
クスリには副作用がつきものだ。今回はこの副作用が主作用になったクスリの話だ。脇役が突然、主役に躍り出た話だ。
ボトックス(一般名:A型ボツリヌス毒素)は神経伝達遮断薬として最初は斜視や眼瞼けいれん(目のピクピク)の治療薬として開発された。ところがこのボトックスを目の周りに注射した患者から、こんな声が寄せられた。「先生、しわが消えて若返ったんだけど!」。その後、ボトックスは美容医療における「シワ取りの救世主」として世界中で大ブレイクする。さらに、慢性の偏頭痛や多汗症の治療にも使われるようになり、医学と美容の両方でなくてはならない存在になった。
GLP-1受容体作動薬は、インスリンの分泌を促して血糖値を下げる糖尿病の治療薬だ。この副次効果に「やせ」がある。脳の満腹中枢に働きかけたり胃の動きを遅らせたりするため、食欲が嘘のように消え、体重がみるみる減る。このあまりに強力な体重減少効果に、当初は「副作用としての痩せすぎ」が。問題視されたほどだ。これがのちに「これこそ世界的な社会課題である肥満治療の切り札になる」とこのクスリの評価が一変。適応症の拡大や専用の肥満症治療薬としての開発が進み、医療ビジネスに大きな衝撃を与えた。
プロペシア(一般名:フィナステリド)は本来の開発目的は前立腺肥大症だった。ところが服用している患者から「髪の毛がフサフサになってきた」という「副作用」が相次いで報告された。こうして出来上がったのが「リアップ」で、男性型脱毛症(AGA)の治療薬として大化けした。
こうした副作用で世界のスターダムにのし上がったのがバイアグラだ。バイアグラはもとももと降圧剤として開発された。このクスリは治験では降圧効果は大したことはなかった。ところが治験がおわっても被検者がさらに治験継続を求めたのだ。おかしな話だと治験管理責任者の医師が調査したところ、バイアグラの主作用がみつかり、これが世界的な大ヒット商品となった。
