エッセーの投稿

シャーロック・ホームズ


 推理小説が大好きだ。とくにシャーロック・ホームズのファンだ。ロンドンのリージェント公園の近くのベーカー街を訪ねたこともある。ホームズの生みの親のアーサー・コナン・ドイルは1859年イギリス生まれの開業医だ。ただ開業医としての仕事ははかばかしくなく、生活のために筆をとり、名探偵シャーロック・ホームズで大ヒットし、推理小説作家として成功する。

 アーサー・コナン・ドイルは医者だったこともあり、ホームズの犯人捜しの推理ロジックは診察のロジックとそっくりだ。診察は問診、視診、聴診、打診、触診などのステップを踏んで診断に至る。場合によっては臭診や舌診というのもある。一度、大先輩の医師から舌診の武勇伝を聞いたことがある。意識のない糖尿病の患者の家に往診に行って、高血糖性昏睡か低血糖性昏睡かの診断に迷ったという。それを見分けるのに、大先輩の医師は患者の尿を舌診したというのだ。今だったら尿テステープで尿糖の有無を見分けるのだが、当時はそんな便利な検査キットがなかった。このため自らの舌で患者の尿をなめたのだ。その味は甘かったので高血糖性昏睡と診断したという。

 ホームズも同様に五感を駆使して犯人捜しを行う。しかし医者が診察で一番時間とエネルギーを掛けるのが問診だ。おそらく診断に導く情報の7割が問診から得られる情報だ。ホームズも依頼者の話を丁寧に聞き、仮設を立て推理をする。これなどまさに医者が病気の原因捜しを行う臨床推論のプロセスと同じだ。

 最近ではこうした臨床推論にもチャットGPTが役立つ。先日外来で、30代の女性で「氷をばりばり食べる」という患者さんを診た。これをチャットGPTで入力したところ、なんとちゃんと「鉄欠乏性貧血」という答えが返ってきた。氷食症といって鉄欠乏性貧血に特徴的な症状だ。貧血が治ると氷食症もおさまる。チャットGPTもホームズ並だということが分かった。