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膿瘍


 膿瘍とは被膜で覆われた膿の袋のことだ。よく皮膚の皮脂腺が感染をおこして皮膚におできができるが、あのおできの大物のことだ。おできをつぶすと溜まった膿がでてくる。

 旧国立横浜病院の外科にいたころ、肛門周囲にできた膿瘍の手術をよくしたものだ。腰椎麻酔をして肛門周囲の腫れた皮膚にメスを入れて切開すると、いきよいよく膿が噴出する。こうした処置をドレナージという。ドレナージはしていても気持ちがいい。排膿したとたんに患者さんは痛みがとれて熱が下がる。

 こうした膿瘍でも厄介な膿瘍がある。それが肝膿瘍だ。一度、衣笠病院の外来で、熱発が続く40代の男性がやってきたことがある。38度C台の熱が続くけれど、その他に症状はない。血液検査をすると炎症所見の他に肝機能能の数値が上がっている。胆嚢炎かなと思ってCTを撮ったらものの見事な肝膿瘍だった(写真)。肝膿瘍で有名なのが、アメーバ性の肝膿瘍だ。しかしこの男性は海外への渡航歴なないので細菌性の肝膿瘍だった。

 あと旧国立横浜病院のときめずらしい腸管膜膿瘍にも出会った。イレウス症状で来院されて、開腹したところ小腸の腸管膜に膿瘍ができていて小腸を圧迫していた。膿瘍を摘出して中を開けてみると、膿の真ん中に魚骨が1本あった。手術が終わってから患者さんに説明したとき「魚を骨ごと食べませんでしたか?」と聞くと、そういえば1か月前の5月の連休にカツオを自分でさばいて食べたという。そのときカツオの骨を飲み込んだかもしれない」という。カツオの骨が小腸を突き破って腸管膜に膿瘍を作ったのだ。

 昔からカツオの骨は危険といわれていた。カツオはおいしいが骨には気をつけよう。

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