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コミュニティホスピタル


 全国8200病院の中の7割を占める200床以下の中小病院である。今、この中小病院の経営改善がまったなしだ。これらの病院が目指すのは、地域におけるかかりつけ医機能を果たす地域病院だ。そうした病院を「コミュニティホスピタル」と呼びたい。コミュニティホスピタルは地域に密着し、地域と共に歩む病院だ。そこでは総合診療医の活躍が期待されている。

 著者が代表理事を務めている一般社団法人コミュニティ&コミュニティホスピタル協会(C&CH)では、コミュニティホスピタルを以下のように定義している。「コミュニティホスピタルとは、総合診療を軸に超急性期以外のすべての医療、リハビリ、栄養管理、介護などのケアをワンストップで提供する病院」のことだ。このコミュニティホスピタルのキーワードは「総合診療医」だ。

 コミュニティホスピタルには総合診療医が不可欠だ。高齢化が進み、複数疾患を抱える患者が増えた。また医療ばかりでなく介護を必要とする患者も増えた。そして認知症も激増している。

 こうした患者が抱えるさまざまな課題の解決に地域の中で立ち向かうのが総合診療医である。2018年4月の新専門医制度のスタートに伴い、19番目の基本領域に総合診療専門医が位置付けられた。ただその専門医としての総合診療医の具体的な姿がまだ不鮮明なこともあり遅々としてその普及が進まない。総合診療を専攻医として選ぶ医師の数は2020年は191人だったが、2023年には285人と次第に増加している。

 さてC&CH協会は、こうしたコミュニティホスピタルとそこで活躍する総合診療医を応援することを目的に2022年に作られた。すでにいくつかの地域では、C&CH協会のお手伝いで、コミュニティホスピタルが立ち上がり、地域住民が安心して、自分らしく生活していける環境を作り上げる事例も生まれている。たとえば東京都台東区にある同善病院(45床)は、回復期リハと機能強化型在宅療養支援病院の機能を持つ病院で、クリニックも併設している。しかし一時期、医師やスタッフの人材確保が安定しない時期があり、提供できる医療が地域ニーズから乖離し、経営も悪化したことがあった。こうしたなか2013年より経営体制を一新した。リハビリ機能を再強化し、クリニックについても総合診療医を院長に迎え入れ、地域ニーズに応えられるようにした。そして2022年4月に在宅医療の経験のある総合診療医3名を迎え、さらに地域貢献の一環として「あおぞらカフェ」も開設して地域住民に密着したコミュニティホスピタルとなった。

 以上、総合診療医の活躍ぶりについて見てきた。しかし総合診療医はまだまだその数が足りない。それには中小病院に総合診療医や総合診療の専攻医を派遣したり、総合診療医で病院経営の改善をお手伝いする仕組みが必要だ。C&CH協会はこうした仕組み作りのお手伝いをするために2022年に発足した。総合診療による病院経営改善にご関心のある方はぜひC&CH協会のホームページhttps://cch-a.jp)を訪ねて欲しい。

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