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職場ストレスと休職診断書


 外来をしていると、職場ストレスが背景にある不定愁訴の患者が時々やってくる。比較的若い人でいかにも真面目そうな人が多い。訴えは頭痛、肩こり、胃の不調、動悸、息切れ、倦怠感、不眠などさまざまだ。

 一通りの問診と診察のあと、職場や家庭で何かストレスがないのか必ず聞くことにしている。すると待ってましたとばかり職場の上司との折り合いが悪いことや、残業が多いこと、長時間通勤など、切れ目なく職場の不満を訴えられる。

 そのとたんこちらも産業医に早変わりする。遅刻、欠勤の状況、現在の職場の勤務状況、配置換えの希望があるかなどなど。そして状況がただならないことが判れば、1か月の休職を勧めてみる。すると「休職に必要な診断書を書いてもらえますか?」と即座に聞き返してくる。これが外来に来た最大の目的であることが分かる。

 休職の診断書は「適応障害」「自律神経失調」など症状に応じて病名をつける。そして診断書を渡して、「復職前にかならず外来に来るように」と再診予約をして診察を終了する。

 こうして患者さんは1か月後の復職前の診察予約日にやってくる。するとかならず前回とは打って変わって明るい笑顔でやってくる。話を聞いてみると、「休職の診断書を出したとたんに職場の扱いが変わった」という。この人出不足の中で辞められてはたまらないと、職場の上司もあわてて労働条件の改善に乗り出したのだろう。そして復職の条件にも丁寧に応じてくれたという。

 こうした若い人を見るたびに、こちらもうれしくなる。「1か月の休職期間はどうでしたか?」と聞いて見ると、「1か月がちょうどいい。長すぎると復職しづらくなるし、短いとまた休職前と同じことになりかねない」と言う。「休職期間中はどう過ごしましたか?」と聞くと、「仕事を忘れて気分転換に努めた」という。でもその間に、「また仕事がしたくなっている自分に気が付いた」ともいう。

 1か月の休職診断書のもたらす効果は絶大だ。

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