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OTC類似薬と保険給付見直し


図表1 成瀬道紀 OTC 類似薬はOTC 医薬品に区分を J R Iレビュー 2024 Vol.8, No.119

 2025年12月19日、OTC類似薬の自己負担額、対象薬剤の範囲、配慮すべき対象患者が厚労省より発表された。これを機会に改めてOTC類似薬とは何か、その保険給付見直しの対象とされたOTC類似薬77成分について振り返ってみよう。

1 OTC類似薬とは

(1)OTC類似薬の経緯

 OTC類似薬とは何だろう。OTC類似薬とは「一般用医薬品(OTC医薬品)と同じ有効成分を含み、用法・用量や効能・効果が類似している医療用医薬品」のことだ。

 OTC類似薬の歴史は、1971年の薬事法施行規則改正で医薬品が医療用と一般用に分けられた時から始まる。このときすでに医療用と同じ有効成分を含む一般用医薬品があった。例えば抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン)や鎮痛薬(アスピリン)などは、医療用と一般用の両方がすでに存在していた。これらの医薬品は長年の使用実績と安全性があるため、一般用としても医療用としても認められていた。そして1983年ころからはスイッチOTCのように医療用から転用された一般用医薬品もOTC類似薬に加わる。

 そもそも企業が開発した医薬品を医療用医薬品で申請するか、一般用医薬品で申請するかはその経営判断に任されている。こうしてOTC類似薬が世にあふれている。たとえば処方薬のPL顆粒にはOTCのパイロンPL顆粒がある。同様に処方薬のロキソプロフェンナトリウム60㎎にはOTCのロキソニンSがある。処方薬のケトプロフェンパップ60㎎にはケトプロフェンパップがあるように市販薬でもあり処方薬でもあるというOTC医薬品がドラッグストアの陳列棚にあふれている。

(2)OTC類似薬の現状

 ここからはOTC類似薬の現状について、日本総研調査部の成瀬道紀氏の資料より見ていこう。現状では、医薬品は処方せんが必須の医療用医薬品、OTC類似薬、処方せん不要のOTC医薬品の3類型がある。それぞれの品目数は処方せん医薬品が1万3千品目、OTC類似薬は7千品目、OTC医薬品は1万3千品目もある。

 処方せん医薬品か否かは投与経路、有効成分、効能で決まる。抗がん剤、抗菌剤、向精神薬、生活習慣病治療薬、さらに輸液剤は処方せん医薬品となっている。一方OTC医薬品かOTC類似薬かの区分については、前述のように企業申請に基づいて審査される。企業としても保険適応の処方せん医薬品で申請するのか、OTC医薬品で申請するのかは企業の経営戦略に基づいて決めている。

 また処方せん医薬品とOTC医薬品の間の出入りも多い。漢方は長らく一般用医薬品だったが、1978年に保険適応になった。一方、スイッチOTCのように、長らく処方せん医薬品であった医薬品が、同じ成分のままOTC医薬品に転換する場合もある。現在スイッチOTCは93成分で、これからもスイッチOTCはその数を増やしていくだろう。

 また最近では発毛効果のある「ミノキシジル」、内臓脂肪減少薬「アライ」のように企業はあえて処方せん医薬品では申請せず、最初からOTC医薬品として申請するダイレクトOTCもある。

(3)OTC類似薬の市場規模と価格

 OTC類似薬の市場規模はどれくらいだろうか?先の成瀬氏によれば2021年度でおよそ1兆円という。1兆円の内訳でトップファイブは漢方・生薬、消化器官用薬、外皮用薬、アレルギー薬、血液・体液用薬でおよそ6割を占めている。

 OTC類似薬とOTC医薬品の価格差はどうだろう。同一成分ごとにOTC類似薬の3割自己負担額とOTC医薬品の薬剤費を価格比較すると、図表2のようだ。花粉症薬、湿布薬、総合感冒薬、解熱鎮痛剤で、OTC医薬品の薬剤費は処方箋医薬品の3割負担の20~36倍の価格差があり、圧倒的にOTC医薬品の薬剤費のほうが高い。

図表2

       社会保障審議会医療保険部会 2023年11月9日

2 OTC類似薬の保険外し

 2025年3月、自民党、公明党と日本維新の会は社会保険料の改革に関する協議の初会合を開催した。OTC類似薬の保険給付のあり方などを検討するという。日本維新の会の猪瀬直樹議員は2025年3月6日の参院予算員会で「OTC類似薬で1兆円は(医療費を)削れる」と打ち上げた。

 そして2025年6月11日、自民党、公明党、日本維新の会は以下のように合意した。「OTC類似薬の保険給付の在り方の見直しについては、医療の質やアクセスの確保、患者の利便性に配慮しつつ、医療保険制度の持続可能性確保を目指すことを基本とし、2025年末までに予算平成過程で十分な検討を行い早期に実現が可能なもについて、2026年度から実行する」。

 そして2025年10月20日の自民党、日本維新の会の連立政権の樹立に至って、OTC類似薬を含む薬剤の自己負担の見直しが連立政権の社会保障制度改革のトップ項目に位置づけられた。

 これに対して、日本医師会は大反対だ。宮川政昭常任理事は「(保険外しを行えば)医療機関の受診控えによる健康被害が起きる。現役世代を含めた『経済的負担の増加』につながる。政策として容認できない」と強調した。

3 OTC類似薬の保険給付見直し

 さて財政制度審議会もOTC類似薬の保険給付についてすでに議論をしている。財政制度審議会の基本スタンスは重篤な疾病リスクに対しては保険給付で、一方、軽症リスクについてはセルフメディケーションとしている。海外を見れば、イギリスでは軽症の患者に対する処方せん医薬品の交付を減らし、OTC医薬品の購入を促すためのガイダンスを発行している。またフランスのように薬剤の種類に応じた患者負担の割合を変えている国もある。たとえばフランスでは抗がん剤には負担ゼロであるが、軽度な疾患については85%の自己負担を課している。

 これにならい、我が国でもOTC類似薬の保険給付の見直しをこれまで行ってきている。例えば2012年には単なる栄養補給目的のビタミン剤の投与を保険給付から外した。2014年にはイソジンガーグルのようなうがい薬での単体の処方を外した。2016年には湿布薬を1処方で70枚に制限した。最近ではこの処方上限が63枚に減らされた。2018年にはヒルドイドのような皮膚保湿剤の処方も外された。しかしアトピー性皮膚炎などの治療目的には処方せん医薬品として処方できる。

 また社会保障審議会医療保険部会では2023年9月にOTC類似薬の保険給付の在り方の見通しとして、OTC類似薬は保険給付からの除外や、償還率の変更、定額負担の導入など保険給付の在り方を示している(図表3)。

図表3

          社会保障審議会医療保険部会 2023年9月29日

4 社会保障審議会医療保険部会での検討

 さて前述の自民党、日本維新の会のOTC類似薬の保険給付見直しの提言を受けて、社会保障審議会医療保険部会(以下、部会)でも2025年11月より検討が始まった。論点は以下の3つである。論点①は費用負担の在り方、論点②は配慮が必要な者の範囲、論点③はOTC類似薬の範囲である。この論点に関する部会委員の意見を以下に見ていこう。

論点①費用負担の在り方

 「OTC医薬品に変更した場合、患者の自己負担がかなり増える」、「保険の枠内に置きつつも保険外併用療養の形で別途負担を求める仕組みも考えられる」、「選定療養で追加の自己負担を求める方法、償還率を変える方法もある」、「OTC医薬品を保険適応とした上で患者の負担を変更すると言うやり方が弊害が少ないのでは?」。

論点②配慮の必要な者の範囲

 「こどもや慢性疾患を抱えている方、低所得の方については配慮が必要だ」、「一般用医薬品では医療用医薬品の10倍以上の価格になることもあり、難病の方や心身障碍者の方などの負担が非常に重くなる」。

論点③OTC類似薬の範囲

「成分が一致していても、用法・用量、効果・効能、対象年齢、投与経路、剤型など様々な違いがあり、単純に保険適用から外すことは難しい」、「用法・用量、効果・効能等の違いを踏まえつつ、OTCで代替可能なものはできるだけ広い範囲を対象としてはどうか?」

以上の部会意見を踏まえて、2025年12月19日に自民、維新の政調会長間協議で以下のような見直し内容で合意がなされた。

「長期収載品で求めているような別途の保険外負担(特別の料金)を求める新たな負担当を2026年度中に創設」(これには健康保険法の改正が必要)、「特別料金の対象の範囲となる医薬品は77成分(1100品目)とする。これはOTC医薬品と成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品を機械的に選択」、「特別の料金は対象薬剤の薬剤費の4分の1とする」、「配慮が必要な患者はこども、がん患者、難病患者などの慢性疾患を抱えている方、低所得、入院患者、医師が対象医薬品の長期使用が医療上必要と認める患者」。

 こうして成分数77、品目数約1,100の特別料金の対象となる医薬品のリストが社会保障審議会医療保険部会で2025年12月25日に公表された。主な対応症状は、鼻炎(内服・点鼻)、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状全般、腰痛・肩こり(外用)、みずむし、殺菌・消毒、おでき・ふきでもの、皮膚のかゆみ・乾燥肌等(図表4)。

図表4

       社会保障審議会医療保険部会 2025年12月25日

5 食品類似医薬品の保険給付見直し

 上記のようなOTC類似薬の審議と並行して、2025年12月12日の中医協で、食品類似薬の適正化の視点が厚労省より提供された。

 食品類似医薬品とは食品と似たような成分をもつ医療用医薬品を指す。たとえばエンシュア・リキッドやラコールなどは医薬品扱いだ。一方、メイバランスなどは食品扱いだ。両者は成分やカロリー数もよく似ている(図表5)。

図表5

           中医協 2025年12月12日

 これまで、この医薬品であるエンシュア・リキッドと食品であるメイバランスはどのように現場では使い分けられていただろう?一般に入院で経管栄養になった患者や低栄養の患者は入院中にはメイバランスを用いる。しかしこうした患者は退院して自宅に帰るとエンシュアに切り替わる。このようにメイバランスからエンシュアに切り替える理由は以下だ。

 メイバランスは「特別用途食品」で、入院中はDPC包括払いに含まれて提供されることが多い。しかし外来や在宅ではメイバランスは原則として食品であるので保険適用外となる。つまり、患者が全額自己負担になることが多い。一方、エンシュアは医療用医薬品だから、外来や在宅でも保険適用が可能、医師が必要と判断すれば、処方箋で出せて、患者は1〜3割の自己負担で済む。

 実際にメイバランスを外来で自費購入すると、1本あたり400〜500円。1日2本で月に約2万5千円〜3万円の出費になる。ところがエンシュアなら保険適用で、同じ量でも患者の自己負担は数千円程度に抑えられる。これは大きな差だ。

 この関係は前述のOTC類似薬とOTCの関係によく似ている。OTC類似薬は医師の処方せんで出せるので、1~3割の自己負担ですむ。ところがOTC医薬品は自費払いなので、同じ有効成分でもOTC医薬品の方が圧倒的に高くなる。これと同様、エンシュア・リキッドは食品類似医薬品でOTC類似薬と同じだ。一方メイバランスは食品で外来では自費払いだ。国は2026年の診療報酬改定で、エンシュア・リキッドのような食品で代替することが可能な食品類似医薬品は、保険給付範囲を厳格化して、できるだけ保険適用からはずし食品であるメイバランスを使うことを勧めている。

 このため、次回報酬改定ではエンシュアの保険適応が長期にわたる経管栄養や外科手術後に限定されて、栄養補助食品としてエンシュアを処方することができなくなりそうだ。

 実際に著者の外来でもエンシュアを処方で出している高齢者が何人かいる。いつも外来にやってくる一人暮らしのお年寄りは、かならず外来の終わりに「エンシュアを出してくださいね」と念押しまでされる。

 こうしたお年寄りには来年6月からは、「すみませんがメイバランスを買ってくださいね」と言わなければならないのだろうか?メイバランスは1本当たり400~450円、60本分の総額だと、2万4千円から2万7千円もする。とても年金暮らしの高齢者に、メイバランスの購入をお願いするのは気が引ける。OTC医薬品と同様、医師が必要と認める場合はエンシュアを処方することを認めるようにしてはどうだろう?

 以上、OTC類似薬の経緯とOTC医薬品の給付見直し、そして食品類似医薬品の保険給付の厳格化を見てきた。セルフメデイケーションの流れや医薬品から食品への流れのなかでこれまでの医薬品の保険給付の範囲がますます狭まることは確実だろう。

参考文献

成瀬道紀 OTC 類似薬はOTC 医薬品に区分を J R Iレビュー 2024 Vol.8, No.119

厚労省社会保障審議会医療保険部会 2023年11月9日

厚労省社会保障審議会医療保険部会 2023年9月29日

厚労省社会保障審議会医療保険部会 2025年12月25日

厚労省中医協総会 2025年12月12日