため、穿孔部を含む腸管の切除や、一時的に人工肛門を造設する手術(ハルトマン手術など)が選択されることが多い。それに加え、強力な抗菌薬投与や全身管理(集中治療)が不可欠となる。

宿便恐るべきだ。

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