
全身性エリテマトーデス( Systemic Lupus Erythematosus :SLE)は、膠原病の一種で女性に多い。その症状で有名なのが顔に現れる蝶形紅斑だ。顔に蝶のように広がる紅斑だ。
しかしその病名にはLupus(ループス)が出てくる。ループスはオオカミのラテン語だ。その紅斑が狼の噛み跡に似ているからといわれる。でもどうみても蝶形紅斑が狼の噛み跡には見えない。実際に狼の噛み跡を見たことがないので何とも言えないが・・
しかしふと気が付いた。今日、われわれが見ているのは極めて初期症状なのではないのだろうか?治療法が進んだ今日、初期的な症状にしかお目にかかれないのではないだろうか?
しかし先人たちは、SLEの進行した病変を見ていたはずだ。SLEの皮膚病変が進行すると、潰瘍化し、まさに狼に食いちぎられた跡のような様相を示していたに違いない。そうした進行したSLEの病状を今日は目にすることがなくなった。このため症状と病名との間にギャップが生じているのだ。
この状況は「がん」にも当てはまる。がん(癌)はラテン語ではCancer(カニ)と言う。英語でもCancerという。この名はもともと進行乳がんの形からつけられた。乳がんが進行して周囲の皮膚に浸潤してカニが足を延ばしたような形になることから名づけられた。一方、日本語の癌はもともと岩のことで、これも進行乳がんの形状から名づけられた。
現在、もっぱら初期の乳がんしか見たことのない我々にはとてもがんのCancerのイメージがつかない。
このように病名は治療法もない時代に、きわめて進行した病態を見て名づけられたのだ。このため今ではちょっと想像できない名前になっているのだ。
現代人がSLEにどうして狼の噛み跡がでてくるが分からないのも仕方ないことだ。
