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八角が原薬


 医薬品(クスリ)の原薬には科学合成品もあるが、植物、動物、鉱物などの自然界に存在する材料をベースにしたものも多い。これらを総称して「天然物(てんねんぶつ)」または「天然医薬品資源」と呼び、それらから作られる原薬を「生薬由来成分」や「天然物由来医薬品」などと呼ぶ。

 たとえばインフルエンザ薬のタミフルの原薬は中華料理に使う八角に含まれているシキミ酸が使われている。シキミ酸は化学合成でも作られるが、八角から取る方が圧倒的に安価で効率的だからだ。ただ八角は中国やベトナムで栽培されていて、国内では栽培が難しいので、その輸入に頼っている。

 このように天然物の方が圧倒的の収量がよいという医薬品原薬はシキミ酸以外にも多い。ケシ由来のモルヒネ・コデインはケシから抽出する方が圧倒的に安い。植物のジギタリス(キツネの手袋)から抽出されるジゴキシン、イチイ由来のパクリタキセル、キナの樹皮からとれるキニーネなど。これらは合成も可能だがコスト高で収量も悪いので、天然物に頼っている。

 さらに微生物由来で圧倒的に効率的なケースもある。ペニシリン、セファロスポリン系抗生物質、カビ由来の天然物から抽出されたコレステロールを抑えるスタチンなどだ。

 逆に天然物からの抽出が面倒でまた不純物も多いので、化学合成に置き換わった薬も多い。サリチル酸はもともとは柳の樹皮から採取していたが、化学合成品が圧倒的に安価で純度が高いということで、化学合成品に置き換わった。麻黄から抽出していたエフェドリンも合成品の方が圧倒的に安価なので、合成品に置き換わった。アトロピンはべラドンなから抽出していたが、収量が不安定でロット差が大きかったので、化学合成品に置き換わった。

 クスリの原薬と言うと化学合成品ばかりと思いがちだが、天然物由来も数多いのだ。

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