横須賀にある衣笠病院グループで訪問診療を週一回行っている。年末に、夫婦二人で寝たきりのお宅に訪問診療で伺った。仲良く同じ部屋で、隣合ったベッドで寝ているご夫婦二人を診察し、コロナワクチン接種を行って戻ってきた。
さて在宅の場合は同じ建物の中で同じ日に行う在宅訪問診療は、同一建物減算といって診療報酬が大幅に差し引かれる。居宅の一人の患者さんを訪問したときの在宅患者訪問診療料は888点だが、同じ家屋つまり同一建物に夫婦二人だと、1人目は213点で、二人目は再診料の180点となる。213点と180点、お二人で合計393点と、お一人診たときの888点の半分以下だ。
ご夫婦を訪問診療して帰り道、同行した看護師さんと「夫婦割引なんて厚労省も粋なことをするもんだ」と感心した次第。これから「在宅夫婦割引を宣伝しては」と言う事になった。しかしこの同一建物減算は粋な計らいでもなんでもない。単に同一建物の場合は効率的に訪問診療が行えることから、点数を引き下げたに過ぎない。でも患者さん宅にとっては、1回の訪問で二人とも診てもらえ、さらに自己負担分が減るので大きなメリットだ。
診療報酬はこうした効率性の観点から減算を導入しているケースが数多い。たとえば門前薬局の調剤基本料もその例だ。大型の門前薬局で特定の医療機関から処方箋が大量に集中するような薬局は、調剤の効率性が高いので調剤基本料が24点と安くなっている。一方、厚労省が進めている地域の中の小規模の薬局の調剤基本料は45点と2倍近くもある。このため患者からみると自己負担分は地域の中の小規模の地域の薬局より、門前薬局のほうが安価になる。まるで門前薬局割引のようだ。厚労省は門前薬局よりは地域の薬局を政策的に進めていることから、こうした点数誘導を行っている。しかしヘンな話だ。患者の視点からみれば門前薬局の方が医療機関から近くて便利で、さらに安いということで、患者さんを門前薬局に誘導しているようなものだ。
理由は厚労省の診療報酬の付け方はあくまで医療機関目線で、患者目線ではないからだ。診療報酬をもっと患者さん目線にして、患者さんからサービスや医療機関を選んでもらうような仕組みに変えてはどうだろう?夫婦割引などその最たるものだろう。