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在宅患者の重症度区分の見直し


昨年12月の厚労省の発表で、2023年に在宅医療を受けた外来患者は1日当たり23万9千人で、過去最多となった。ただ在宅医療の患者をその重症度で見ると様々だ。比較的安定している軽症の患者から、がんの末期のように重症の患者までその重症度には大きな差がある。こうした在宅患者の重症度については2015年ごろにその見直しを行った。重症度分類に用いたのは、厚労省が定める別表7と別表8である。別表7はがん末期やパーキンソン病などの疾病リスト、別表8は留置カテーテルや在宅人口呼吸器などの処置リストである。この疾病と処置リストに該当する患者を重症とした。つまり重症度スケールは重症か軽症の2区分だ。いささか重症度分類としては大雑把な分類だ。

 これに対して療養病床における重症度分類はより精緻だ。具体的には疾病リストと処置リストを組み合わせて3区分に分けている。具体的には重症の医療区分3から中等症の医療区分2、軽症の医療区分1だ。さらにこれに日常生活動作(ADL)の区分を3つに分けて、重症をADL区分1、中等症のADL区分2、軽症のADL区分1の3区分に分けている。この3つの医療区分と3つのADL区分を掛け合わせて3×3の9区分のマトリックスで重症度を判定している。この9区分に応じて診療報酬を決めている。

 急性期医療では重症度はさらに精緻だ。それは「重症度、医療・看護必要」と呼ばれ、処置やモニターのA項目、ADLのB項目、手術のC項目の3項目のそれぞれにスコアを決めて、よりきめ細かく分類されている。

 以上の例に倣って在宅医療においても重症度区分を見直してはどうだろうか?見直しのポイントは以下の4つだ。①疾患リスト、②処置リスト、③療養の場所だ。従来の疾患リスト、処置リストの組み合わせを2区分から療養病床の医療区分なみの重症、中等症、軽症の3区分にしてはどうだろう。これに療養の場所の自宅と施設の2区分を掛け合わせて3×2で6区分だ。

 さて新たな地域医療構想が議論されている。新たな地域医療構想では従来の入院医療の地域医療構想だけでなく、外来医療、在宅医療もその射程を広げている。この地域医療構想においては国は療養病床の軽症の医療区分1の7割の患者の在宅へ移行を想定している。こうしたことからも入院と在宅を連続的につなぐ重症度区分の見直しが必要だ。

 2015年の在宅医療の重症度区分の見直しからすでに10年が経過している。そろそろ在宅の重症度区分を見直しする時期だろう。

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