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リハビリテーションと多職種配置


図表1 中医協総会資料 2025年11月14日

 75歳以上の後期高齢者の入院割合が急性期一般病床でも7割を占める時代だ。これから2040年へ向けて高齢者入院割合はますます増える。高齢者は一旦入院すると急速にADLと認知機能が低下する。そして退院調整に時間がかかり入院期間が延長する。

 こうしたなか急性期病棟でもリハビリスタッフの配置が欠かせない。今回は病棟におけるリハビリスタッフや管理栄養士などの多職種配置について見ていこう。この病棟における多職種配置は看護師のタスクシフトにとっても重要なポイントだ。

1 早期リハビリ

 脳卒中急性期リハビリの指針(2023年5月)によれば、急性期の脳卒中(主に脳梗塞)における離床の適切な時期は、現時点では発症後24~48時間からが妥当とされている。ただし、軽症脳卒中や非高齢の虚血性脳卒中などの患者であれば、発症後24時間以内に離床を開始してもよいとされている。ただ脳出血では脳梗塞よりも慎重な離床開始が望ましく、24時間以降48時間以内の離床が妥当だろうとする。

 一方、京都大学の音喜多智らが行った脳卒中の早期リハビリ介入を分析した研究(Satoshi Otokita et a.J Rehabil Med.2021 Jan 13;53(1):jrm00145)では、以下の知見が得られている。この研究では、脳卒中後にリハビリテーションを開始する時期と、その機能的予後の関係を検討した。全国規模の大規模データベースを用いて脳卒中患者を検索した結果、1,161の病院から合計140,655人の患者を抽出して行った。このデータベースで脳卒中後に入院当日または入院2日目にリハビリを開始した群と、3日目以降に開始した群とを比べたところ、入院後2日目から開始した早期介入群のほうが、退院時の機能的予後が良好であることが明らかとなった。

 しかし現行の早期リハビリ加算や初期加算では、リハビリを開始した時点から算定が行われているのみで、脳卒中発症日からのリハ開始までの日数については要件化されていない。このため現状では、発症日から3日以内にリハビリを開始されていない例、すなわち4日目から開始されている例が36%にも上っていた(図表1)。

 また入院日の曜日とリハビリ開始の関係をみると、入院後3日目からリハビリを開始した例では金曜日に入院した例が最も低かった。また土日祝日のリハ実施例は平日の半分以下であった。

 以上より現行の急性期リハビリ加算や、早期リハビリ加算に、例えば休日も含めて発症から3日以内にリハビリ介入を行うことを要件化することが必要なのではないのか。この要件化については、中医協では賛同が得られている。一方、休日リハビリを含めた早期リハビリの実施については、点数の引き上げが必要との注文も出ている。

2 疾患別リハビリ

 疾患に応じたリハビリには、以下の4種類が診療報酬で認められている。心大血管疾患リハビリ、脳血管疾患等リハビリ、廃用症候群リハビリ、運動器リハビリ、呼吸器リハビリ。このうち、運動器リハビリ、床上リハビリ、屋外リハビリ、退院時リハビリなどについて見ていこう。

(1)運動器リハビリ1日6単位上限

 回復期リハビリ病棟における運動器リハビリについては2024年改定で、1日6単位を超えたリハビリではADLの明らかな改善効果が認められなかった。これを踏まえて回復期リハビリ病棟の運動器リハビリでは、1日6単位が算定上限とされた。これにより、急性期一般病棟から回復期リハビリ病棟に転棟した場合は、6単位制限の適応となる。しかし転棟せずに一般急性期病棟で60日以降も入院を続けた場合は、これまで通り1日9単位のリハビリが実施されることになる。このように病棟によって上限単位数に不整合がでている。次回改定ではこの不整合を修正し、回復期リハ病棟以外の病棟でも6単位を上限とすることになるだろう(図表2)。

図表2

           中医協総会資料 2025年11月14日

(2)床上リハビリの効果

 入棟時のFIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価法)の運動項目が20点以下、要介護4,5の患者は寝たきりまたはそれに準じる状態である。この状態の患者に対していわゆる床上リハビリが実施されていることも多いと考えらえる。これらの患者における床上リハビリを1日3単位以上を実施しても、単位数増加にともなうFIM利得が得られなかった。すなわちADL改善が認められなかった(図表3)。次回改定ではこうした床上リハビリの算定制限などの見直しが行われるかもしれない。これに対して中医協では、診療側委員は「床上リハでADL改善が認められる患者もいる」ことからその見直しに反対している。一方、支払い側委員は算定要件の厳格化を望んでいる。

図表3

       中医協総会資料 2025年11月14日

(3)屋外リハビリ

 医療機関の外の屋外での疾患別リハビリは入院患者に対して1日に3単位に限り算定可能である。急性期病棟、回復期リハビリ病棟、地域包括ケア病棟に置いて、屋外リハビリが該当での疾患別リハビリを実施した患者のうち、3単位以上に当たる60分を越えて実施した奨励は45%にものぼった(図表4)。この屋外リハビリについては中医協では診療側、支払い側ともに現状を踏まえて、より長い院外リハビリの算定も行うべきと言う意見が多かった。

図表4

         中医協総会資料 2025年11月14日

(4)退院時リハビリ

 退院時リハビリとは、退院後の生活に必要な運動や生活上の注意点を指導し、再入院のリスクを減らすことを目的とするリハビリだ。対象は退院する患者さんやその家族で、指導内容は、体位変換、起き上がり・立ち上がり訓練、食事・排泄・生活動作の指導、家屋環境の調整、地域の在宅サービスの紹介などだ。退院時リハビリ指導料は退院日に1回のみ300点が算定可能だ。直近の10年間でこの指導料の算定回数は増えている。しかし算定しながら、実際にリハビリを実施していなかった割合が33%に及び、在院日数の短い患者に多かった。これが次回の改定で見直しの対象となっている。

(5)摂食機能療法

 摂食機能療法は、各種要因によって摂食嚥下障害を抱える人のための専門的なリハビリだ。発達遅延、下顎切除、舌切除、脳卒中の後遺症などの要因で摂食嚥下機能に障害を持つ患者に対して実施する。内視鏡嚥下機能検査(VE)又は嚥下造影検査(VF)によって他覚的に嚥下機能の低下が確認され、医学的に摂食機能リハビリが有効であると考えられる症例が適応となる。具体的には口や喉の筋肉の訓練(嚥下訓練)、姿勢の調整や食事環境の工夫、食形態の調整(ミキサー食、きざみ食など)、味覚刺激や呼吸・発声練習なども含まれる。実施にあたっては医師・歯科医師、言語聴覚士、看護師、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士、管理栄養士など、多職種チームで行う。

(6)リンパ浮腫複合的治療料

 リンパ浮腫複合的治療料の対象患者は以下のような患者だ。悪性腫瘍の手術でリンパ節郭清(切除)を受けた患者、特に鼠径部(そけいぶ)、骨盤部、腋窩部のリンパ節を切除した患者だ。今では珍しくなったが広範囲乳房切断で腋下リンパ節郭清を行った患者では、リンパ液還流が妨げられて、上肢がぱんぱんにはれ上がってしまう。。

また原発性リンパ浮腫の患者で、生まれつき、または原因不明でリンパの流れが悪くなっている患者、さらに国際リンパ学会(ISL)による病期分類のI期以降であることが必要条件だ。そして、II期以降の患者さんは「重症」として、より高い点数(200点)の対象になる。治療法としては弾性包帯や着衣による圧迫療法、圧迫下での運動療法、用手的リンパドレナージ、スキンケアや体重管理などのセルフケア指導などである。

 こうしたリンパ浮腫複合治療料を算定する施設は全国156施設あるが、その地域差がある。17施設もある東京から、全くない県が秋田県をはじめに7県もある。

 またリンパ浮腫複合的治療料1では1回40分、治療料2で1回20分を基準としている。しかし実際に施行している時間とは乖離があるようだ。たとえばマニュアル・リンパ・ドレナージ(MLD)は240分も実施に要している。次回の改定ではこうした乖離について適正化することが必要だ(図表5)。

図表5

          中医協総会資料 2025年11月14日

3 リハビリと多職種連携

 リハビリは多職種との連携が欠かせない。以下、リハビリにおける多職種連携についてみていこう。

(1)リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算

 リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は、2024年度の診療報酬改定で新設された加算で、その目的は急性期入院患者のADLの維持・向上と、早期離床・経口摂取の促進だ。急性期入院治療中にADLが低下し、退院後の生活に支障をきたすケースが多く、これを防ぐために導入された。

 同加算は、多職種連携による介入が重要で、医師、看護師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、管理栄養士、歯科医師などが連携し、患者の機能維持・回復を支援する。患者が入棟後48時間以内にADL・栄養・口腔状態を評価し、14日以内に多職種で計画を立てて介入を行う体制が求められる。

 この加算の導入によって期待される効果は以下の通りだ。ADLの低下防止と早期回復の促進 栄養状態や口腔機能が改善されることで、リハビリの効果が高まり、早期の自立支援が可能になる。そして誤嚥性肺炎や低栄養の予防、口腔ケアと嚥下機能の評価・訓練により、栄養摂取の質が向上し、合併症のリスクが低減する。QOL(生活の質)の向上 身体機能・栄養・口腔の三位一体のアプローチにより、患者の全身状態が改善し、退院後の生活の質が高まることが期待される。この加算の要件を図表6に示す。

図表6

             中医協総会資料 2025年11月14日

 この要件では、リハビリスタッフの配置基準が厳しい、休日リハビリの提供要件が厳しいとの声がある。一方、加算を算定している患者は、加算算定なしの患者より、リハビリ実施率が高く、入院3日目までにリハビリが実施された患者割合が9割となっていた。また加算算定ありの患者の1日平均リハビリ単位数は算定なしの患者に比べて多く、休日リハビリの割合は平日の86.5%と、算定なしの患者の34.1%より多かった。また加算の届け出施設では、ADLが低下した患者の割合は3%未満であるが、加算を算定していない施設においてはADL低下の割合は4%以上5%未満に緩やかなピークが見られた(図表7)。

図7

        中医協総会資料 2025年11月14日

 また入院初日に禁食だった誤嚥性肺炎患者が入院3日目に食事をとっている割合は、体制加算算定有で48.4%、算定名地で39.4%、入院7日目では算定ありで73.6%、算定なしで65.9%であり、いずれの時点も算定ありの方が高かった。

 図表8

         中医協総会資料 2025年11月14日

 また加算の有無と低栄養に関する関係では、加算算定ありの患者の方が、低栄養の入力割合と入院栄養食事指導料の算定患者割合が高かった。また加算算定ありの患者の方が、入院時の低栄養の割合が高かった。このように加算は患者栄養状態への関心の高まりと低栄養への介入が高まることが分かっている。

 こうした効果から、中医協では前述したように、同加算におけるリハビリスタッフの配置基準が厳しいこと、休日リハビリの提供要件が厳しいので緩和を求める声が診療側委員からあがった。しかし一方、支払い側委員からは、人員配置基準の緩和は慎重にすべきなどの意見も挙がっている。こうした人員配置基準についてどのように結論が出るのかについては、今後とも注視が必要だ。

(2)病棟へのリハビリスタッフの配置

 各病棟の入院料で、専従のリハビリスタッフの配置を規定しているのは、地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリ病棟においてのみだ。同時に、疾病別リハビリを担当する専従者との兼務はできないとされている。しかし専従のリハビリスタッフが病棟において疾病別リハビリと別に行う業務については、地域包括医療病棟以外では明記されていない。

 たとえば病棟専従のリハビリスタッフは、疾病別リハビリのほか、病棟内の各場面に応じた短時間のADLや生活機能の維持・向上等を目的とした指導や、看護職員の業務としても実施される体重測定や環境調整といった業務を、行っている場合もある。たとえば活動の提案、ポジショニング、離床での体重測定、環境調整、入浴方法の検討・指導、自主練習の個別指導など(図表9)。これらのリハビリの1単位20分に満たない活動の対応が病棟における看護業務のタスクシフトを支えている一面もある。こうしたリハスタッフによる短時間のポイント・オブ・ケア(POC)の評価すべきではないのか?

図表9

       中医協総会資料 2025年11月14日

(3)病棟における多職種配置

 2025年の厚生労働科学研究で「効率的な看護業務推進の評価に係る実態把握のための研究」(研究代表者坂本すが)では、病棟における多職種配置の実態とメリットについて研究が行われている。

 この研究ではリハビリスタッフの病棟配置で、ADL、摂食・嚥下状態のスクリーニングや評価、計画作成、生活機能の回復支援(排泄、食事、離床)、食事介助、口腔ケアについて、リハビリスタッフが専門的な立場から貢献している現状が明らかにされている。

 同時に管理栄養士も栄養状態のスクリーニングや評価、計画作成、食形態や経腸栄養剤の検討、ミールラウンドや食事変更の調整、栄養指導や食事形態に関する相談対応で栄養改善への取り組みに貢献していることが明らかにされている(図表10)。このほか薬剤師、臨床検査技師の配置についてもそのメリットが指摘されている。

図表10

       中医協総会資料 2025年11月14日

 以上、リハビリや栄養などの病棟業務の多職種配置について振り返ってみてきた。冒頭にも述べたようにこれから2040年に向けて、急性期病棟でも後期高齢者が占める割合が70%以上となるのは目に見えている。このため急性期病棟においても多職種配置がまったなしだ。特にリハビリスタッフ、管理栄養士の病棟配置について次回改定で改めて考えてみるべきだろう。

参考文献

厚労省 中医協総会資料 2025年11月14日