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レナードの朝


 

「レナードの朝」のレナード(ロバート・デニーロ)とセイヤー医師(ロビン・ウイリアムス) 

 1990年度のアカデミー作品賞の候補にもなった名作「レナードの朝」を久しぶりにビデオで見て、驚いた。映画のストーリーは神経内科医オリバー・サックスの原作を脚色したもだ。主人公の医師セイヤー(ロビン・ウイリアムス)は引っ込み思案の精神科医。そんな彼がひょんなことから精神科の病院に勤めることになり、30年間眠ったままのような状態の患者レナード(ロバート・デニーロ)に出会う。
 セイヤー医師は緻密な臨床観察からレナードや同じ症状の患者が単なる精神障害ではなく、脳炎の後遺症による重症のパーキンソン病であることに気が付く。そこで当時開発されたばかりのパーキンソンの特効薬「l-dopa」 (エル・ドーパ)をレナードに投与した。すぐには変化は起きなかったが、数日後の夜、レナードが窓辺で月を眺めて立っているのを発見する。彼はセイヤー医師に言いう。「今、目覚めたよ」。

 驚いたのは映画にでてくる精神科病院だ。「どこかで見たことがある」とふと気づいた。気づいたのは精神科病院の床の白黒の格子模様のタイルだ。「あれっ!これってニューヨークのブルックリンにあるキングスボロー精神科センターでは?」と思った。

 あわててネットで映画の撮影現場を調べてみると、まさしくその通り。撮影年は1990年で、場所もどんぴしゃりだった。

 著者は1988年、89年ごろブルックリンの大学にファミリープラクテイス(家庭医療)で留学していた。そのころローテーションで1か月ほど通ったのがキングスボロー精神科センターだった。そこがレナードの朝の撮影現場だった。そう思って映画を見直すと当時の雰囲気がありありとよみがえってきた。

 さて衣笠病院の外来でパーキンソンの患者さんを診ている。最初に使うのがやはりL-Dopaだ。次第に用量を増やしていくと、患者さんの体の動きがだんだん良くなる。患者さんに聞くと。「す~と立ち上がれるようになった。動き出しがスムーズになった」と言う。たしかに「レナードの朝」ほど劇的ではないが、目に見えて動きがよくなることが判る。

 「レナードの朝」では薬が劇的効果をもたらし、患者たちの人生が動きだす。家族と外出し、ダンスホールで踊ったりもできるようになる。しかし、彼らにとっては思いもしない副作用と効果の限界がその後現れてくる。

 L-Dopa処方するたびに、「レナードの朝」のキングスボロー精神科センター思い出す。

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