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病院が突然消える日


 突然、病院が消える時代がやってきた。兵庫県伊丹市にある近畿中央病院(写真)が来年3月をもって消える。近畿中央病院は1956年に公立学校共済組合が組合員とその家族のため福祉事業の一環として開設された。それ以来70年近くも運営を続けてきた。公立学校共済組合病院の中では名門の病院だ。

 経緯は以下だ。近畿中央病院は当初、今年2025年10月に、近隣の市立伊丹病院と統合する予定だった。ところが、2022年度に実施された整備工事の発注において、2度にわたり入札不調となった。このため工事の開始が大幅に遅延し、統合新病院の開院時期は2026年8月へと延期されることになった。
 さらに不幸が追い打ちを掛ける。2025年1月に統合新病院の建設予定地である現・市立伊丹病院の敷地から、想定を大幅に超える深刻な土壌汚染が判明し、対策工事が必要となった。このため統合新病院の開院は2027年度後半まで、再び大幅に延期されることとなった。

 こうした統合延期に、さらなるトドメを刺したのが、昨今の人件費やエネルギー、その他材料などのコスト上昇だ。このため同病院は大幅な赤字を解消する見込みが立たず、現有の施設の老朽化に対する大規模な修繕費の捻出も困難となった。もはや病院統合どころではない。このため2026年3月で閉院となった。

 実はこうした再編統合を契機に合築や、病院老朽化による新築建て替えを計画している病院は全国に数多い。これらの病院が直面している課題が明らかになったのが近畿中央病院だ。他人ごとではないと思った病院も多いだろう。

 築城3年落城3日だ。いよいよ病院が突然消える日が10年前倒しでやって来た。

日本から病院が消える日」を執筆しようと思う。