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コリント人への手紙


 「私は知恵ある者の知恵を滅ぼし、賢い者の賢さを意味のないもにする」。これは昨日の衣笠病院のチャペルでの聖句だ。ミッション局の佐野さんが引用した。この聖句は『コリント人への手紙 第一』第1章18-19節に記されている。

 始めて聞くとちょっとビックリするような聖句だ。まるでドナルド・トランプが放った言葉のようだ。

 しかしこの聖句の背景は以下だ。コリント人への手紙は使徒パウロコリント教会に宛てて書いたものだ。当時、コリントはギリシャのペロポネソス地方に位置し、交通や交易の要衝として紀元前9世紀に繁栄していた。コリントは古代ギリシャからローマ時代にかけて重要な都市国家(ポリス)としても知られていた。

 このためコリントでは多様な思想や文化が入り混じる都市だった。ギリシャ哲学が重んじる「知恵」と、ユダヤ教が求める神の奇跡や預言が対立していた時代だ。今にもコリント教会が分裂しそうになった時、パウロは十字架の福音がそれらを超越する存在であると述べたのだ。

 この言葉は、神の力が人間の知恵や賢さを凌駕するということを示している。つまり、神の救いの計画はしばしば人間の理解を超えるものであり、人間が自らの知恵に頼ろうとすると、その限界が露わになる。これによって、真の救いは人間の知恵ではなく、神への信仰によってのみ与えられるという考えだ。

 この教えは、神の前にいかなるものも平等であり、謙虚であることの大切さを語っている。これにより、コリント教会は分裂の危機を脱し、信仰の一致が促された。パウロの言葉がその重要なきっかけとなった。

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