
福岡資麿厚生労働相(2025年4月22日)
厚生労働省は2025年4月11日、病床の削減を行う医療機関を対象とした補助金である「病床数適正化支援事業(予算額約428億円)」の第1次内示の配分額を通知した。配分額は約294億円、対象病床数は7170床である。
この事業への申請数は約200の公立病院などから8000床、約1800の民間病院などから4万6000床、合計5万4000床もの応募があったという。厚労省はまず第1弾として、全国で7170床の削減分として294億2568万円の補助金の配分を通知した。
この応募数は予想外に多かった。今後、これらの応募した5万4000床がすべて減ったとしたら、なんと2022年現在120万床の病床は一挙に115万床弱にまで減る。これは地域医療構想で試算した2025年に119万床の病床減ラインを軽くクリアする数字だ。
この応募数の多さは、昨今のインフレによる病院経営の危機が背景にある。物価高、人件費高のなかで診療報酬だけではとても経営が成り立たない。このため6割近い病院が赤い字になっている。このため1床400万円で病床を売ってまで、経営の足しとする算段だ。まるで戦後の衣服や家財を売って生活費にあてるタケノコ生活のような状態だ。ちなみにタケノコ生活とはタケノコの皮を一枚づつ売っては食いつなぐところから来た。
これを見て、逆に背に腹は代えられないという病院の窮状がひしひしと伝わってくる。たしかに日本の病床は過剰だったとは言える。過剰の理由は二つある。一つは1973年の老人医療費無料化で30万床の老人病院が増えた。さらに1986年の医療計画スタート前にかけこみ増床が20万床もあって合計50万床も過剰になった。こうした高度経済成長期の過剰な病床を減らす「減反政策」が、ここにきて一挙に進むことになった。
しかしベッドが減れば、売り上げは当然減る。このために残された病床に減ベッドで浮いた人員を集めて、1床当たりの職員密度を上げて、さらなる生産性を向上させなければならない。これで患者単価を上げて、売り上げの反転攻勢に転じればよい。しかしそう簡単に話は進まないだろう。インフレはしばらく続く。インフレとの競争にどこまで耐えらえるかが勝負どころだ。
やはり財政規律にとらわれず、インフレ率に応じた診療報酬の思い切った引き上げが同時に必要になるのではないか?