
図 中医協総会 2025年3月12日
2025年がついに来た。2025年は著者もその一員である団塊の世代800万人がそろって75歳以上の後期高齢者となる年だ。そしてこれから団塊の世代の大死亡時代がスタートする。2030年から2050年の20年間は毎年160万人近くが亡くなっていく。
問題は死に場所だ。かつて日本では8割以上が病院で亡くなっていた。しかしこれからは病床が減って行き、看取りの場も病院から在宅へと移行が進んでいる。しかし「在宅看取り」をといっても、もはや65歳以上の単身世帯が3割、老老世帯が3割を占める状態だ。とても在宅ですべてを看取ることはムリだ。いよいよ行き場のない団塊世代の看取り難民が街にあふれる時代の到来だ。
そんな中、ホスピス型住宅が都市部を中心に急増している。ホスピス型住宅は住宅型の老人ホームの一種だが、医療ニーズの高い方や看取りに特化した住宅型の老人ホームだ。居住面積は狭いが、家賃も13万円程度で手ごろに抑えられている。その約半数に訪問看護ステーションが併設あるいは近接していて訪問看護サービスが行き届いている。ホスピス型住宅は、基本は住宅なので病院内のホスピスより日常生活の自由度もある。わがままな団塊世代にはうってつけだ。
ホスピス型住宅の収益構造は、家賃、医療保険や介護保険収入で、特に医療保険の収益が大きい。なぜなら看取り期には医療処置が増え、訪問看護師の訪問頻度が増え、複数看護師による訪問も必要になることで、高額の医療費が発生するからだ。患者負担は高額療養費制度で抑えらるが、ホスピス型住宅を運営する会社にとっては収益性が高いビジネスモデルと言ってよい。
しかし国としては医療費負担が大きくなる。これが最近の中医協総会でも問題となっている。2023年のデータによると、訪問看護ステーションの訪問頻度は、月間5日~9日が最も多い。しかし月間25日以上、頻回訪問している訪問看護ステーションもある。これらの訪問看護ステーションでは、年間医療費が2.5億円を超えるステーションが35%にも達していた(図表)。これらのすべてがホスピス型住宅に併設/近接した訪問看護ステーションとは言えないが、頻回訪問による医療費高騰化が課題となっていることは確かだ。
さて来年2026年は診療報酬改定年、このホスピス型住宅がやり玉にあがるかもしれない。しかし団塊世代としては、ホスピス型住宅はなんとしてでも守らなくてはならない看取りの場だ。それにはどうしたらいいだろう?考えられるのは現行の訪問看護に関する重症度規定を見直したうえで包括支払いにすることだ。
著者も横須賀市にある衣笠病院グループで訪問診療の手伝いをしたことがある。実際に現場に出て見ると、在宅の患者の重症度は様々だ。比較的安定している軽症の患者から、がんの末期のように重症の患者までその重症度には大きな開きある。
こうした在宅患者の重症度については2015年ごろにその見直しを行った。重症度分類に用いたのは、厚労省が定める別表7と別表8である。別表7はがん末期やパーキンソン病などの疾病リスト、別表8は留置カテーテルや在宅人工呼吸器などの処置リストである。この疾病と処置リストに該当する患者を重症とした。そして個人の居宅に訪問するのか老人ホームのような施設に訪問するの2区分で分けている。つまり重症度の2区分と訪問先の2区分の2×2の4つのマトリックス区分だ。しかしいささか重症度分類としては大雑把な分類だ。
これに対して病院の慢性患者を入院させる療養病床における重症度分類はより精緻だ。具体的には疾病リストと処置リストを組み合わせて3区分に分けている。具体的には重症の医療区分3から中等症の医療区分2、軽症の医療区分1だ。さらにこれに日常生活動作(ADL)の区分を3つに分けて、重症をADL区分1、中等症のADL区分2、軽症のADL区分1の3区分に分けている。この3つの医療区分と3つのADL区分を掛け合わせて3×3の9区分のマトリックスで重症度を判定している。そしてこの9区分に応じて包括払いの診療報酬を決めている。このため病院では何回、看護師が病室を訪問しようと一定の包括払いだ。
以上の例に倣って在宅医療においても重症度区分を見直したうえで包括支払いとしてはどうだろうか?見直しのポイントは以下の4つだ。①疾患リスト、②処置リスト、③訪問場所だ。従来の疾患リスト、処置リストの組み合わせを2区分から療養病床の医療区分なみの重症、中等症、軽症の3区分にしてはどうだろう。これに療養の場所の自宅と施設の2区分を掛け合わせて3×2で6区分で包括払いとしてはどうだろう?
いま2040年を目指した医療提供体制のグランドデザインである新たな地域医療構想が議論されている。新たな地域医療構想では従来の入院医療の地域医療構想だけでなく、外来医療、在宅医療もその射程を広げている。この地域医療構想において、国は療養病床の軽症の医療区分1の7割の患者の在宅へ移行を想定している。こうしたことからも入院と在宅を連続的につなぐ重症度区分の見直しが必要だ。
2015年の在宅医療の重症度区分の見直しからすでに10年が経過している。そろそろ在宅の重症度区分を入院医療の重症度区分を参考に見直しする時期だろう。入院・外来を一気通貫する重症度区分にしてはどうか?
この新たな重症度区分と包括払いをホスピス型住宅にも適応しよう。新たな重症度区分の中で、新たな在宅カテゴリーとしてホスピス型住宅を位置付けよう。
