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増えすぎた7対1


   厚労省 中医協総会 2025年8月6日

 看護配置7対1入院基本料(7対1)は2006年の診療報酬で新設された。患者7人に対して看護師1名という最も看護師配置数の手厚い病院の入院基本料を大幅に引き上げた。

 2006年の7対1導入当初、厚労省は7対1病床は2万床程度に留まると想定していた。当時の厚労省の医療課長は「看護師を7対1まで集められる病院は少ない。そのため7対1をとるため逆に病床数を減らす病院も出てくるだろう」と言っていたくらいだ。

 ところが実際には思惑とは全く逆方向に走り出す。なんと東大病院の病院長までが地方に看護師募集に走り回って、看護師をかき集めて7対1を達成してしまったのだ。このため7対1は2014年のピーク時には38万床にまで増えてしまう。正直、38万床まで増えるとは誰も思っていなかった。

 7対1は急性期の患者治療のための「急性期病床」だ。しかし看護師の頭数をそろえれば高額の入院基本料が取れる仕組みだったため、収益目的で急性期医療を提供してないない病院までもが7対1を取得した。このため地方では看護師不足が深刻化するなど、思わぬ副作用まで起きた。

 このため厚労省は大慌てで2008年に7対1の要件に入院患者の今で言う「重症度、医療・看護必要度」を導入して、ブレーキを掛けようとした。急性期の重症の患者を一定数受け入れている病院に7対1入院基本料を与えると言う要件を課した。ところが当初はこの重症度、医療・看護必要度のブレーキが甘すぎて、7対1病床の増加に歯止めがかからなかった。

 このため厚労省は診療報酬改定毎に重症度、医療・看護必要度の要件を厳格化する。これにより、ようやく7対1の病床の伸びが減速しはじめ、ピークアウトしたのが2014年だった。その後ピーク時の38万床から5万床減って33万床にまでに減ったのが2024年だ。5万床減らすのに10年もかかった。

 すでに若年人口が減少して、急性期病床のニーズが減っている。このため過剰な急性期病床を減らし高齢者向けの病床転換を目指す必要があるのに、この7対1病床がいまだに足を引っ張っている。看護師数だけに着目して行った7対1入院基本料の設定は典型的な政策の失敗例だろう。

 今から言っても遅すぎるが、当初から10対1入院基本料を基本として、あとは平均在院日数や重症度、医療・看護必要度、在宅復帰率などのアウトカム指標を病棟単位で設定し、その達成にむけて各病院が看護師数を加配する方式でスタートすればよかったのだろう。

 新たな政策をスタートする時点で考えるべきことは、列車が暴走したときに安全に止まることができる自動ブレーキのメカニズムをあらかじめ仕込んでおくことが必要だ。

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